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イングランド・プレミアリーグとイギリス国内のテレビ

サッカーの母国イングランドにプレミアリーグが帰ってきます。

プレミアリーグは20チームでシーズンを戦います。

昨シーズンは勝ち点差1でUEFAチャンピオンズリーグを制したリヴァプールを上回ったマンチェスター・シティの優勝。
今シーズンは3連覇を期待されていました。

しかし、みなさんがご存知の通りコロナウイルスの影響でシーズン自体が中断。
サッカー、野球、バスケ、ラグビー...と多くのスポーツが影響を受けました。

隣国フランスでは政府が9月までスポーツイベントを開催することを禁止したことでシーズンは終了。
パリ・サンジェルマンの優勝で今シーズンは終了となりました。

その中でプレミアリーグは無観客で残り92試合を戦います。

ただ、この再開に関してスケジュールが発表されましたが上記のニュースでも書かれている通り「毎日開催」となったのです。

サッカーと言うと基本的には週末の金曜から日曜日や平日の火曜日や水曜日と毎日開催するという印象は薄いものです。

今シーズン残り92試合。
イギリス国内のテレビ事情と関連させてプレミアリーグの決断を見ていきましょう。

コロナパニックまでのプレミアリーグのテレビ事情

日本のJリーグは現在イギリスのパフォーム・グループが設立した「DAZN」によって放送されています。

それ以前には、衛星放送のスカパーが2007年から10年間の2017年まで放送を担当してきました。

スカパーが全試合放送を開始し、現在でもDAZNがJ1、J2、J3を全試合中継中です。

では、プレミアリーグのテレビ事情はどうなっているのでしょうか。
主な特徴を紹介します。

1つ目にブラックアウトルール。

それは「土曜日の午後2時45分から午後5時15分の間はプレミアリーグ、2部のフットボールリーグ、カップ戦のFAカップは生中継されない」という規則があります。
通称「ブラックアウト」。

最終節は全10試合を同時時間帯にキックオフをしますが、この規則があるため現地時間日曜日の午後3時に時間を移し開催をします。

この規則は1960年代頃に制定され、当時のバーンリー会長は土曜日の午後にテレビ中継があることによって下位に位置するチームの財政状況が悪化するのでは考えました。

応援しているチームの試合が午後3時にあるが、テレビでは上位チームの試合が放送されている。そうするとスタジアムには行かずにテレビで試合を見てしまうのではないだろうか。
それが積み重なると財政が悪化する...

それが通称「ブラックアウトルール」の制定に繋がりました。

このルールは国外の中継に影響を与え、Sky Sportsが有するスペイン ラ・リーガのイギリス国内17時開催の試合も最初の15分はカットされている状態です。

その時間帯にSky Sportsは解説者を呼び、映像を見ながら解説してもらう「Soccer Saturday」を放送しています。

続いて2つ目は無料で見れない。

現在、プレミアリーグをイギリス国内で保有するのは衛星放送ではSky SportsとBT Sport。

インターネット中継ではAmazon Primeが保有します(日本国内では配信なし)。

プレミアリーグが開始された1992年から衛星放送の「Sky」が運営するSky Sportsによって中継がスタート。現在でもシーズン128試合を放送する権利を有しています。

もう一つの放送局、BT Sportはイギリス最大手のインターネットプロバイダーの「BT(British Telecom)」によって2013年にスタート。

BT Sportは新興チャンネルながら、放送開始からプレミアリーグの放映権を獲得。現在は1シーズン52試合を放送します。

またBT Sportは勢いがあり、Sky Sportsと民放のitvが長年保有してきたUEFAチャンピオンズリーグの放映権を獲得。現在は2024年まで放映権を有します。

BBCは現在、ハイライトの権利を有しています。

試合自体の権利については公共放送のBBCと民放最大のitvはプレミアリーグ開始後から一度も放映権を有したことはありません。

プレミアリーグは2019-2020シーズンから2021-2022シーズンの3シーズンを試合時間ごとに「パッケージ」にして放映権を販売しました。

パッケージはA~Gまでありますが、ブラックアウトされる試合以外は全て有料放送のメディアが確保。

プレミアリーグが国内向けに発表したニュースリリースを基にテレビ局がどの時間帯のパッケージを確保したかを表にしてみました。

コメント 2020-05-29 185113

3つの放送局が全て有料放送であるため、プレミアリーグ開始後は無料放送局が放映権を握ったことはなく、有料放送を見れない視聴者を蔑ろにしているのでは?と指摘されてきました。

再開後のプレミアリーグ

プレミアリーグが6月17日に再開されることが発表されたのと同時にキックオフ予定時間も発表されました。

上記の試合開催時間を確認すると、金曜から月曜とこれまで行われてきた週末と、

キックオフ予定時間
金曜日 20:00
土曜日 12:30, 15:00, 17:30, 20:00
日曜日 12:00, 14:00, 16:30,
月曜日 19:00, 20:00

平日の火曜から木曜まで以下の時間で開催されます。

火曜日 18:00
水曜日 20:00 18:00, 20:00
木曜日 18:00, 20:00

サッカーのリーグとしては珍しい毎日開催となりました。

そしてテレビに関しては従来のSky Sports、BT Sport、Amazon Primeの3社に加え、公共放送のBBCが追加されました。

プレミアリーグ再開に関して無観客開催となることから、政府からも多くの人が視聴出来るように無料放送を期待するコメントもありました。

現在、プレミアリーグの詳しい日程は後ほど公開されるそうですが、BBCによる無料放送は大きなインパクトがあります。

BBCは現在、日本でも活躍したゲーリー・リネカーが司会のハイライト番組「マッチオブザ・デイ」を1964年から放送していますが、国内のリーグ戦については、プレミアリーグは一度も放送したことはありません。

BBCが追加された理由として、ハイライトの権利を確保しており多くの人が見るチャンネルとして公共放送であるBBCが最適であると考えられたのかも知れません。

プレミアリーグのCEOのコメントも掲載されています。

"It is important to ensure as many people as possible can watch the matches at home"
               Richard Masters, Premier League CEO

「できるだけ多くの人が自宅で試合を見ることができるようにすることが重要です」
            プレミアリーグCEO、リチャード・マスターズ

再開し、有料でしか見ることが出来ないとなった場合、スポーツバーやパブに集まる。そしてそこでクラスター感染があったら...

再開することはそういった危険も孕んでいるということ。

プレミアリーグは試合を生放送させない、お金を払って見るものという「プレミアコンテンツ」であった中、多くの人に届けるという事を優先しました。

パニック後に迎える普通

Jリーグも再開を6月27日に決定し、他のリーグも徐々に再開へ向かっています。

一足先にヨーロッパの主要なリーグの1つドイツ・ブンデスリーガも再開。
イギリス国内ではBT Sportがドルトムントvsシャルケの試合を放送。

視聴者数も65万人がピークとプレミアリーグの生放送と同等、ロックダウン以前のブンデスリーガの視聴者数を超えたことも明らかになりました。

長い期間スポーツが消えた事で待ち望んでいたファンの多さが数字として明らかになりました。

BBCによってプレミアリーグが無料で見ることができるのは多くのファンにスポーツを届けるというメッセージでもあります。

スポーツに限らず、エンターテイメントが再開していく中で「今は再開するべきではない」という声もあるわけですが、そういった声と同じように「再開してほしい」という思いもある。

いつ終息するかわからないこのパニック。
ずっと怖がっているのは簡単です。
再開することにリスクが有ることは百も承知。
普通を手に入れるために、待ち望んでいる人たちの為に再開する。

そういったことをプレミアリーグは言いたいのではないのでしょうか。

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