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【掌編小説】 Decade

「夏が来る前には帰れると思う」
あの人から短いメッセージが届いた。
「お疲れさま」
短い返信を送った。

長い間、放浪の旅に出ていたあの人。
帰ってくるとして、何処へ?
具体的にはいつ頃?
そして、帰ってきてから何をするつもり?

詳細はまるでわからない。
きっと突然「今、君の街にいる」とメッセージが届くのだろう。
そして私は身支度をして、あの人を迎えに行くのだろう。

こまめに連絡をするタイプではないあの人と、
人と関わるのが下手な私は、
数年ごとに、業務連絡のような素っ気ないメッセージのやり取りをしていた。

密度の薄い交流が、5年、10年、15年、20年…
幼い頃や若かりし頃にはとてつもなく長く思えたそれらの年数が、
今ではさほど長く感じられず、あぁ、もう10年が過ぎたのか、と思う程度だ。

私の身の回りや、きっとあの人の身の回りも、さまざまに変化しているのだろう。
大切なものや人をなくしたり、なにかを得たり失ったり、舞台もどんどん変わっていって。

そしてもう、私たちに残された時間は少ない。
あと一周か二週で、私たちは消えてしまうのだろう。

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