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阿片という香水。反感と熱狂、サンローランの挑戦

パリで数年前にオープンしたイブサンローラン美術館を訪問しました。

そこでopiumこそがサンローランの運命を変えた作品であったことを知りました。opium(オピウム)とは阿片という意味です。

この香水が登場したのは1977年。サンローランはファッションでも日本はじめ、中国、インドなどからインスパイアされた作品を多く発表してきました。

サンローランは香りについては「強さを」ということを、調香を担当したジャンルイセザックにオーダーしたそうです。そしてボトルデザインを担当したピエールディナンとは印篭というモチーフを見つけ「名前はオピウムだ!」と興奮しながら言ったそう。

美術館では現在の形に行きつくまでのおびただしい数のボトルデザインのデッサンも見ることができます。

ボトルの朱色にもなかなか納得をしなかったサンローラン。たくさんの試行錯誤、繰り返されるNON(だめだし)、まさに魂の入ったクリエイションです。

当時プレスを担当した女性は、「オピウムでハウス(サンローラン)が変わった」と回想しています。

発売当初、中国系アメリカ人から阿片戦争の屈辱を思わせるとして不買運動が起こったこともありましたが、発売から数年して訪れたアメリカでサンローランは熱狂的な歓迎を受けます。

不買運動のこともあって、少しナーバスになっていたのでしょうか、あまりに想像とギャップのある歓迎に「彼のあんな表情、ぽかんとした顔見たことないわ」と同行したプレスの女性が回想していました。(これらのエピソードは美術館の中の映像で見られます)

私のコレクションにもオピウムはありますが、サンローランの目論見通り、強く独特で重厚なその香りを、どう使いこなしていいのか、サンローランの思いと対峙しながら、この冬の間に一度トライしてみたい気持ちにさせられました。


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