書評:『幸せになる勇気』(岸見 一郎, 古賀 史健)

『幸せになる勇気』(岸見 一郎, 古賀 史健)(http://goo.gl/0jWmk3)

岸見一郎さんの本や、岸見さんが翻訳されたアドラーの本は好きなのですが、私は、古賀さんの本に好感が持てないでいます(すごく読みやすいのは確かで、中身もあるのですが、煽りが過ぎるように私には思えます)

この本の主人公は、そういう似非アドレリアンであって、これが、哲人である岸見先生と問答する『ソクラテスの弁明』スタイルの本です。

人のせいにしてばかりにしている人物を主人公として描かれるので、

「それはおませのせいだろ、人のせいにすんな、このダメ人間」
「この似非アドレリアンめ」
「うざい!この自称教育者、偽物!!」

と、主人公に対して、突っ込みながら読んでいたので、私は、あまり楽しめませんでした。

子育てという視点で読む場合、(『叱らない子育て』と言うと、「そんなの無理だ」「現実的じゃない」という声が良く聞こえて来てきますが、)子どもを叱っては行けない理由「叱らざるを得ない理由がある」という主張をきちんと論破していると言う意味で、この本は、役立つと思いました(褒める子育てもダメな理由も書いてあります)。

私が面白いと思ったのは、問題児の5段階です。

これは、現代アドラー心理学のようで、アドラーの著書では明確に指摘されていないと思います。体系化されていて良いと思いました。

問題行動の五段階
段階1:称賛の要求
段階2:注目喚起
段階3:権力争い
段階4:復讐
段階5:無能の証明

(1)子どもを褒めると、褒めないと何もやらない子になってしまう。
褒められなくなると、
(2)悪い事をしてでも目立って、注目を得ようとする。
それでもダメだと、
(3)闘いを始める、
それで親に勝てない事がわかると
(4)相手への嫌がらせをしだす(このあたりに自傷行為が入る)。
(5)「もういない事にして」となって、周りと関わりを断つようになる、
だそうです。

ちなみに、段階3でとどめておかないと、当事者間での解決は不可能になってしまうそうです。子育てをする際に、憶えておくと良いと思いました。

実際、子育てをしていると、子どもが、
(1)「すごいでしょ」と言ってきたり、
(2)「みてー、みてー」と大声で叫んでみたり、
(3)突然殴り掛かってきて、親に挑戦してきたり、
ということがありました。

ここで親が子どもを力づくでねじ伏せると、力ではかなわないと悟り、
(4)子どもによる親への嫌がらせが始まり、
(5)親との交流を断つ、
となると思います。問題行動の段階を良く言い得ていると私は思います
(うちも3段階目までは覚えがあります)。

対処としては、「子どもの存在を認めてあげる」が大切だそうです。「ただ、そこにいるだけで、ありがとう」と居場所を与えてあげると、不安がらずに、褒めてもらう必要もないようです。


この本は、子育ての本ではないので子育て用途では主張が回りくどいですが、偽物のアドレリアン子育てにならないための注意喚起と言う意味で、この本は有効であると思いました。

その他では、
「悪いあの人」と「かわいそうな私」
そして、「これからどうする?」
という論法が面白いと思いました。

仕事における言動の多くは、最初の二つに当てはまっていることが多く、
「聞き流すのが正解」であることが理解できます。そして、
「これからどうする?」という方向に話を流せば良いと。

と、振り返ってみると、いろいろ役立つし、おもしろい本ですね。
(だから、古賀さんの本は売れるんだろうと思います)

私は、投資も好きで、ウォーレン・バフェットも好きなのですが、『バリュー投資』と『アドラー心理学』は本当に良く似ているなと思います。

・原理は単純で、頭で理解するのは容易だが、実践するのは難しい
・多くの人が実践できずにくじける。途中でやめる
・徹底できた人だけ、幸せになれる
・分かる人には一瞬で分かって実践できる。おそらく長い期間をかけて身につける事は出来ず、すぐに分かるか、ずっと分からないかのどちらかである

そんなことを思いながら、この本を読んでおりました。
(この本は、読んでいる時に楽しめなかったけど、書評を書く時には楽しめた気がします)

『幸せになる勇気』(岸見 一郎, 古賀 史健)(http://goo.gl/0jWmk3)

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