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黄昏時

朝早く起きなければいけないときは、起きなければという意識が強すぎてほとんど眠れない。この日も一時間ほど仮眠をとって家を出た。

そのまま1日仕事をこなして、体は眠い疲れたと訴える。なのに頭はドーパミンかアドレナリンか、何某かの要素がドバドバ出ているらしくて、謎のテンションのまま撮影中にみかけた河川敷へと足を向けていた。

空は暗くなりはじめていても、人の目はとても優秀に周りの景色を映し出す。

河川敷に沿うようにして植えられた桜の木まだまだ桜が多く残っていた。そして何より、その下に広がる菜の花が美しく、ああもっと早くにここにきたかったと思わせた。

菜の花に紛れるようにして撮影している人がたくさんいる。河川敷を歩く人たちは桜と菜の花のコラボを見て顔を綻ばせる。私は重たい鞄から今日も1日稼働していたカメラを取り出し構えてみる。

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こういうとき、どうやって撮ればいいのか、いつも迷う。構図は、露出は、シャッタースピードは、フラッシュをたくか、三脚に固定するか、人は入れるか。
迷うだけ迷ってよくわからないまま撮り続ける。結局何が正解かわからないまま時間だけがすぎていく。

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まだ明るかった周りはいつのまにか人の目を持ってしても周りが見えづらくなり、カメラの機能を持ってしても桜も菜の花の色もよく見えなくなっている。
もっと早い時間に来れたらよかったな。そう思って一息ついた時、ふと、土手の上をあるく人影を見つける。赤い空を背景に、歩く人たちはまさしく影になっていて、ああ、面白いな、と思う。

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太陽が沈み、あたりが闇に包まれ始める。桜も菜の花も色をなくし、空の色だけが映えていく。夜の闇は平等で平等に訪れる。
人も、物も、花もすべてを曖昧の中へと飲み込んで、夜は訪れる。

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きっと今日は泥のように眠ることだろう。

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