見出し画像

1日15分の免疫学(106)アレルギー疾患11

Th1細胞とCD8T細胞による過敏反応について

大林「あぁ〜!推しが……」


本「アレルギー疾患の一部に見られる慢性炎症の多くは、Th2細胞と共同して作用するTh1細胞依存性の細胞性過敏反応」
大林「え?!Th1と2で共同作用 なんかあるの?お互い牽制しあったりしてるのに」

◆復習メモ
T細胞自己非自己を認識できる免疫細胞。胸腺Thymusで成熟するためT細胞と呼ばれる。MHC分子抗原ペプチド複合体を認識するので、MHC分子が発現していない対象(例:赤血球)には反応しない。
細胞表面分子CD4を発現するT細胞は、CD4T細胞とも呼ばれ(ヘルパーT細胞や制御性T細胞に分化する)、MHCクラスⅡ分子を認識する。
CD8を発現するT細胞はCD8T細胞とも呼ばれ(細胞傷害性T細胞に分化する)、MHCクラスⅠ分子を認識する。
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。

T細胞の主な種類
CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞(Th1Th2,T17,Tfhなどがある)と制御性T細胞Treg:Regulatory T cellに分かれる)
CD8陽性T細胞細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)

本「遅延型過敏反応のプロトタイプはマントー試験Mantoux test」
大林「マント―?なにそれ」
本「ヒト結核菌の感染の有無を調べる標準的なツベルクリン反応
大林「あぁー!あの腫れるかどうか見るやつ?そもそもツベルクリンって何なの?」
本「ツベルクリン液は、ヒト結核菌由来のペプチドと糖質複合抽出物
大林「へぇ~知らなかった」
本「結核菌感染またはBCGワクチン(弱毒化結核菌)の予防接種で細菌曝露を受けた人は、T細胞依存性の局所炎症反応が24~72時間にわたり出現する」
大林「マント―試験でも、少量のツベルクリン液が局所に入ることでT細胞が反応するってこと?」
本「Th1細胞がツベルクリンの投与部位に浸潤して、抗原提示細胞のMHCクラスⅡとペプチドの複合体を認識してIFN-γ、TNF-α、リンホトキシンなどの炎症性サイトカイン放出し、血管内皮細胞上の接着分子の発現を促進して…」
大林「なるほど、接着分子が発現すると血管を流れる好中球や単球、その他の白血球たちも現場に入り込めるようになる。現場近くの血管透過性が亢進するから色々流れ込んで腫れるのか」
本「これらの反応にはそれぞれ数時間を要するため、投与後24~48時間後に最大の反応が出現する」
大林「なるほど、それで1日以降の反応を見たのか~」

本「よく似た反応アレルギー性接触皮膚炎allergic contact dermatitis(接触性過敏症)でも見られる。特定の抗原直接接触によって生じる免疫依存性局所炎症反応」
大林「ほぉ、漆や金属アレルギーとかかな?」
本「CD4T細胞あるいはCD8T細胞の活性化により誘発され、それは抗原が処理される経路に依存する」
大林「細胞内の抗原の処理経路によって何か変わるんだよね……前にやったのに忘れてしまった。最近いろいろ忙しくて…」

本「アレルギー性接触皮膚炎を引き起こす抗原は、正常な皮膚を容易に貫通することができる高反応性小分子で、掻痒(そうよう)と続発する皮膚バリア機能傷害の原因となる掻爬(そうは)を来す場合に顕著」
大林「読めんのだが?意味はわかるよ、痒くなって掻くんだろ」
WEB「皮膚掻痒症とは、発疹がないのにかゆみだけがある疾患です。全身にかゆみが起こる場合と、外陰部や肛門周囲、頭部など局所的に起こる場合があります。」
大林「そんな名前がついてたのか……あるある、なんもないのに時々かゆくなるやつ」

看護ルー「掻爬(そうは)とは、体表面や体腔内の組織を掻き出す(かきだす)ことである」

大林「掻痒(そうよう)と掻爬(そうは)か…」

本「そしてその後、自己蛋白質に結合してハプテン化蛋白質を作る」

ハプテン(hapten):抗体と結合するが、分子量が小さいために単独では抗体産生を惹起する活性を示さない物質のことである。 不完全抗原とも呼ばれる。 適当な高分子タンパク質と結合することにより免疫原性を持つ完全抗原となる。

大林「それを抗原提示細胞が処理をして提示して、その抗原に特異的なT細胞が認識するということか」

本「例えば、米国における一般的なアレルギー性接触皮膚炎としてツタウルシとの接触によるかぶれは、植物油のウルシオールが脂溶性のため、細胞膜を容易に通過して細胞内蛋白質に接触し、修飾された蛋白質が免疫プロテアソウムによって切断され小胞体に移行してMHCクラスⅠ分子に結合して細胞表面に輸送される」
大林「MHCクラスⅠということはCD8T細胞の出番か」

◆復習メモ
MHC分子主要組織適合遺伝子複合体major histocompatibility complex。ほとんどの脊椎動物の細胞にあり、細胞表面に存在する細胞膜貫通型の糖タンパク分子。ヒトのMHCはHLAと呼ばれる(ヒト主要組織適合遺伝子複合体Human Leukocyte Antigen)。
MHC分子は2種類あり、クラスⅠ分子はほとんどすべての細胞に発現しているが、Ⅱ分子はプロフェッショナル抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ、B細胞)といった限られた細胞にしか発現していない。

T細胞は、MHC分子とペプチドの複合体を認識するので、MHC分子が発現していない対象(例:赤血球)には反応しない。
細胞表面分子CD4を発現するT細胞は、CD4T細胞とも呼ばれ(ヘルパーT細胞や制御性T細胞に分化する)、MHCクラスⅡ分子を認識する。
CD8を発現するT細胞はCD8T細胞とも呼ばれ(細胞傷害性T細胞に分化する)、MHCクラスⅠ分子を認識する。
つまり、CD4T細胞に抗原提示できるのは限られた細胞だけということ。

本「そう。CD8T細胞はその細胞を殺すか、IFN-γなどのサイトカイン放出で細胞傷害を引き起こす」
大林「おぉ…ウルシオールに特異的なCD8T細胞が、細胞内部にウルシオールが入り込んだ細胞を殺してしまうというわけか…」

本「塩化ピクリルは細胞外の自己蛋白質をハプテン化して修飾する」
大林「塩化ピクリル?」
コトバンク「フロン 塩化フッ化炭化水素の総称で日本における慣用名。 · アフィニティーラベリング 酵素の基質特異性を利用した酵素タンパク質の化学的修飾法の一種.」

マウスの塩化ピクリル誘発接触皮膚炎に関する実験病理学的 ...

大林「いやよくわからんわ!まぁ、そしてそれを抗原提示細胞が…」
本「MHCクラスⅡに結合して提示、Th1細胞が認識すると、マクロファージの活性化によって広範な炎症を引き起こす」
大林「オゥ…」

本「昆虫蛋白質の一部は遅延型過敏反応を惹起する」
大林「昆虫の蛋白質?接触すると付くとか?」
本「一例として蚊の刺傷に対する重度の皮膚反応」
大林「え、蚊で重度?!どんな?」
本「通常のかゆみではなく、蚊の唾液に含まれる蛋白質に対するアレルギーがある人は蕁麻疹や腫脹、アナフィラキシーショックなどの即時型過敏反応を起こすこともある」
大林「蚊に刺されてしぬの?!いやまぁ蚊は人類を一番殺してる生物だけど!」

本「手足全体に及ぶほどの重度の腫脹をきたす遅延型反応もある」
大林「怖…」

本「ニッケルのようなニ価陽イオンに対する接触過敏反応が見られることも」
大林「二価陽イオンとは?」
WEB「電子を失って,+の電気をおびたイオン。電子1個を失ってできた陽イオンを1価の陽イオン,電子2個を失ってできた陽イオンを2価の陽イオンという。」

大林「ほぉ……よくわからんな!それで、ニッケルと言うからには金属アレルギー?体内に入り込んでハプテン化?」
本「二価陽イオンは、MHCクラスⅡ分子の高次構造やペプチドの結合を変化させ、T細胞応答を起こす」
大林「想像よりずっと高度だった!ニッケルの製品は減ってるよね」
本「一部の国では非ニッケル皮膜加工が標準となっているのでニッケルアレルギーは減っているね」
大林「よかった」
本「ちなみにT細胞関連で説明したけど、抗体や補体も同様の反応に関与している」
大林「そうなんだ」
本「B細胞や抗体、補体が欠損しているマウスでは接触過敏反応が障害される」
大林「うれしいような困るような」
本「抗体でも特にIgMは補体カスケードを活性化し接触過敏反応を惹起を促進する」
大林「初期に活躍する抗体が仇に…」
本「次回はセリアック病について」
大林「麦だ!パンの歴史で読んだ!」

今回はここまで!(夏コミのため東京遠征中!)
サイトでは細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
※現在サイト改装作業中なのでリンクが一時的に切れることがあります



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?