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マキシムドパリ 2月10日〜365日の香水

伝説のレストラン
パリに何度も行っているけれど、ここで食事をしたことはない。
もともとはマリーアントワネットの時代の宰相リシュリューの所有だったところで、1800年代末にはアイスクリーム屋、辻馬車用のビストロと変遷し、
1900年のパリ万博の年に持ち主がアール・ヌーボー様式に室内装飾を一新したらしい。それが今に続いている。
プルースト、エドワード七世、ジャン・コクトー、マレーネ・ディートリッヒ、マリア・カラス、名だたる人々がお気に入りの場所として訪れた伝説のレストランのよう。

ピエール・カルダン
このレストランの持ち主は1981年からファッションデザイナーのピエール・カルダンになった。その数年前に現在も使われているマキシムのロゴ制作に協力していたのもカルダンで、彼自身、店の常連客だった。
つくづく、カルダンの活動はデザインナーの域を超えて、フランス、パリの文化の継承や保全ということに拡張してきたのだなと思う。
政府から感謝される、叙勲者としてのカルダンの活躍。
彼がオーナーとなって様様な展開をする中に「香水」があったのもうなづける。
数年前に観た映画「ライフ・イズ・カラフル」。カルダンは70年代頃からファッションにとどまらず、食器、寝具から家具まで日常のありとあらゆるものに手を広げていっていた。「やりすぎ」「ブランドの安売り」の批判を浴びたことに対し彼が言った言葉が鮮烈だった。
「提供しているだけ、押し付けていない」
そうなのだ、と感じ入ったのを覚えている。多分、やりたいのだろうな、次から次に自分の世界観を表現する対象が見つかって、だから提供してるだけなのだろうな、と素直に思えた。

あっぱれカルダン
伝説のレストランマキシムの展開もなるほど、カルダンに手にかかったと思えば納得がいく。パリに行けばありとあらゆるところで、「maxim's de paris」ブランドのお菓子、ワイン、デリカテッセン、食器などを「お土産用」で見かける。そして香水である。
巨匠は今も精力的にマキシムブランドの新作の香りを出し続けている。
実は、食事をしたこともなければチョコやフォアグラを買ったこともない。
やはりなんとなく、多品種展開、わかりやすいお土産向けというコンセプトに気持ちが動かなかった。
けれど、やっぱり楽しいと思うのだ。あのマキシムのお菓子やワインを手にすることができるというのは。期待を裏切らず、アールヌーボーの時代を描いたパッケージ、古き良き時代へのときめき。
まさに、押し付けられていない、提供されただけなのだ。
私はピエールカルダンの哲学が好きなのかもしれない。

maxim's de paris/1984
トップノートはスパイシーとモッシーが同時に上がってきてかなり落ち着いた深みを感じさせる。20年代に迷い込んだような気分になる。やがてミドルになると豪華な花々が咲き始め、香りはしっとりと優雅に変わっていく。
なかなか、侮れない香りである。
調香師は̬キャロンのエメモアやディオールのピュアプアゾンなどを手が得たドミニクルピオン(Dominique Ropion)。
本気の一作だった。よくできている。
今はパッケージデザインもボトルデザインも変更されているので香りも変わっているかも知れない。

香り、思い、呼吸

2月10日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。


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