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全く医療も施されず、糖尿で痩せ細り、10歳で愛護センターに持ち込まれた盲目の犬の生き様

2023年5月なかば、移住した先の現状を知りたくて、山梨県動物愛護センターの見学に行った。

当時、まだ先の予定もあり、見学がてら、一応先に預かりボランティアに登録だけしておこうと申請した。

そんな矢先、突然の電話。ガリガリの目の見えない小型犬の老犬の預かり依頼だった。

今まで全く医療は施されていなかったらしく、センターで調べたら糖尿病を患っているだろうとのこと。

手も怪我をしているし、後ろ足がびっこで、ほとんど動こうとしない…おそらく看取りになると思うけど、センターだと夜は人もいないし、流石にかわいそうで。と。

他のボラさんにも当たってはいるが、なかなか受け入れ先が見つからないと。

私も、移住したら、今までのような預かりボランティアではなく、老犬や看取りの預かりボランティアをしようと思っていたので、そう伝えてはあった。

時期的にも、小型犬も想定外のことで(保護されやすい小型犬より、我が家の環境的に、受け入れ先の少ない中大型犬をと思っていたから)

夫にも相談し、一時間ほど悩んだが、これも縁だ!と思い、えいや!と即決。

まだ見ぬその子が、我が家にやってきて初ご対面!!

ガリガリ、ハゲハゲ、痛々しい手。後ろ足はびっこで、目は見えず、耳も外耳炎がひどくあまり聞こえていない。

初めての場所に、さぞ心細いだろう…なんて思ってたけど、なんたる堂々としたいでたち!!

当時の天を字面で表すと、なんとも辛い…と思いがちだけれど。

そこにいた、小さなおじい犬は、笑えるほどに、悲壮感がないのだ!笑

名前は、「天」。大空、天使、天才…いろんな意味を含めて。
極め付けは、天津飯の第三の目みたいに、見えてる子だから。

盲目の犬も、小型犬も、糖尿の犬も飼ったことがないので、こちらは割とドキドキ。

中型犬が3頭いるし、すぐに、この子が安全に動き回れる部屋を作り、あらゆる対策を施した。

この後、ほんの数日で撤去するとも知らずに…笑

犬たちとも、すんなり馴染んで、みるみる元気に歩けるようになって。

気づいたら、この柵を押し除けて、何度も何度も出て来てるではありませんか。
え、どーやって。

じゃあ、あちこち当たって怪我しないように、ドッグバンパーを作ろう!!と、試行錯誤で自作。

だが、これも試作してるうちに、すぐに、いらんなぁ!の結論に至る。

勝手にウロウロしながら、少し当たりながら、うちの犬たちに教わりながら。

ルンバ並みに、あっという間に間取りを熟知して、自分の部屋からきて、散々ウロウロして自分で帰るという。それも怪我もせず。

もう、隔離部屋いらずで、あっという間に、普通に、みんなと一緒の暮らしが始まったのだ。

笑えるほどに、淡々とマイペースで。大きな犬たちとも堂々と馴染んで。

よっこらせと、タカに腰かける天

甘えたい時は、ちょいちょいとせがむ。

毎日のインスリンの注射は欠かせないけど、食欲ありまくりで、目の前に食べ物差し出すと、まさしくピラニア!!!!!の如く、食いついてくる。こーわっ。

手の怪我が治る頃には、お散歩も始めた。爪が巻くほど伸びていたらしく、散歩も行っていなかっただろうとのことだったけど。

少しずつ少しずつお散歩行き始めたら、後ろ足のけんけん歩きもなくなり、歩く歩く。

目は見えてないのだけど、我が道を行く、マイペースな堂々たる歩き。

歩きたくない時は、ちゃんと動かないから、わかりやすくてよろし。

あれ?聞いてた話と違う…笑

全然、看取りどころか、みるみる元気になってる!!
すんごい嬉しいじゃないか!!!!

毛が生えるのは最後だからねぇ。と言われ、諦めていた薄毛問題も。

みるみる生えてきて、フッサフサ!!カットが必要になるとはね。

天は、吠えることがない。基本的に、声を出すのは朝だけ。

私たちのアラームが鳴った時、もしくは、まだ起きないんかーい!!って時に。

毎朝、ニワトリの如く。

ワンワンではなく、ウニャイウニャイアキャー!!!!と鳴いて起こすのだ。
しかも、スヌーズ機能付き。

天は、おしっこやうんちをしたい時、音も立てずに、スタコラとお庭へのドアの前に行く。

吠えて呼ぶわけでもないのに、不思議と気づかせる。

絶対に、私たちがどこにいようと、気づいちゃう。気づかせちゃうのだ。

毎回、これぞテレパシー!!って、夫は感激している。
そう、まさにテレパシー以外のなにものでもないのだ。

天は、リアルに、ヨーダのようなのだ。

天は、出会った時から、確固たる自信に満ちていた。

最終的に、飼い主が手放したけれど。医療も受けていなかったけれど。

私たち外側が見る事情なんて関係なくて、彼は間違いなく、愛されていたのだ。

「オレ、可哀想じゃないよ」と、初対面の時に、強がりでもなんでもなく、あっけらかーんと、堂々と言ってきた彼。

わかる、わかるよ、君の全身のエネルギーから、そう感じるよ。

私たちも犬たちもみんな必要なサポートはするけど、同情もしなければ、特別扱いもしない。

事情はどうあれ元飼い主と天の間には、揺るぎない絆も愛情もあったし、周りの人にも愛されていたんだろう。

それは、何をするとかしないとか、最低限のお世話とかケアとか…

そーゆーことを超越して、天の中には、ちゃんと愛情が刻まれていた。

天は、愛されてた自信があるし、自分自身にもちゃんと誇りがある。

だから、どこでも誰にでも、愛される自信がちゃんとあって。

どんな状況でも、目が見えなかろうが、耳が聞こえなかろうが、安心している。

だって、オレ愛されてるから。

確固たる自己肯定感の高さ、だからこそ、あらゆることへと委ねられる。

オレは絶対大丈夫。

そう信じてる、いや、わかってる、知ってるんだもんね。

小さなガリガリの体からは想像つかないほど、彼の内面はどっしりと強い。

宇宙犬。

毎日、淡々と、マイペースに暮らす天。ちゃんと自己主張もする。

お腹空いてる時は、穏やかヨーダがスニッカーズのCMみたいになるし。

嫌な時は、グレムリンみたいになることもあるが、基本的にはヨーダ。

生き方が、かっこいいんですわ。

すーっと我が家にやってきて、あっという間に調和して、あらゆる学びをくれる。

ちっこくって、大きすぎる、面白いやつなのだ。

みんな縁があって、我が家にきてくれて。

今いる四頭、全員保護犬だけど、みんなが育ってきた経験も受け止め方もそれぞれ違った。

面白いほどに、個性バラバラすぎるけど。

とにかく、面白くって、笑いまくりの日々。

みんなそれぞれに、夫婦の鏡となり、師匠である。

毎日、色々気づかせてくれる。最高の仲間なのだ。


過去は変えられないし、「可哀想」なこともあっただろう。

でも、保護されて、保護犬になった瞬間に、新たな人生、希望の人生の幕開けでもある。

今は、過去の続きで成り立っているものではないから。

どんな過去があろうと、今、この瞬間から、幸せに舵を切れるのだ。

「保護犬」は、無限の可能性、希望に満ちている。

「可哀想」を取っ払って、どんな過去も笑い飛ばせる今を積み重ねていけばいいのだから。

この子達は、我が家にとんでもなくたっくさんの幸せを持ち寄ってくれた。

みんなでっかいでっかい、幸せの塊♪

今も、これを書きながら、足元には、天がウロウロ、ご飯の支度をしろと教えてくれる。

彼の体内時計は、すんばらしいのでアール。

天は里親募集中。最高の人生をあなたと共に…。

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