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乳幼児連れの海外旅行方法


1.赤子を連れてシンガポールに行くことになった

シンガポールで暮らしていた妹から、結婚することになった、式をするので来てほしいと突然連絡があった。
それ自体は構わないのだが、私には生まれたばかりの娘がおり、妻含めてどうするかという問題があった。

まずそもそも何歳から飛行機の搭乗が大丈夫なのか。小児科の見解をネットで調べた。乳幼児の負担になるのは間違いないので冠婚葬祭などやむを得ない事情がある場合を除いて奨励されないとのこと。そして今回は冠婚葬祭に当てはまっている。
航空会社側としてはどうなのか。こちらも調べたところ、多くの会社では生後8日後から搭乗が可能となっている。結構早い。しかも大人ひとりにつき2歳までの幼児が無料だ(国内線だと3歳まで無料らしい)

今回は冠婚葬祭というやむを得ない事情であること、娘の搭乗自体は無料であることから、なかなか妹と会う機会もないので、妻と話し合った結果家族でシンガポールに行くことになった。

2.事前に考えなければいけないこと

事前に考えなければならないことを列挙した。

・乳幼児を連れて行ける国なのか

結論から言うと世の中の大半の国は乳幼児を連れての旅行に向かない。もし冠婚葬祭が紛争地やインフラ未整備の途上国で行われる場合は子供の同伴を諦めた方がいいだろう(前者は大人ひとりでも渡航は控えるべきだ)
私もそれなりに多くの国に行っているが、東アジア、東南アジアで乳幼児を連れて歩けるなと思える国はシンガポール、台湾、韓国くらいである。個人の力量、現地人のサポートなどにより変わってくるので一概に言えるものでもないが、あまり旅慣れしていない日本人がなんとか子連れ旅行できるのは同じくらいの水準の東アジア、東南アジアの先進国くらいだと思う。マレーシアくらいのレベルでも私なら避ける。
これらの国々は時差も少なく、飛行時間も長くて6時間程度なので、飛行機の出発時間さえ考えれば朝のうちに日本を出発して夕方ごろ現地到着して夜にホテルにチェックインなども可能だ。何よりも治安が良く、ベビーカーを押して歩いても問題がない。大事なのは事前準備と情報収集だ。

・移動方法について

事実上飛行機一択なのだが、飛行機の移動時間は短く、乗り換えも少ない方が望ましい。直行便がベストだ。時間帯も日中の飛行であることが一番負担が少なくて済む。夜間になった場合そもそも寝れないリスクがある。寝れないまま現地に着いてホテルに移動、クタクタで眠りたいが赤子の世話をしなければならず眠ることもできない状態になったら最悪だ。現地に助けてくれる知り合いがいれば預けて仮眠を取ることもできるが、そうでないなら日中に到着して夜までにはホテルに到着してそのまま子供を寝かしつけられるフライトを選ぶべきだ。

空港から宿泊場所までの移動手段も考えなければならない。どうしても荷物が重くなるのでタクシーを使うか、現地の知り合いに車を出してもらうよう頼むのが確実だ。
バス、鉄道などもあるが、荷物が嵩張るため物理的に厳しく、駅やバス停などからホテルまでタクシーを使わなければならない場合は二度手間となるので空港から使った方が手っ取り早い。そもそも日本ほど駅や公共交通機関のバリアフリーが進んでおらずベビーカーなどの使用が困難だったり、鉄道やバスの治安がよくなかったりもする。たくさんの荷物と赤子を抱えた空港から乗ってきた旅行者など窃盗常習犯から見たらカモがネギ背負ってるようなものだ。
タクシーはメーター制の国とそうでないところがある。交渉性の国の場合はあらかじめ相場を調べておこう。値切るのが基本ではあるが、赤子を抱えていることと多くの荷物の運搬をお願いすることになるので、よほどぼったくられているわけでもないなら相場より高めの運賃を払って安全運転をお願いしてもいいかもしれない(なお高めに払ったからといって安全運転してくれる保証はない)
タクシーにチャイルドシートがついていることはほぼない。抱っこ紐で抱えて後部座席に乗り、事故に巻き込まれることなく無事到着することを祈ろう。
ホテルによっては送迎を用意してくれるところもあるので確認してみよう。送迎があるのが一番楽で安心である。

・機内での過ごし方について

赤子を膝に乗せて搭乗する場合、事前に乳幼児用のベルトが用意される。離着陸時および気流が乱れているときは自席のベルトに乳幼児用ベルトをつけて自分の子供を座らせる。つまり膝抱き搭乗であっても安全は確保される。
航空会社にもよるが、基本的には前に籠がある席に案内される。離着陸時以外は籠に寝かせることも可能だ。

シンガポールエアラインのバシネット

なお、籠は小さいので素直に寝てくれるとは限らない。基本は抱っこしたり籠に座らせたりしてあやして気を紛らわせて過ごすことになる。
気圧の変化で赤子が泣くこともあるらしいが、自分の娘は泣かなかったし周りでも気圧で泣く子供はあまりいなかった。どちらかというと離着陸などでベルトに固定すると退屈で泣くケースの方が多い。抱っこだけであやすのも負担なのであらかじめ機内に子供用おもちゃをいくつか持ち込んでおこう。
機内では隣か真後ろにサポートしてくれる人が座っていると便利である。どちらかが機内食を先に食べて、食べ終わったら交代して子供の面倒を見ることも可能である。1人よりも2人以上でいた方が別の乗客に文句を言われる可能性も低くなる。籠のある席は自席の隣も子供を乗せることができるようになってることが多く、隣も子連れ搭乗者である可能性は高い。同じ境遇の人が隣にいるだけでも心強い。

また、長時間のフライトであるため、定期的にオムツの交換、授乳、離乳食が必要になってくる。ミルクのお湯はCAに頼むとくれる。離乳食も事前に申請すれば用意してくれる。基本的に出発地で市販されているものが出てくる。食べ慣れているものの方がいいなら自分で持ち込むのもいい。
長時間のフライトとなるため、1回はうんちの処理をしなければならないと考えた方がいい。オムツ、お尻拭き、ペットシート、ゴミ袋、着替えなどをいくつか手荷物に持っておこう。機内のトイレにはオムツ替え台がついているが、スペースが狭く台の上は滑りやすいので注意する必要あり。
長々と書いたが、つまり機内でも基本的には通常のお世話をすることになるのだ。映画などを見ている暇はあまりない。

シンガポール出発時にもらったハインツの離乳食

・どこに泊まるべきか

まずホテルに子供用ベッドの用意があるか確認しよう。ホテルはまず第一に赤子の世話をできるかという観点で探すこと。衛生面のリスクも考えると多少高めの価格帯で探した方がいい。安ホテルやゲストハウスに泊まるくらいなら民泊の方がマシである。電気ケトルなどお湯を作れる家電があるのが望ましいが、もしなかったら初日のうちに買おう。バスタブのないシャワーのみのホテルもあるが、シャワーのみでも子供の体を洗うことは可能なので問題ない。寝ても安全なベッドとミルクを作る環境があるかをとにかくチェックすること。
ホテルの立地も重要だ。結婚式会場、またはその近辺のホテルに泊まるべきだ。周囲にドラッグストアやコンビニがあって必要なものを適宜買い足すことができる場所だとなおよい。テイクアウト可能な飲食店も周囲にあると良い。

3.準備すべきもの

・子供のパスポート、入国書類

チケットは無料だが、当然子供のパスポートは必要になる。出発までにパスポートを作成しておくこと。乳幼児の場合写真を撮るのが地味に難しい。子供は5年パスポートのみ取得可能。

・子供の着替え

日数分+2日分くらい用意しておこう。肌着やスタイなどは沐浴後に風呂場で洗って部屋干ししよう。近くにコインランドリーがあるなら使っても良い。

・折り畳み式のバケツ

子供服の選択に便利。折りたたみ式だと嵩張らない。百均で売っている。

・洗濯バサミ、物干しロープ

部屋で洗濯物を干すために使用する。

・ミルク

未開封のものを1缶スーツケースに入れよう。それとは別に機内での調乳用を3回分用意しよう。多めに用意しておくくらいが丁度いい。帰国時も機内用ミルクの用意を忘れずに。液体ミルクがあるとそのまま飲ませることができるので調乳が楽だ。

・オムツセット

オムツ、オムツ処理袋、お尻拭き、手拭きなど未開封のものをスーツケースに入れておく。こちらも機内用があると便利だ。機内のトイレはオムツ交換台があるが、簡易的なもので小さく、固定することもできないのでお尻拭きは多めに用意しよう。うんち処理時に汚れてしまう可能性もあるので着替えも機内に持ち込もう。

・離乳食

既製品をあらかじめ買っておこう。旅行中もスムーズに食べられるように事前に慣れさせておくと良い。機内食でも事前に頼んでおけば離乳食を用意してくれるが、市販のものなのであらかじめ買っておいて持ち込んだ方が確実だ。

・抱っこ紐、ベビーカー

子供の移動用に抱っこ紐とベビーカーはマストだ。抱っこ紐は道がデコボコしていても機動力を失わないから重宝する。ベビーカーよりも活躍する。

・子供用おもちゃ

機内、ホテルの部屋で遊ばせる用におもちゃを用意しておこう。子供は案外気圧や環境の変化には耐えられるが、退屈には耐えられない。機内でもホテルでもとにかくあやしておかないと泣き出す。

・日焼け止め

地域によっては日焼け止め自体あまり売ってないことも。日差しが強い国に行く場合はあらかじめ日本で購入しておこう。

4.実際のシンガポール滞在の様子

1日目 成田9時発、シンガポール17時着。空港から妹の夫の車でホテルに移動。18時ごろチェックイン。妻に娘の面倒を見てもらい、妹夫実家の人々と顔合わせ。帰宅後娘を寝かしつけて自分も就寝
2日目 結婚式本番 実家親族、妻実家家族、妻を会場に案内する。式後ホテルに戻って娘に離乳食を与えて体を洗い着替えさせる。夕方マリーナベイサンズの展望台に登る。なぜか展望台の上で娘にミルクを与える。早めに帰宅して近所のテイクアウトの店で晩ご飯を買い娘を寝かしつけて食事後就寝
3日目 妻、娘、妻実家家族のメンバーを連れて観光案内。アラブストリート、プラナカン博物館、ショッピングモール。ホテルに戻って娘を風呂に入れる。妻、娘、妻実家家族メンバーを連れて妹家族と食事会。ホテルに戻って娘を寝かせる
4日目 タクシーで空港に移動 空港で肉骨茶を食べる 朝シンガポールを出て夜に成田到着

ざっくり書いたが、1日目で現地到着してホテルにチェックイン、2日目結婚式本番、3日目観光、4日目帰国というスケジュールを無事こなすことができた。3日目は本来片付け日として用意していたのだが、周辺の観光地を巡る余裕もあった。これは私がある程度シンガポールに慣れていたからなので、あまり知らない国の場合は素直に帰国準備と休憩に専念した方がいい。どう過ごすにせよ、メインイベントの翌日は予備日として空けておいた方が安全である。
10代のとき以来久々に訪れたアラブストリートで娘の服を買ったり、10年近く会っていなかった友人と再会して互いの育児の話をしたりなど想定以上に楽しめた。妹夫婦、実家、義実家、親族など私の娘と時間を過ごして楽しんでもらえた。普通の旅行と比べたらハードではあったがいいシンガポール滞在となった。

5.子連れ海外は大変だがいい思い出になる

世の中には自分の快不快を一般的な倫理観だと思い込み押し付けてくるような人がいる。よく事情を知りもしないのにやめておきなよ可哀想と言ってくるような人を見た。
しかし、冠婚葬祭などやむを得ない事情が発生することがある。シンガポールで暮らしていた私の友人も生後1ヶ月の赤子を連れて日本に帰省した。それすら認めないということは海外で暮らしている場合子供の理性が発達するまで孫の顔を見る権利もないのだろうか。航空会社の規定で子連れが認められていないのなら仕方ないが、少なくとも大半の国際線および国内線は2歳未満の搭乗を認めている。使えるものは使った方がいいだろう。自分の不快感を道徳規範と勘違いしてる無責任な外野の声に惑わされず、必要な情報を手に入れて、万全を期して子供との旅を楽しんでほしい。
海外旅行は子連れでなくても自己責任が基本である。必要なのは丁寧な準備と入念な情報集め、そして現地での柔軟な対応と親の体力だ。普段以上に慎重に行動するくらいがちょうどいい。大変ではあるが、いい思い出にもなる。私は子連れ海外旅行は奨励しない立場ではあるが、やむを得ない事情というものがあるのも理解している。このnoteが少しでも役立つことを願う。


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