【論文】マグネシウム合金をリン酸塩陽極酸化すると接着信頼性が向上する

こんにちは。
『表面技術』2022年12月号を読んでいるので、備忘録的に記録しておきたいと思います。
12月号の特集はカーボンニュートラルに貢献する表面技術です。

今回読んだ記事のタイトルは『恒温恒湿環境下でのAZ91Dマグネシウム合金の接着性に及ぼすリン酸塩陽極酸化処理の効果』で、著者は広島大学の橋本さんと他数名の方々です。

論文の主旨

マグネシウム合金へリン酸陽極酸化をすると接着剤との相性が良くなります。
更に、後処理として希硝酸処理をすることで、接着強度が上昇し、耐食性も良くなるという内容でした。

ポイント

  • リン酸陽極酸化後の希硝酸処理によって陽極酸化膜が除去される

  • マグネシウム合金と接着剤を接着した試験片で恒温恒湿試験を行い、引張試験を行うと、

    • 表面処理なし、リン酸陽極酸化処理ありの場合、界面破壊が起こる

    • リン酸陽極酸化処理+希硝酸処理の場合、凝集破壊となる

  • リン酸陽極酸化処理+希硝酸処理では、マグネシウム合金と接着剤が化学的な結合を作って、強固な接着に寄与していると推定

ポーラス構造と化学結合で強度アップ?

この論文によると、表面処理なしのマグネシウム合金を恒温恒湿試験にかけると表面が腐食するそうです。
対して、リン酸陽極酸化処理をすると表面腐食がかなり少なくなるため、耐食性を増す効果があるようです。おそらく陽極酸化膜の効果ですね。

リン酸陽極酸化後の希硝酸処理では、この陽極酸化膜を除去するようなのですが、掲載されているSEM像を見る限り、陽極酸化膜のポーラス構造は維持されるので、表面処理前の素地と同じ面が出ているわけではなさそうです。

希硝酸によって酸化膜の薄皮をはがすと、素地に近い材質のポーラス構造が出てくるのであれば、接着剤との化学的結合が強くなりそうですし、ポーラス構造による機械的な結合力も期待できますね。

この構造にすると耐食性も向上するということなので、マルチマテリアル化という点で、ベースの要素技術になる気がします。

今日は以上です。

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