「カッコつける」ってけっこう大事なことかもしれない

私が編集者になった理由のひとつに「スーツを着なくてもいい!」ということがある。私はスーツ(とくにネクタイ)が嫌いだ。

というわけで、基本的にはラフな格好(とはいってもオフィスカジュアル)をして働いているわけだが、ファッションで「ラク」を優先させると、ときとしてモチベーションが下がることがあるのではないか――ということを最近考えている。

ラフな格好をしていると、ダラけた姿勢で仕事をしがちだ。ダラけた姿勢で仕事をしていると、頭が働きにくくなるし、積極性も落ちてくる。それは、「あんまりいろいろ行動して、人に注目されたくない」という心理が働いているからかもしれない。

んで、先日、ちょっとフォーマルな会談予定があったので、久しぶりにスーツを引っ張り出して着用した。AOKIとかの安いやつではなく、それなりのやつである(私だってそういうスーツくらい持ってる)。ワイシャツは鎌倉シャツ、ベルトはBEAMSで新調し、靴はピカピカに磨き上げたREGALだ。そして、ワックスで髪をしっかりセットした。出陣である。

――とはいえ、会談は夜なので、昼間はいつもどおり、会社で働く。しかし、そこで気づいたのだが、キチンとしたファッションで働くとダラけられない(姿勢が良くなる)のだ。自然と、周りから自分の働いている姿がどういう風に見られているのかを意識して、時間を無駄にしないように、きっちり働いている自分がいた(別に、普段もサボっているわけではない)。

ここで私は天啓を得た。

すなわち、キッチリした格好をしていると、行動もキッチリしてくるのだ、と。中高生くらいのときに、校長先生が朝会で「服装の乱れは心の乱れ」などとのたまっていたような気がするが、当時の私は鼻をほじって聞き流していた。だが、30歳を目前にして、その言葉の真意がようやく理解できたのである。「人は見た目が9割」などという言葉もあるが、それはべつにイケメンだとかブサメンだとかという、容姿の話ではなく、服装と姿勢を指している(たぶん)。

女性の場合はどうか知らないが、基本的に男というのは「カッコつけたがる生き物」である。モテる男は、基本的にどこかで自分のことを「カッコいい」と自覚しているし、だからこそ自信があり、立ち居振る舞いが堂々としたものになって、そして実際にモテる。まさしく正のスパイラルだ。

この正のスパイラルは恋愛のみならず、仕事にも当てはまるのではないだろうか。「働いている自分がカッコいい」と自覚している男は、実際に仕事のパフォーマンスが向上するのだ(たぶん)。「デキる男はファッションにこだわる」のではなく、「ファッションにこだわるとデキる男になる」のが正しいに違いない。男たちよ、カッコつけて仕事をしよう。

……とはいえ、ここまで書いてきて、懸念点が2つある。

①カネがかかる
大人の男がフォーマルにカッコつけようとすると、どうしても必要なアイテムは高額になる。スーツ、シャツ、ネクタイ、タイピン、革靴、バッグ、さらには時計……。冬になるとコートも必要だから、下手すると全身コーディネートが数十万円になる。これはなかなか大変だ。というより、“覚悟”がいる。あと、高額なファッションアイテムは維持管理も手間がかかる。高級腕時計は3年に一回くらいオーバーホールしたほうがいいし、スーツやコートはもちろん、クリーニングに出す。革靴は、できるだけこまめに掃除し、クリームを塗って磨かなければならない。たいへんだ。
②持続性があるのか、わからん
私の場合、「たまにカッコつける」からこそ、カッコつけた日の仕事のパフォーマンスが向上しているだけかもしれない。つまり、毎日カッコつけたファッションをしていると、それが日常になって、結局、カッコつけていてもダラけるようになってしまうのではないか……という恐れはある。こればかりは、それを継続してみないとわからない。

というわけで、私からのおススメは「とりあえずワイシャツを良いものに変えよう」というものだ。ダボダボしたワイシャツはカッコ悪いことこのうえない。そして、幸いなことに、ワイシャツは良いものでも比較的値段が安めだ。夏はジャケットを着ないで働く人も多いかと思うが、だからこそ、ワイシャツの良し悪しが目立つ季節でもある。

別にオートクチュールにしろとはいわないが、伊勢丹のメンズ館にでも行って、ちゃんと自分の体型にフィットしたちょいオサレなシャツを1着だけ買ってみるのだ。そして、それを着てみると、効果を感じられるかもしれない。私ももう30手前なので、そろそろ手持ちのシャツを品質の良いものにシフトチェンジしていこうかと考えている。

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