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[学会誌]光沢硬質クロム-炭素めっきの基礎研究

こんばんは。
表面技術2022年7月号にクロム-炭素(Cr-C)めっきの論文が掲載されていたので、学びを書いておきたいと思います。

タイトルは『三価クロム/有機添加剤/濃厚伝導性塩水溶性浴からの冷間圧延鋼板上への光沢性硬質Cr-C電気めっき』で、神奈川大学とサン工業㈱の研究グループの論文です。

冷間圧延鋼板へのCr-Cめっきの基礎的な研究です。
硬質Cr-Cめっきは硬いのは良いんですが、電流効率が悪いことが欠点です。
そこで、この研究ではめっき浴の添加剤を変えたときの電流効率を評価することで、電流効率が高く、かつ光沢のあるCr-Cめっき技術について検討されています。

なぜ光沢?という点は明記されていませんが、外観的な問題かなと思います。なので、電流効率と外観の良いとこ取りをしたい、というのが目的な気がします。

添加剤の影響

添加座は、以下の6種類を使っています。

  • シュウ酸:$${H_2C_2O_4}$$

  • DL-リンゴ酸:$${C_4H_6O_5}$$

  • L(+)-酒石酸:$${C_4H_6O_6}$$

  • 尿素:$${CH_4N_2O}$$

  • グリシン:$${C_2H_5NO_2}$$

  • シュウ酸アンモニウム:$${C_2H_8N_2O_4}$$

この中で電流効率が最も高くなるのはシュウ酸を使った浴です。
何故そうなるかは読み取れません。

シュウ酸を使ったCr-Cめっきでも最大15.7%の電流効率とのことです。
私が良く使っているCuめっきはほぼ100%になることを考えると、Crめっきの電流効率の低さが分かります。

カーボンの含有率についても、シュウ酸を使った浴が一番良くて、最大80%になります。
また、他の添加剤に比べると、添加濃度に対する炭素含有量の変化が、最もリニアで、組成の制御のしやすさという点でも、この添加剤が合っていそうです。

ちなみに、光沢に関してもシュウ酸がもっとも良さそうな結果が示されています。

シュウ酸を使った過去の研究

シュウ酸の検討含め、Cr-Cめっきの研究は大阪産技研のグループががっつりした文章を公開していました。

表面技術2022年7月号の論文では読み取れませんでしたが、Cr-Cめっきをする目的はやはり硬さのようです。
炭化物は金属に比べてとても硬いので、金属表面に形成することで耐摩耗性をあげようというものです。

どちらの文献でも、ある量のC含有量でビッカース硬さが極大値を持つことが示されており、同様の現象が確認されていることが分かります。

感想

Cr-Cめっきについての文献は初めてだったのですが、Cr-Cめっきの必要性や添加剤の影響を知ることができたのは良かったと思います。

ただ、この論文(表面技術の方)、結構読みにくくて、指導教官はしっかり添削したのか?と思ってしまう文章でした。

私自身も文章では人のことは言えないので、反面教師にして精進していきたいと思いました。

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