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二泊三日で青ヶ島。上陸できるか? 帰ってこれるか? (2)青ヶ島上陸編

■青ヶ島旅行day2 青ヶ島上陸


ヘリが飛べる


朝起きると晴天。これならヘリが飛べる。よかった。

八丈島空港に行って、隅の方にあるヘリ搭乗手続カウンターへ。なんたって9人しか乗れないから、手続きものんびりしてても大丈夫。最近はLCCの慌ただしさに慣れちゃってたから、なんだか気が抜ける。
でも、荷物検査は特になくて、重さの確認だけってのはいいのかねって思っちゃうな。

基本料金に含まれているのは自分+荷物5キロとのことで、それ以上は1キロごとに250円くらいの追加料金を支払う。僕はバックパックだけで1キロ超過程度だったけれど、もしキャンプがしたくてテントとか持ちこむなら大変そう。そういう人はさすがに船で行くのかなあ。
なんて思ってたら、同乗の白人2人組はキャンプ場に泊まるつもりとか言っていた。でもテントはなし、寝袋だけ。ハードな人たちだ。

ヘリの乗客のうち3人は青ヶ島に住んでいる人らしく、手慣れた感じで乗り込み、新聞なんて読みながら離陸を待っている。
残りは観光客。だいたいみんな計器のチェックを続けるパイロットを珍しそうに眺めていた。

いよいよ出発。
始めてのヘリ。ふわふわっと飛び上がって、ふらふらっと飛んで、するするっと降りた。意外とあっけない。
でも雲の下を飛んでいたので海がよく見えて綺麗だったし、ほとんど揺れず快適だった。20分で70キロも飛んじゃうんだから時速200キロくらいでてる計算になるはずなんだけど本当かなあと思うほどに、なんかスピードを感じなかった。

やがて向こうに青ヶ島が見えてきて、本当に島のまわりがぜんぶが崖になっていて二重カルデラの地形で、おーすごいなー、ってテンションが上がる。


思えばこれが旅行のハイライト。島に降りてしまえば島の地形は大して見えないわけで、なんか壮大な出オチの気分。


青ヶ島展望台めぐり


宿は、ザ・民宿!って感じ。
襖、鍵なし。それを言ったら建物自体も完全フルオープンで鍵をかけることはないようなので、ザ・島!って感じかな。

島はとにかく細い坂道と、その両側にもっさりと茂る木々で、方向感覚がなくなる。まあ僕の場合はもともとひどい方向音痴なのであまり変わらないんだろうけれど、それにしても目印になるものがよくわからない。

宿に着いたのは10時くらい。
島は大きく分けると集落側とカルデラ側の2ブロックに分けられる。
とりあえず午前中に集落側をまわってみることに。

まず、島で一番の高さの展望台という場所を目指す。
しかし、ときどき道が周りの木に覆われてトンネル状になっていたり、遊歩道が草に侵食されて迷子になりそうだったり、つっこみどころは満載だけれど、とりあえず迷わずに頂上に到着。

カルデラが見えた。そして海。

しかし、本当にどこも崖だらけ。島中が火曜サスペンス劇場の舞台。船越英一郎がでてきそうな。

そして集落側にはもう一つ山があって、そっちの上には神社があるという。
で、一度完全に山を降りてもう一つに登るよりも、途中に二つの山の頂上を繋いでいる石段があると地図に載っている。じゃあそこを登っていけばいいかな、地図には「急な石段なのでおすすめしません」みたいなこと書いてあるけど、まあ観光客になんかあったら面倒だ的なことで書いてるだけでしょ。

と、思ったら。
本当にとんでもない石段だった

写真だとわかりにくいけど、最大斜度70度近くとからしく。石段と呼ぶのは無理がある。


表面はコケ、その上に草、さらに木の枝。歩きにくくてしょうがない。
と思ったのは序盤だけ。
徐々に坂は急になっていき、両手も石段につかないと登れないほどに。
なんだこりゃ。
何度か心が折れそうになったけれど、降りる方がさらに大変そうでたぶん滑り落ちるよなという危険を感じて、登り切るしかなかった。ボルダリング体験したことあってよかった。
地図にあったとおり、この石段はおすすめしません。あー、でも体感してほしいかも。でも、正直危ないとは思われます。

ようやく着いた神社は、お面が祀られていて、ちと不気味。
なむなむして下る。

もう一つの展望台への遊歩道も草に侵食されてるし、ちゃんと靴履いてきてよかった。ビーチサンダルだったら死んでた。

一度集落に戻り、島で唯一のお店で買い物。
さすがに生鮮食品は少ないけれど、田舎のお店っていう雰囲気くらいにはレトルトや冷凍食品やお菓子なんかも揃ってる。酒類もごく一般的なラインまでだけど一通り。運搬費のせいか、若干高いのは仕方ないかな。

暑いし歩いたし、ビール美味しい。


カルデラの中へ


午後は集落を離れてカルデラ側まで足をのばすことに。
青ヶ島は島の周りを一周しても9キロくらいの大きさなので、歩きでも暗くなるまでには島一周して帰って来れるだろう、と思っていた。いや、確かに距離的にはその通りで、戻っても来れたんだけど、ずーーっと坂道なので、距離以上に体感としてはきつかった。

集落側とカルデラ側の間にはちょっとした峠のようなところがあって、そこまでは登り坂。ぽてぽてと歩く。
村内電話なんてのがあったり、
何を表してるのかわからない数字の看板があったり。

だんだん海が見えてきて、やがて向こうの方にカルデラが見える。
おお、近づいてる。

カルデラの脇にはキャンプ場があって、火山の地熱を使ったサウナや、蒸気で調理ができる釜があったりする。水場もトイレもあるし、確かにキャンプできるなあ。最近流行りのおしゃれキャンプな雰囲気は全然ないけれど。

さっき集落のお店で買ってきたビールをプシュッとする。
レンタカー借りたらできない、歩きの特権。
昨日の山登りのダメージも残っているし、とにかく全てが坂道ということもあり、意外と疲れた。

キャンプ場の脇の山をさらに登ると遊歩道がある。
確かに遊歩道なんだろうけど、ときどき道がなくなったり、木に覆われてたりするから油断できない。まあ迷うほどではないんだけれど。
見晴らしスポットみたいに書いてあるところも、すっかり木が伸びて何も見えないというアイデンティティクライシスだったり。

山の上には鳥居と塚。昔、妊娠中や生理中の女性はこっちの山には入っちゃいけなかったんだけど、畑仕事したいから入っていいでしょって山の神様にお願いするために造られたとか。相撲協会よりも柔軟な神様。


火山の地熱のおかげで作物はよく育つらしいけれど、やっぱり噴火は怖い。両面併せ持った神様になるんだろう。

カルデラを一回りした後で、ちょっと港に行ってみる。


なんと、港への道はトンネル。


島の周りがほとんど崖みたいなもんだから、普通の海岸なんてものはなく、港は島の外側にへばりついているような形。なので、港までは山を越えて崖を下るか、トンネルを掘らないと行けないという地形になってしまう。

トンネルを抜けて港に出ると、コンクリート造りの非常に人工的な景色
崖は強引に補強されているし、


船を繋いでおけないからクレーンで持ち上げて格納するようになってるし、


テトラポットはどでかいし、


なんか自然と戦ってるっていう感じがする。


牛と日暮れと居酒屋


カルデラ側も一回りして、サウナの自販機でもう一本ビールを買ってひと休み。サウナは夜8時まで開いているらしいけど、歩きだし暗くなる前に集落側に戻らないとな、と。

再びぽてぽて歩いて峠を超える。
集落側まで戻って、ちょうど日の沈む頃になったので、もう一度お店に寄ってビールを買って、夕陽が見えそうなところまで行ってみる。

海の方に道が伸び
牛がいて


日が沈む。

日が沈むだけでこんなにも、1日が終わった、っていう気分になるんだなあ。

宿は素泊まりにしたので、夕飯は青ヶ島に2軒あるという居酒屋に行ってみることに。

とりあえず片方に。
お店に入ると、先客は2人。島の人らしい。お店の人と大きな声の早口でよく喋っていて、沖縄のように島の言葉という感じではないんだけれど、あんまり聞き取れない。
それでもなんとなく聞いていると、このお店は移住してきた人がやっていて、同じくリゾートバイト的にやってきている女の子の店員がいるのが売りらしいことがわかってきた。おじさんたちは酒飲んでカラオケ歌って女の子に下ネタを言いに通っているみたいだ。スナック的な位置付けなのかな、なんか雰囲気がすごく昭和。
女の子だのみだからっていうことはないだろうけれど、居酒屋としてはまあいまいち。
ビールにはコバエがいくつも浮いていて、島の人たちは焼酎専門でビールなんてあんまり飲まないし掃除してないんだろうなあとか思ったり。
つまみは基本冷凍食品を揚げるかチンするか。仕入れが安定しないから冷凍に頼るしかないんだろうなあ。
で、まあ安くはない。輸送費輸送費。

そんなこんなだったので、まだお腹には余裕があったけれど、もう一軒の方の居酒屋にも行ってみることに。

そちらは先客なし。というか、お店は開いている気配はするものの、中には誰もいない。
奥の方からテレビの音がするので覗いてみると、60がらみのおじさんとおばさんが。夫婦かな、民宿やってる人たちかな、居酒屋はついでっぽいな。
おじさんが、なんだい、客かい、なんか食べるかい、とか言いながら店の方に出てきた。

なんかご飯ものが食べたいなあって言うと、
ご飯かー、焼きそばでも作るかー? 焼きそばつくれるよなー? と、奥に声をかける。
というわけで、焼きそば。
野菜あるじゃん。良いね。

魚とエビの天ぷらも冷凍じゃなかったし、いや具は冷凍だったかもしれないけれど、少なくとも衣は違った。
そういや今日は刺身もあるよーと出してくれるし。

民宿を兼ねてるからか、さっきのお店より美味しいものが出てきた。よかった。

島でつくっているという焼酎をいくつか飲んで、おじさんの息子が東京に行ったんだけど仕事見つかったのかなー戻ってくりゃいいのになーとかいう話を聞いてなんて答えて良いのかわかんなかったりしつつ、良い具合に満腹に。

外に出ると真っ暗。ときどき街灯。


ばいばい青ヶ島


泊まった民宿はシーズン終わりかけということもあってか、僕の他には1人泊まっている気配があったけれど、それだけ。静か。
朝も起きたら誰もおらず、適当に荷造りして部屋を整理して、精算は昨夜のうちに済ませていたので、勝手に出てくシステム。

ヘリポートの裏の林の中に神社があるらしいので、ヘリポートに荷物を置いてちょっと散歩。ここも屈まないと通れないほど周りの植物が育ってて、奥まで行くとさほど大きくはない建物があるだけ。
島はどこもだいたいこんな感じだったなあ。

そろそろ時間かなとヘリポートへ行くと、郵便局の車が来ていて、ヘリに積むんだろう郵便物を預けるところだった。おお、昨日ポストに入れた絵葉書もきっと、と思っていると郵便局の服を着た人に声をかけられて。
なんで名前知ってるんだろって思って見たら、宿の人だった。兼業? まあ宿も郵便配達もそんなに仕事量はないだろうしなあ。
そんなこんなで、不思議なチェックアウトの挨拶をして、出発。
ばいばい、青ヶ島

ヘリは来た時と同じく、まったく愛想なく乗客を運んでいく。島の周り一回りでもしてくれれば良いのにね。


八丈島一周


青ヶ島から八丈島へのヘリは1日1便、午前中に飛んでしまう。八丈島から羽田への飛行機は最終の17時過ぎのにしていたから、ちょっと時間がある。
バイクを借りて島を一周してみることにした。

風が気持ちよくて体感的には快適だったんだけれど、日差しは南の島の強さだったらしく、気づいたら腕が真っ赤。Tシャツ焼けくっきり。


島一周の締めくくりにと思って眺めの良い温泉に行ったら、熱いし海が近いからか塩っ気のあるお湯のようで、日焼けが痛くて腕を入れられなかった。最後にこんな罠が待ってるなんて。油断した。

バイクを返して、最後に空港の食堂でビールと島寿司。
青ヶ島には無事行ってこれたし、ひとまず満足。


ビール代になります。