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王室のシダ 

歴史に残る香水
近代香水のデータベース上で、最も古いものと思われるのは「王室の(あるいは高貴な)シダ」になるのではと思う。
リリースが1882年。
Fougere Royale(フジュールロワイアル)/Houbigant(ウビガン)社製。
1775年、フランス革命より少し前に創業したパリの香水商、ウビガンから出ていて、調香師はポール・パルケ(Paul Parquet)。
とはいっても、ブルボン王朝期にはマリーアントワネットの御用達の調香師としてジャン・ルイ・ファジョンが活躍していて(ウビガンも同様に御用達商人であったので出入りはしていた)、彼の処方を発見しブランドを復活させたのが現在のオリザ・ルイ・ルグランだし、もっとさかのぼれば、オーデコロンの創始者と言っていいイタリアの商人ジャン・マリ・ファリナの処方というものもあり、ケルンのファリナハウスやミューレンス社はその処方の継承者と共に主張している。

世界で初めて合成香料を使った香水
ただ、フジュールロワイアル、王室のシダがこれらと決定的に違う点がある。それは、合成香料を使っている点。
一昨年のシャネル展でシャネルのNO.5 が合成香料を使った初めての香水のような紹介のされ方をしていたのは誤り。それより40年近く前に既に香水に合成香料は使われていた。
(シャネルNO.5は「合成香料を大胆に使って成功した最初の香水」というのが適切)
使われたのはクマリンという合成香料で、特徴としてはラベンダーやスパイシーな香りが合わさって、その後のメンズフレグランスの一つの”型”になった。
もうだいぶ前から、あまりその特徴が顕著な新作はみなくなったけれど、ラベンダー、クマリン、ベルガモットなどのノートが立ち上がる特徴を持つ香りはこのフジュールロワイヤルから「フゼアタイプ」というカテゴリー名になっている。

今や文化財の扱い
オリジナルはウビガン社にも保管があると思われるし、コレクターが所持しているケースもあるだろうし、ベルサイユの香水学校でも保管されている。
それでも貴重であることは変わらず、一度、その香りをムエット(試香紙)に着けてもらった研究者の言葉としては「ブルックナーの交響曲のよう」だそう。
但し、ずっとわかりやすく言えば、理想の娘婿の香り、清潔感のあるバスルーム、近づくとすこし動物的、ということだそう。

そして復刻版が出た
さて、ウビガン社は持ち主を変えながら、現在はモナコに本拠地を置きブランドは続いている。
伝説の香水フジュールロワイヤルは2010年に復刻した。
比べようもないけれど、入手できた復刻版。
確かに、清潔なそして少し古い時代のバスルームを想起した。
何も説明せずにこの香りを体験してもらったら、どんな感想、どんなイメージが生まれるだろう。
いつかサロンで試そうと思う。

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