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そっと 2月26日〜365日の香水

ラリックとコティ
L’effleur(レッフルール)のオリジナルは1907年リリースで、ラリックによるボトルには金のラベルで、ハニーサックル(すいかずら)の花から立ち昇る香りと妖精のようなモチーフが施されている。
ルネ・ラリックにとってもラリックと組んだフランソワ・コティにとっても、初期の成功作の一つになった。
そっと触れる、軽く触れるという意味になるらしい。

L’effleur/coty/1907/1990
fragranticaなどのデータベースでは1907年のリリースとして私のコレクションと同じものが掲載されているが、これは1990年の復刻版だ。
創業者の没後、会社は米資本に売却されアメリカ市場向けに出たたくさんのラインアップがあった。大半はフランソワコティの時代に作られた名品の復刻だったり再販だったりした。
1990年の時点ですでに懐古趣味が全開のボトルやパッケージデザインで古き良き時代へのオマージュのよう。香りのトレンド変遷を考えても、全てにおいて“古い時代“を賛美するコンセプトのよう。
フローラルグリーンのまさに「そっと触れる」ような柔らかいタッチで、香りの輪郭が全体に霞みがかかったような良い意味での曖昧さ、を持つ。
1990年にリリースされた時も、懐かしい(実際には自分の知らない時代)感覚を人々にもたらしたのだろう。
それは今も変わらない。懐かしい感じがする。

懐古
ミッドナイトインパリという映画では主人公は1920年代のパリに強い憧れを持っている。そして20年代にアーティストたちのミューズであったある女性は、自分の時代に希望を見出せず19世紀末に生きたいと願う。
体験していない過去の時代への憧れというのは、普遍的なものなのかもしれない。
それはまさに、そっと触れるように、その時代を感じ取っている、からなのかもしれない。
21世紀という時代が100年後にどんな風に受け止められているのか。
あるいは2020年代は半世紀後にはどんな風に懐古されるのか。
遠ざかるごとに少しずつ色は褪せ、それが良いスパイスになって憧れの過去の時代に変貌するのだろうか。
いずれにしても、L'effleurのセピアがかった花々やリボンは、ビクトリア朝からベルエポックを想起させる。シンプルで霞みがかかったような風貌を持つ香り。

香り、思い、呼吸

2月26日がお誕生日の方、記念日のかた、おめでとうございます。

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