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光 2月27日〜365日の香水

映画の父
数年前に訪れたフランス、リヨンのリュミエール兄弟の記念館で、映画の父と言われた兄弟の姓がリュミエール(lumiére)である奇跡にとても感じ入った。
光と影の動き、映画、その発展に大きく関与した兄弟の姓が光〜limiére。
フランス語圏でも光のような抽象的ものが人の姓になるのは珍しく、リュミエールという姓自体も珍しい部類だという。
余談になるけれど、リュミエール社が事業戦略として日用品などの製造販売にも手を広げていて、その中には石鹸やオーデコロンもあって展示されていた。

光の希求
語源を辿ると文化や歴史の中で語義が変遷していくことに時々遭遇するけれどlimiéreの語源はラテン語のlumenで意味も光。どのような局面、文化においても光の持つ意味は変わらずであったということかもしれない。宗教でも文明でも人は影よりも光を歓迎する。光あれの一声で始まる世界、夜の煌びやかな街の光。
そうではない生物もいるのだから、光がポジティブな概念で求めたくなるものというのは人類の本能なのだろうか。
朝がきて朝日を浴びることで、セロトニンが脳内に放出されて気持ちの安定に効果があるという研究結果もある。
気持ちを安心させたくて朝の光を浴びるのが私たちの習性。

Lumiere original/rochas/1984
どのようなテーマにしてもある時期のロシャス(rochas)の香りには包み込むような優しさがある。それはビザンチン帝国をテーマにした「ビサンス」でもシトラス系のオードロシャスでも同様。ロシャスの香りの「顔」といえるファムの大切な部分をつくり手が損なわないように継承してきた証のようにも思える。ビザンスもオードロシャスも、そしてこのリュミエールも調香師はニコラス・マモナス(nikolas・mamounas)。
60年代、70年代、80年代と調香技術は複雑さを競うようになり処方は入り組んでいく。リュミエールも1984年の登場なので、そのようなトレンドの最中にある。様々な香りが奏で合いながら、香りは穏やかで優しい。バイオレットやアルデハイドの拡散、アンバーとモッシーノートのコク、豪華なフローラル、多面的な要素を感じさせながら、全体に包み込むようなたおやかさがある。元気をあたえながらも急かさない、励ましながらも押し付けない・・・。こういう香りに接すると、調香したニコラス・マモナス問う人への興味がわいてくる。こういう香りにはマーケティングやテクニックだけでなく、作家性、調香師の人柄が限りなく影響しているように思えるからだ。

香り、思い、呼吸

2月27日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。

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