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砂糖じゃないから大丈夫

秋に入り、ようやくオランダらしい天気になったというか、つまるところ最近は毎日曇りかしとしと雨が降っている。日も短くなってきて、気温も下がり、ヨーロッパで冬季鬱が一般的なのもよくわかる。私もこちらに移住して数年の冬は、とにかく心が晴れず何事もやる気が出ないという状態が続いた。友達に話したりすると日照時間が十分に取れないからビタミンDが不足しがちとかなんとかで、サプリメントを取ることをおすすめされたりする。試したことはあるがいまいち効果がわからなかったので今はやってない。

オランダに移住してくる以前都会に住んでいた私は、家のすぐ近くにはバス、トラムやメトロが走っていたので、今まであまり雨に濡れるという経験をしたことがなかった。晴れている日は自転車で行動していても、雨が降ったら必然的に公共交通機関を使うのが当たり前になっていたのだ。それがオランダに移住してきたら土地が平坦で自転車道が整備されており、また公共交通機関を使うと自転車より倍以上の時間がかかるというような不便な土地に住んでいることもあって、雨の日でも自転車に乗ることが増えた。というか乗らなければならないのである。

一日中雨が降っていて止みそうにない時、晴れていたのに出かける頃になって雨が降りだした時、晴れていると天気予報が言っていたのに雨が降っている時、とにかく雨が降っているのにも関わらず自転車に乗らない状況に、どうしようのないわかっていてもついつい愚痴をこぼしてしまう。レインコートがあっても完全に濡れないということは不可能なのだ。こんな人は私だけではないようで、オランダではそんな時に使う魔法の言葉があるそうだ。

"Ik ben niet van suiker!"
私は砂糖でできていない!

砂糖でできていない=つまり雨に濡れて溶けることはないから大丈夫ということらしい。自分を鼓舞するために行ったり、愚痴を行っている他人を励ましたりなど。こんなことを言われても私は頑張ろうという気にはならないのだが、街でずぶ濡れで自転車を漕いでいる人を見ると、これはなかなか効果があるのかも?と思ったりもする。オランダでは日本では見かけないようなずぶ濡れのバイカーがあちこちにいる。

ふとなぜ砂糖なのか?と考えたが調べても理由はわからなかった。溶けやすく何より甘いもの好きなオランダ人の大切なものの象徴なのだろうか。自転車に限らず、もしかしたら最悪な状況も、結局自分が最初に悪天候を切り抜けなければならないというこというオランダの教訓なのかもしれない。

(※ちなみにオランダだけでなくてイギリスやドイツでも似たような表現が使われるそうです。)