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「よりよく理解しあうことで、世界は変わる」対話と市民意識を育てる環境づくり

左:茶々だいかんやま保育園 園長 熊木崇人さん  右:茶々保育園グループ 理事 下重喜代さん

SDGsの理念が書かれた2030アジェンダの「グローバルシティズンシップ(地球市民)」という言葉にもある通り、問題解決には「市民」という視座を持って「対話」を持って取り組んでいく必要があります。

今回は、この市民意識と対話の力を育てる保育園があるとのことで、取材に行ってきました!こどもたちがどのように学んでいるのか、どんな環境で学んでいるのか、ぜひヒントにしていただけたら嬉しいです。


ー 園のフィロソフィーについて教えてください!


園長 熊木崇人(くまき たかひと)さん: 

2021年に園の方針が「Education is Empathy 〜よりよく理解しあうことで、世界は変わる〜」となりました。

個を尊重する、一人ひとりに敬意を払う、対話が関係を築いていくところだったんですけども、そこから視座を高めて、スタッフやこどもたちが当事者意識を持ちながら、多様性があることを理解しながら、対話を通して理解しながら問題解決に取り組んでいきたいというところから、このテーマになっています。

また、持続可能な未来の主役を育む、自然との融合、ひとりの市民として参加するというところもコンセプトに入っています。


茶々保育園グループ 理事 下重喜代(しもじゅう きよ)さん:

宗教も国籍もいろいろ違うなかで、一人ひとりの思いに寄り添う、理解するということは、紛争、いじめなどいろいろな問題があるなかで、それらを解決するとても大事なことです。

茶々ではその基本となる Empathy を大きな目標に掲げています。幼児の頃から心の芯に入れておくということは、これからの時代を生きていくうえでとても大切なことです。

世界が多様性のある世界を認めて、平和な社会をつくる人材を育てるっていうところに結びつくと考えています。だから園に社会を育てる、こどもを育てる、未来をつくる、思いがあるのだと思います。



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茶々のフィロソフィーをまとめた本 スタッフ全員に配布しているそう



ー 市民意識を育むために工夫されていることは?


熊木さん:

対等な関係をつくっていくことが大切だなと思います。たとえば自己肯定感じゃないですけど、大人になにかを言われたときに自分の意思を尊重してもらえないと、自分の価値を信じられなくなってしまうと思っています。

全体研修のテーマが「枠を取り払う」というテーマで、それぞれの多様性を押しつぶす圧力というか、いろいろなところにボーダーがあるけれども、そういうのを一個一個取り払うことによって、本当に大切なことが残っていくはずだと話しました。


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今の自分の気分や気持ちに気づく・伝えるためのタペストリー


下重さん:

茶々の園にはこどもたちが話し合うコーナーが設置されています。こども同士に問題が起きたときに自分たちで話し合うことによって問題を解決させるのです。それがひいては、こどもたちの自治意識や民主主義の基本を育てることにつなげるという狙いがあります。

研修で訪れたドイツ第二の都市ハンブルグでは、こどもたちが決めごとをするテーブルがありましてね、そこには市民意識が大前提にあるんですね。地球を変えたいという思いで、大人たちが行動しているところです。

例えば、みんなが大好きな滑り台がひとつしかないので並んでも滑る順番がなかなかこないからもう一つ欲しいと園にお願いすることをコーナーに集まって相談して決めたというのです。それを受けた園ではこどもたちの願いは妥当と考えて、保護者や街の人たちに働きかけ、こどもたちの考えを理解してもらい、お金を集めて2台目の滑り台の設置を実現させたというのです。

その背景には自分の考え、意見を持って、仲間と協力してちゃんと意見を表明すれば、実現させることができる、つまり社会をよりよく変えることができるという貴重な教育的体験をさせているのですね。

茶々では、海外研修で得た先進事例をこうして次々に取り入れています。

熊木さん:

茶々フェスティバルという大きな行事をやりまして、演目の決め方とか内容とかもこどもの意見を引き出したり、尊重したりというのを意識的にやっています。

こどもの生活に根ざした意見が通るっていう、世の中が変わっていく実感ができると思います。地域社会の問題をこどもたちが解決する、どうしたいかなと問いかけていくのもより大切だと思っています。そういうところでは、渋谷区という場所は多様性を認める器の広い地域だと思います。


ー 地域でのSDGsにつながりそうな取り組みはありますか?


熊木さん:

地域のみなさん、保護者のみなさんと一緒にこどもたちを育てていきたいと話していて、保護者の方にも取り組みの手紙をお配りしていたりしています。

「園庭で使えるおもちゃはありませんか?」「いらない素材を園に持ってきてください!」という呼びかけをすることもあります。

紐や布、ボタンなどの素材を集めて加工して並べて、こどもたちや保護者の方に気に入った素材あったら持って帰ってくださいとお伝えして実施したアップサイクル・プロジェクトもその一環です。

その素材でアート作品をつくってもらって、園に持ってきて飾りましょうみたいなことをやりました。不要な物に価値を与える面白さや楽しさを、一緒に体験することをお伝えしています。

あとは、近所にあるひまわり坂というところに地域の方々や企業さんも関わっているひまわり畑があるんですけど、保育園さんもどうですかとお声がけいただいて、火曜日と木曜日は水やりを担当し、綺麗なひまわりが咲きました。今はこどもたちが遊べるスペースとして解放していただいていて、遊びに行ったりとかしています。


ー 最後にメッセージをお願いいたします!


熊木さん:
20年後をつくる、こどもたちが未来をつくっていくんだ、という意識で取り組んでいます。子どもたちが持続可能な社会を歩んでいけるようにするのは、私たち大人の役割だと考えます。子どもたちが担う未来を、より豊かなものにできるよう、日々の保育・教育に真剣に、そして誠実に取り組んでいきたいと考えています。

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