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天然信仰に思うこと

「天然のものはありますか?」
たまにそう聞かれることがある。
答えは100%?ノーなのだ。残念ながらというべきか、、、?

私のワークショップではいわゆる(アルコール性)香水の創作がメインなので、香水を製造する原料である香料を使うことがほとんど。
この香料は大きく2種類。
天然香料と合成香料。
市販香水にも「天然香料を使った」「贅沢に使った」と謳うものもあるけれど、香水類は香料について何を何%用いたか明示する義務はない。
(厳密にはIFRA加盟国において。香料やフレーバーに関する国際機関)
なので実際にどの程度どういう濃度の天然香料が使われているか、はわからない。
天然香料を用いるポジティブな動機は「作品への貢献」。完成した香りを形作る要素として重要な役割を果たすから。

使ってるかどうかより貢献しているかどうか
だからアルコール性香水類の香りのデザインにおいては、天然香料を使っているかどうかではなく、天然香料が素晴らしい働きをしているかどうか、に価値がある。
この論理で言えば、合成香料も合成かどうかではなく、その働きに価値があるかどうか。それが私の考え。

アロマセラピー用途の精油の条件
冒頭の質問の中には、ナチュラリスト思考で真に自然のものを望むケースと無暗に天然香料が合成香料に勝るという誤認があるように思う。
後者については今述べた通り。
現に、天然香料の範疇に入れられるかもしれないアロマセラピー用途の精油は、天然ゆえの不安定さやアンバランスさもあって、複雑な調合には不向きと思っている。
その精油、ナチュラル思考で考えた時にはその価値観にマッチした香りの素材と言えるかもしれない。
けれど、これもかなりしっかり見極めないと、既に希釈されていたりすることもある。
精油の条件は100%ナチュラル、100%ピュア、100%トータル、つまり天然であい、なにものも混入させておらず、なにものも除去していない、こと。
なので、既にいくつかの精油をミックスして「天然」と謳うことに個人的には違和感を感じてしまう。

天然香料は恩恵、アロマセラピー用途の精油も愛用するので、別に否定的なわけではない。ただ、香りのデザインにおいて天然と合成の序列があるような誤解、天然香料を本当にふんだんにその香水に用いているような誤認、それがとても残念に思えるのだ。
ちなみに、合成香料には、
・化学合成された純合成香料
・天然由来のものから特定の成分だけを単離した単離香料
がある。
天然のまま用いず、成分を単離するというのもその方が香りの安定性、香りのデザインへの貢献度が高いという判断のはず。

香りを味わうまえに「天然である必用がある」というバイアス、むやみやたらの天然信仰に、ちょっと懐疑的な私です。

#note100日
#コルクラボ
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