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ニースの水と愛人の物語

ずっと、昔に誰かにいただいたコレクションの中にニースの水(eau de nice)があった。
よく見たら、パッケージがなかなかに面白かった。

Eau de Nice 1668とあり、Eau de toilette(オードトワレ)とその下にあり、その下にFrench Riviera Cologne(フレンチ・リビエラ・コロン)とある。
ん?オードトワレなのかオーデコロンなのか?
香りを軽くチェックするとおそらくはトワレ濃度。
側面には英語で”フランス、リビエラからのメッセージ”、反対側の側面には
フランス語で”コートダジュールからのメッセージ”とある。
そして、製造・販売元のAPESTAという企業はモナコにあるよう。

1668が創業なのかと思うけれど、APESTAのサイトは同社は創業80年となっていた。
これが何の年なんだろう?
パッケージの裏面をみると、marquise de Montespan,とある。
ルイ14世の愛人の一人モンテスパン夫人の名のようだ。あまり詳しくはないけれど、Wikipediaを見ると、1667年にネーデルランド継承戦争の国王の同行者としてモンテスパン夫人の名があり、それまで寵愛を一身に受けていた別の愛人にとってかわることができた、のがこの名簿で分かるらしい。
続いて1669年、赴任地からルーブルを訪問した夫のモンテスパン侯爵に冷たい態度を取り、やがて侯爵は国王に妻を寝取られた夫という汚名をこうむることになる。
この出来事の間の1668年には何があったのだろう。
そして南仏とはどんな関係があったのだろう。

wikiによると野心家だった彼女も晩年は落ちぶれて不遇のまま66歳で儚くなったようだ。
モリエールの『ジョルジュ・ダンダン』(やりこめられた亭主)の戯曲も読んでみたい。
きっと、南仏のお土産香水なのかもしれないけれど、ここにもやはり、物語がある。一つは当然モンテスパン夫人の物語。もう一つはそれを香水にして世に出そうと思った人々の物語だ。そしてニースとモンテスパン夫人とのなんらかのゆかり。
知りたいことが日々生まれるということはありがたいことだ。
長らく放置していたコレクションだけれど、手にすれば新しい物語が動き出す。

香り、思い、呼吸

#note100日
#コルクラボ
#adams

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