忘れがたきは“シジミラーメン”
年の瀬の1 週間、仕事で沖縄・石垣島へ行ったおり、ホテルの近くにあった食堂で「八重山そば」を食べました。
八重山そばは、大きなくくりでは「沖縄そば」。そば粉ではなく小麦粉を原料とし、かん水を使って作る太めの麺と、豚骨や鰹節からとったスープ、そこへ豚肉、ネギ、かまぼこなどの具をのせます。
沖縄そばといえば「ソーキそば」のイメージがありましたが、必ずしもイコールではないと食堂のおばさん。豚の骨付きあばら肉(スペアリブ)を沖縄ではソーキと呼ぶからで、ラーメンにおける「チャーシュー麺」に近いと。
振り返ると沖縄そばを食べるのは人生で2 度目。ラーメン好きとしては不思議なくらい、これまで縁がありませんでした。
そもそも「そば」を名乗っているけど、ラーメンの定義を「かん水を使った麺」とするなら沖縄そばはれっきとしたラーメンなのです。
しかも、昔から地元の味、郷土食(ローカルフード)として、沖縄の人々に親しまれてきた“ご当地ラーメン”といえるでしょう。
近年、町おこしのために創作されたご当地ラーメンが増えており、石垣島でも「石垣島ラーメン」の看板を出している店をいくつかみかけました。
ただ、実際に食べてみましたが、あえて「石垣島ラーメン」と名乗る意味はあるのか疑問でした。もっと自信をもって沖縄そば、八重山そばを押し出していったほうがいいのではないでしょうか。
各地域の特色を生かしたご当地ラーメン
いまや日本の国民食となったラーメンですが、各地域の特色を生かした、ご当地ラーメン花盛りです。
ネットで「ご当地ラーメン」と検索すると、こんなサイトがありました。
ご当地ラーメンとは「札幌ラーメンや博多ラーメンなど、味や麺、具材などに、各地域の特色を生かした、独自性が高く地域色の濃いラーメン」。
個人的なことを書くと、私が初めてラーメンを食べたのは子供のころ、つまり60年前です。父親に連れられて夜の屋台で「中華そば」を食べました。
鶏ガラをベースにした醤油のスープでやさしい味だったのを覚えています。中華麺とチャーシュー、メンマ、鳴門、きざみネギなどをのせた、いわゆるスタンダードなラーメンでした。
余談ながら、当時、屋台のラーメン屋は客寄せに「チャルメラ」を鳴らしていたのですが、そのメロディをいつしか覚えてしまい、小学校の教室に置かれたオルガンで「ドレミーレド ドレミレドレー」と爪弾いたものです。
時がさらに経って、社会人として初めてもらった給料で食べた味噌ラーメンの美味しさに衝撃を受け、ラーメンにハマるきっかけとなりました。
店の名前も覚えています。「三平」。東京・渋谷のセンター街を少し入った雑居ビルの3階にありました。
味噌汁が嫌いな日本人はまずいないでしょう。1300年も前から日本人の食と健康を支えてきた発酵調味料です。このなじみの深い味噌とラーメンを結びつけた人はほんとに凄いとしかいえません。
ちょうどそのころ、札幌発祥の味噌ラーメンが大人気となり、全国に広がっていたのでした。味噌ラーメンを「札幌ラーメン」とも呼んでいました。
ですから、味噌ラーメンが“元祖・ご当地ラーメン”といえるでしょう。
全国各地で〝金鉱〟を掘り当てる
札幌ラーメンが全国ブームになるにつれ、九州地方の人はこう思ったのではないでしょうか。
「うちらは豚骨ラーメンばい」(博多弁あってる?)
味噌ラーメンに続き豚骨ラーメンが全国的な知名度を獲得しました。いま、アメリカで人気を博している博多ラーメンの一風堂1号店(福岡)は1985年です。
味噌ラーメン、豚骨ラーメンは濃厚なスープが特徴で、人気が広がるにつれて“アンチ・こってり”機運が生まれます。そうして2000年代に入り、あっさり味が売りの塩ラーメンブームが起こりました。
塩ラーメンそのものは古くからありましたが、いずれにせよ、やがて「全国各地にはユニークな味わいのローカルラーメンがあるのでは?」という考えに到ります。
ご当地ラーメンという金鉱を掘りあてるのに時間はかかりませんでした。今日の状況をみればよくわかります。
ここでまた個人的な話をすると、私には“忘れがたいラーメン”があるのです。正確な名称は知りませんが「シジミラーメン」。
若いころ青森県の北西部にある十三湊を訪れたとき、たまたま入った店で食べました。琥珀色のスープでおそらく魚介だし、麺のうえにシジミの身がドサッとのっているシンプルなラーメンでした。
仕事仲間とラーメンの話題で盛り上がると、シジミラーメンのことを話すのですが、いまのところ誰も知りません。
ネットで検索してみたら、いくつかヒットしました。ただ、どうも私の記憶のなかにあるシジミラーメンと少し違うような気がします。
どなたか心当たりのある人がいれば、教えてくだされば幸いです。
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