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ドリブル練習とリフティング練習は、本当に意味がないのか

突然ですが
「意味がない」「そんなの無駄だ」
これは、大人が子どもに言ってはいけない言葉の二大巨頭だと思ってます。

そして今回は、サッカーにおけるドリブル練習とリフティング練習、の話。

「ドリブルやリフティングには意味がない、そんなの無駄だ」

日本の育成界隈では、こんな言説がよく聞かれます。SNSでも。

「そんなの試合では使えない。ちゃんとサッカーを教えるべきだ」とも。

果たして本当に、ドリ練やリフティング練は意味がないもので、無駄なことなのだろうか。
本当に「試合で使えない」のだろうか。本当に、それはサッカーではないのか。

そんなことは全くない。これが答えです。

でも、これは勘違いされがちなのですが

「マラドーナやメッシのように、何人もドリブルで抜けるドリブラーを育てる!」
「リフティングを何万回もできるようにさせたい」

と思ってドリブルやリフティングを練習させてるのだと思われているフシがあるのだけれど、決してそうではない。

そんな安っぽい拘りなどない。そんな夢想もしていない。
少なくとも僕は。そして僕が知っている、信頼できる指導者の仲間たちは。

もっと奥深いところまで考えているし、表面上ではない、目には見えないものを見て指導しているのです。

今回は、そこを紐解きたいと思います。


ドリブラーを育てるためではない

ドリ練をやる目的としては、ボディーバランスを含め、身体を自由に動かすコーディネーション能力を上げること。
決してドリブラーを育てるためではないです。結果的にそうなれば、それはそれでラッキーということで。ドリブラーの存在はとても大事だしね。

ただそれ以上に、大きな目的として、とても大切にしていることは

【 大切なものを見切る「目」を養い、タイミングを逃さない選手になるため 】

ということです。

では、何を見切るのか。

・敵の足、重心、動き
・味方の位置(パスコース)味方の動き(タイミング)

ボールを見てボールにさわっていたら、見切るどころか、見つけることすらできない。だからボールと一体になり、ボールから自由になりたい。

「相手よりも先にボールにさわれるし、奪われない」
というその状態で、ボールなんか見ずに顔が上がっていること。ピッチの状況を見切れること。

これを、まずは標準装備させたいわけです。


ドリブルの大きな目的

① 相手を剥がし、誘い、集めること。そして、空いたスペースにボールを展開する。

② 相手のラインを破るため、数的優位をつくるために相手を「抜く」こと。
そして、相手の次のカバーが来たことで生まれたスペースに、ボールを入れていくため。

③ スペースがあれば、ボールを運んで前進させること。

④ 相手を抜いて(ズラして)ラストパスやシュートシーンを生み出すこと


メッシは世界最高のパサー

そして最後はパスで騙し、パスで仕留めたい。そこにサッカーの美しさがあると、僕は思ってます。
だからこそ尚更、ドリブルが大事になってくるわけで。それは先ほどまでの説明で、充分に話がつきますよね。

パスの美しさを体現している選手は⋯理想を超えてもはや思想のレベルですが、間違いなく、NBAのジノビリです。もしくはジェイソン・ウィリアムス。

サッカー選手で言え!というならば、グティでしょうか。

パスで騙し、パスで仕留める。相手の目と予想を欺くタイミングを逃さずに、美しいパスを通す。
パスの究極はノールックパスだと思うのですが、ノールックって、高等で冷静な状況判断そのものですからね。

正確なパスも、派手に見えるプレーも、その【前】には必ず周到な準備(状況判断、ボールを支配し、相手を止めるコントロール)があります。
そしてその【裏側】には、相手の位置や向き、味方の位置や動き出しが、頭の中で全て俯瞰でき、全て見えている。

すなわち、見切ってる状態。その状態で、ボールと一緒にいる。

これ、ボールを自由にプレーできる選手じゃないとできません。

ロナウジーニョって、ドリブルや派手なボールタッチが印象に残る選手だったけれど、実はスルーパスもめちゃくちゃ多かったじゃないですか。
それはメッシも同じ。メッシはドリブラーではなく、世界一のパサー だと僕は思ってます。

ロナウジーニョもメッシも、他の「パサー」と言われる選手よりも、正確無比で繊細なパスを通してる気がしました。
しかも、本当に今しかない、という瞬間を捉えて逃さずに。

それはなぜか。他の選手よりも、ボールを見なくても、ピッチの状況が全て俯瞰ができていたから。
他の選手よりも明らかに格段に、ボールに対する自信とゆとりがあったから。だから、瞬間を逃すことがない。

その瞬間に、誰よりも自由にボールと一緒にいれることができるから。

この見立ては、ほぼ正解だと思ってます。

パスは、味方の目が向いているほうに、味方と自分がわかってる瞬間に出す。
パスは、相手の目が向いていないほうに、相手がわかっていない瞬間に出す。

これが 咄嗟に、自由に、いとも簡単に
できる場所にボールがあり、相手よりも先にボールにさわれる場所に自分がいることができる。

ドリブルを必死に練習する目的の中でもここに一番の大きな意味があると、個人的には思ってます。

リフティングで得られるもの

それはリフティングも同じ。ボールと自分との間合い(距離)を、いつも一定にすること。ボールにさわらない足(軸足⋯ではなく、立ち足と呼びたい)をどう動かすかで、それは変わってくる。
ボールを扱う、というよりはボールと一緒に動ける、ボールと一体になれるように。しかも浮いてるボールでだから、尚更。

ボールとの間合い、距離感、リズムを養うには、リフティングはとても効果的。ボールから自由になるための、必須アイテム。

浮いているボールから自由になれれば、地面についているボールなんてもっと簡単ですしね。

さらに
リフティングの練習では空間認知能力を上げることもできるし、足のどの部位でボールにさわるかを意識して練習することで、それこそ良習慣として、ボールタッチの技術を上げ、さらにはキックの能力も上げることができる。

習慣の行き着く先は、無意識 です。
無意識にでも、思い通りにインステップにボールを当てることができる。状況に応じて、インサイドやアウトサイド、足の先のほうとか。
結果として、キックが格段に上手くなっていく。

別にリフティング練習をしなきゃキックが上手くならないということはないけれど、ひとつの有効な手段として、こういうこともできるよねと。

ドリブルやリフティングを否定している人たちの言説を聞くと、ほとんどが

「コレをできるようにさせたいからコレを練習させてるやんか!」
「試合で使えない!」

みたいなのが多いのですが

そうではなくて
「結果として数年後にアレとアレに繋がるから、今コレを練習させてるんやで」「だから、試合でめっちゃ使えますやん」
ということなんです。少なくとも僕らは。

あと、牛丼とか親子丼を箸で食べられずにスプーンで食べてるおじさん、よくいるじゃないですか。あれすごくカッコ悪いよね、って話です(伝われ)


最後に

『 タイミングはスピードを上回る 』

これは、UFCで活躍した総合格闘家、コナー・マクレガー の有名な言葉。

格闘技だけでなく、どんなスポーツにも当てはまる究極の言葉だと思います。
もちろん、サッカーでも。サッカーなら特に、かなぁ。

よく、ジュニア年代の試合会場では「持つな!」「早く離せ!」っていう大人の声が聞こえるじゃないですか。
ドリブルし過ぎたら危ない、ボールを持ち過ぎたら危ない、と。

大人によるこの言葉で、ボールをさわることへの恐怖心が子どもたちに生まれてしまうんじゃないかと、とても心配になっちゃいます。

大事なのは、タイミング。タイミングの大切さを伝えてあげれば、別に早くパスをしなきゃいけないこともないわけで。
受け手の味方にとってベストなタイミングでパスをするために、あえてドリブルしたり、別方向を見せたりという駆け引きは必要でしょう。

「早く離せ」じゃなく「ベストなタイミングを狙っておけ」
と、言ってあげられれば。

言い方ひとつで、ガラリと変わる。この一言でドリブラーは救われるし、生き返る。もちろん、ドリブラーじゃなくてもね。

この「今しかないタイミング」でパスを出したい、動きたい。

その時に
相手よりも先にボールにさわれる位置に自分がいて、不自由なくプレーしたい。その状態を標準装備している選手になってほしい。
だから、ドリ練やリフティング練をする意味もきっとあると、僕は信じてます。

と、昔からずっと言ってきてるのですが、、誰も聞いてくれません(泣)

もちろん、今回書いたことはほんの一部であり、あくまでも僕個人の見解です。他の意味を持たせてドリブルやリフティングを練習させている方もきっといるでしょう。もっと奥深く強い理念を持って指導されてきた先人の方々もたくさんいる。僕なんてまだまだ。

だからこそ、もっともっと感度を上げて、これが自分の頭の中の到達点、全てだなんて思わずに、アップデートを繰り返していかなければと思う。その結果、数年後には違うことを言っているかもしれない。ひょっとしたら数年後は「ドリ練なんか意味ないよね」と戦術ボード片手に冷笑してる人になってるかもしれないし(それだけは死んでもいやだ)

あ、書き忘れた。世界最高のパサーはメッシって書いたけど、世界最高のドリブラーは間違いなくイニエスタです。以上!

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