見出し画像

あるSEGAっ子の『エラーゲームリセット』の雑感【こんなもんなのか、ヨコオタロウ】

「ゲーム会社『セガ』に支配された世界で、セガの名作ゲームを擬人化した少女『キャスト』たちを仲間にセガに立ち向かう」というパワーワードしかないあらすじと、『ニーアシリーズ』『ドラッグオンドラグーンシリーズ』などの作品で人気を集めるゲームクリエイター・ヨコオタロウ氏を制作陣に迎えたことで話題となったセガ発のスマートフォンゲーム『エラーゲームリセット(エラゲ)』の稼働から18日。
幼少期~少年期をメガドライブ・セガサターン・ドリームキャストと共に過ごし、ゲーセンではバーチャロイドを操って限定戦争を戦っていた筆者としては大注目のタイトルだったのだが、残念ながら、タイムラインでは好評の声よりも、冷笑家の冷ややかな視線や口さがない人々の嘲笑の声の方が目立つ、というのが現状だ。

残念ではあるが、そうした態度を取る人たちの気持ちはわかる。
なんせ最近のセガと言えば、あの誰もが知る名作『サクラ大戦』シリーズを14年越しに復活させたはいいもののロクな戦果を挙げられずに爆死させ(サクラ大戦名物のミュージカルとの2本柱の展開がCOVID-19で破綻したという不幸のせいでもあるが)、鳴り物入りで繰り出した『シン・クロニクル』も、ホロライブの力も借りて宣伝したにもかかわらず約14か月でサービス終了、アーケードでも『ソウルリバース』『クロノレガリア』の2作を立て続けに爆死させるなど、好調とは口が裂けても言えない状態にある。
加えて、同期のライバルは『原神』で絶好調のHoYoverseが繰り出す新作スマホゲーム『崩壊:スターレイル』。
こんな状況では、始まる前から敗戦ムードが漂うのも仕方がないとは思う。

「セガがまた爆死ゲーム作ってるwww」といった嘲笑の声や、前述した『崩壊:スターレイル』と比較しての「スターレイルの当て馬www」という評価は、いちプレイヤーとしては腹が立つ。
だが、逆に「では、エラゲは不当な扱いを受けている悲運の隠れた名作なのか?」と問われると、それはそれで疑問符がつく。
というわけで、このままエラゲが『スターレイル』の流行の裏で忘れ去られるのを防ぐ意味も込めて、このnoteでは自分なりの『エラゲ』評を述べていきたいと思う。
「結局エラゲとはどういうゲームなのか」と気になっている人や、これからプレイしようと考えているプレイヤーの参考になれば幸いだ。

あくまで「個人的」なのであんま鵜吞みにはしないでね。
内容の説明に際して、他のスマホゲームとの比較が多くなることに注意。

◆ストーリーが薄味

本作のストーリーを大雑把に説明すると、
「プレイヤーは謎の少女・リボン(スマホゲー特有のナビゲートキャラクター)と共に、ゲームを擬人化した少女『キャスト』を使って世界を支配するセガ、および並行世界からセガ世界を侵略してくる他社のキャストと戦う」
「ゲーム会社に洗脳され『カソード』状態となったキャストを撃破・浄化することで善の『アノード』状態に戻し、キャストによって歪められた世界を修正していく」

というもの。
(以降カソードを「C」、アノードを「A」と略記する)

本作のウリの一つであり、発売前からクローズアップされていたこのヨコオ氏の手掛けるストーリーなのだが、個人的な評価は低い。

面白い・つまらないを語る以前に、本作のストーリーは薄い。
現状メインクエストは5章まで実装されているのだが、各章のストーリーは非常に薄味、かつワンパターンで面白くない。
具体的には

プレイヤーの身に危険が降りかかる or 世界に異常が発生する

リボン「この問題はあのゲームのキャストの仕業に違いありません!倒して歴史を修正しましょう!」

キャストのもとに向かってバトル、倒してキャストを浄化

キャスト「おれはしょうきにもどった!セガを倒すために協力します!」

リボン「これで仲間が増えましたね!世界の異常も修正されました!」

という流れが、細部こそ違うがずっと繰り返される。
まるで黎明期のソシャゲの「ゲームの添え物」レベルのストーリーを見ているようで、面白いも何もない。

ストーリーが薄味なせいで、「ゲーム会社が世界を支配している」「各社のゲームから生まれた美少女『キャスト』が、世界のルールを歪めている」というトンチキ極まりない設定も生きていない。
文章の上では、
「『アウトラン』(セガのドライブゲーム)の力で道交法が形骸化しており、車が歩行者ガン無視で道路を占拠している」
「『アフターバーナー』(セガのシューティングゲーム)の力でセガは戦闘機を開発し、空軍を持っている」
「『ゼビウス』(ナムコのシューティングゲーム)の影響で、バンダイナムコに支配された世界では『ゼビ語』(ゼビウス世界の架空言語)が公用語になっている」
という愉快な設定が語られるのだが、これらトンチキ設定の殆どはリボンによってサラッと触れられるだけで掘り下げられないので、一発ネタの域を出ない。

各キャストに関しては、「A版は守銭奴、C版は浪費家の『ファンタジーゾーン』」「原作がソロプレイ専用なのでコミュ障な『Aハングオン』」「海の生き物至上主義な『Cダライアス』」など、原作の設定・ゲームシステムを拾い上げてキャラクターに昇華しているものもあり、各キャラ固有のシナリオや『ヘブンバーンズレッド』のゆーげん氏の美麗なキャラデザインもあって惹かれるキャストも何名かいるのだが、主軸となるメインクエストで相対するキャストの殆どはゲーム会社に洗脳されているせいで前述したトンチキ思想を広めたいだけの浅いキャラになってしまっており、それ以上のキャラ性に触れられることが殆どないので「キャラクターの魅力」に通じる導線が弱い、という難点がある。

総じてシナリオ面は、『ヘブバン』や『ブルーアーカイブ』、『ウマ娘プリティーダービー』といった昨今高い評価を得ているシナリオ重視のゲームとは真逆のパッとしない出来で、評価面でのガンとなっている。
正直に言えば「ヨコオ氏はそこら辺のライターに名義を貸しているだけなのではないか?」と疑ってしまう。
無論、「5章まではほんのジャブで、これから『ヨコオ節』を炸裂させますよ!」というストーリー展開が待っている可能性はあるだろうが、
それにしてもあまりにも5章までに、プレイヤーを引き付ける「フック」になるものがなさすぎるのは問題だろう。

◆ゲーム部分は面白い

シューティング部分は、素直に「面白い」と言える出来。
初期こそ敵は弱く、数も少なく、自動編成でオートバトルに任せても勝てる程度の難易度だが、4章を境に敵の編成は練られたものになっていき、
プレイヤーには「どの敵から倒すか?」「どのタイミングでバーストスキル(キャストごとの必殺技)を切るか?」という戦略が求められる。
先頭にタンクを置いてダメージを吸わせることを覚えた頃に、ボスが「攻撃力の高いキャスト狙いのバーストスキル」を撃ってきて、そこでヒーラーの重要性に気付かせてくれるなど、程よい嫌らしさで編成の重要性を教えてくれるのもグッド。

また、一部キャストの通常ショットやバーストスキルには「ヒットすると炸裂して広範囲を攻撃する」「敵を貫通する」などの特性を持つものもあり、
これらのスキルで敵を一掃したり、ボスの部位をまとめて攻撃し大ダメージを与えるのは楽しい。
(たまに見かける「戦闘がオートで処理できる、つまらない」という感想は、おそらく4章以前で詰まってしまった人のものだと推察される)

一方で難易度曲線は若干意地悪で、後述の育成関連の問題とも関わってくるのだが、ゲームの面白さがわかってくる4章で難易度がぐんと上がり、適当な育成では推奨戦闘力に追いつかなくなってくる。
実際「4章で詰まって止めた」というプレイヤーの声もTLでは聞かれた。

そしてそれを乗り越えた5章にも問題がある。
このゲームにもいわゆる「属性相性」があり、
RED→GREEN→BLUE→RED...の3属性の3すくみと、MAGENTA→YELLOW→MAGENTA...の対立する2属性が存在する。

5章ではMAGENTA属性の敵が出てくるので、YELLOW属性のキャストを編成したいのだが、現状YELLOW属性のキャストは3人しかおらず、しかもアタッカーの『Aゴールデンアックス』は☆3、つまりSSR相当のレア度で入手しにくい…という、意地悪な難易度設定になってしまっている。
一応、RED・GREEN・BLUE属性はMAGENTA・YELLOW属性に等倍のダメージを与えられるので、RED・GREEN・BLUE属性のキャストを鍛えれば突破できるのが救いか。

ゲーム部分は面白いだけに、難易度設定の意地悪さは悔やまれる。

◆育成面のだるさ

キャストの育成システムは、流行しているスマホゲームのチャンポンと言ってもいい。

キャストごとに異なるアイテムを集めてキャストの戦闘力を上げる「グレードアップ」は、『FGO』の「霊基再臨」っぽいし、
キャストに能力を付加する装備品「フィギュア」は『FGO』の「魔術礼装」や『レヴュースタァライト Re LIVE(スタリラ)』の「メモワール」そのもの。
キャストのパラメータを向上させる装備品「アクセサリ」は『原神』の「聖遺物」だし、
ピースを集めるとキャラを限界突破 or 入手できるシステムは『ブルアカ』の「神名文字」システムまんまだ。

問題は育成システムが分散しているため、「何をすればキャストが強くなるのか直感的にわからない」という点だ。
序盤はレベル上げと、最も手軽な育成手段である「グレードアップ」を重ねることで推奨戦闘力に余裕で追いつけるが、前述した4章に差し掛かると、レベル上げとグレードアップでは追いつけないような推奨戦闘力を提示され、多くのプレイヤーはまずここで詰まる。
ここで重要になってくるのが「フィギュア」で、フィギュアはキャストの戦闘力を大きく引き上げてくれる。
じゃあフィギュアを鍛えればいいのか…と思うかもしれないが、ここがエラゲの意地悪さで、フィギュアのレベルキャップを緩和するアイテムは、現状確定入手する手段がなく、フィギュアによる戦闘力強化はすぐに頭打ちになる。
なので正解は
「フィギュアを最低レベルキャップまで育成して4章を突破したら、もう一度レベル上げとグレードアップに戻って地道に戦闘力を上げていく」
となる。不親切!

◆苦行のアクセサリ関連

「フィギュアとグレードアップで推奨戦闘力に追いつけないなら、アクセサリを装備すればいいんじゃないか?」と思う人もいるかもしれない。
だがアクセサリ関連にも問題が山積しており、そう簡単にはいかない。

まず、アクセサリは「開発部ダンジョン」と呼ばれる専用のクエストで収集する必要があるのだが、この開発部ダンジョンはアクセサリ、アクセサリ強化アイテムを含む雑多なアイテムがまとめてドロップする仕様になっており、「アクセサリ(アクセサリ強化アイテム)が欲しかったのにそれ以外のアイテムにドロップ枠を取られてアクセサリ集めがはかどらない」
という事態が頻発する。
加えて開発部ダンジョンはやけに要求スタミナが多く、第3段階の「HARD」の時点で1周150スタミナ(プレイヤーレベル50時の最大スタミナは107)を要求される。
このため、各キャラごとのアクセサリを用意・レベリングするだけでもかなりの時間・APを取られる。

また、スマホゲームにおけるこの手の装備システムの元祖である『原神』よりは簡略化されているものの、アクセサリには原神同様の「レベルを上げると解禁されるランダムなサブ効果」があり、
キャストを最強にするには原神と同じく、確率と戦ってサブ効果を「厳選」する必要がある。

同じ『原神』フォロワーの中国スマホゲー『アーテリーギア』が装備品関連のシステムをかなりユーザーフレンドリーに調整してきたのに対し、
エラゲは『アテギア』より後発のくせに、原神の不便さも含めて脳死でクローニングしてしまっている。

ただし、アクセサリの必要経験値が少なく『原神』『アテギア』と比較して入手してすぐ実戦投入できるという一点だけは良い調整だと思う。

◆総評

「ゲーム部分は面白い。だが、その面白さをあまりにも薄味なストーリーと不便な育成面が台無しにしている」
今のエラゲを一文でまとめるとするならばこうだ。

いろいろ欠点を上げてきたが、エラゲは決して「クソゲー」と言えるほど終わってはいない。
だが、このままでは『FGO』『ウマ娘』『ブルアカ』『ラストオリジン』『原神』『アークナイツ』などの、令和のスマホゲーム界のトップランナー達には言わずもがな、同期の『崩壊:スターレイル』にも勝てないと断言できる。

個人的に思う最も大きな問題は、サービス開始前にこのゲームの売りとして大きく宣伝してきた、ヨコオタロウ氏手掛けるシナリオがペラッペラなことだ。
上記した令和スマホゲーム界の覇者たちは「良好・爽快なゲームシステム」「読者を引き込むストーリー」を両立させているからこそ覇者として君臨しているのであり、いくらゲーム面が面白くてもシナリオという武器を持っていないエラゲは、今のままでは彼らに勝てないだろう。
何らかのテコ入れが入らなければ、『サクラ革命』『シンクロ』と同じ道をたどってしまうことは想像に難くない。

だが、noteのタイトルの通りSEGAっ子である自分としてはエラゲには何とか生き残ってほしいと思っている。
我々の愛したSEGAゲーが本作を通して再注目されるチャンスでもあるし、なんだかんだでエラゲの世界観には惹かれるものがあるからだ。
少なくとも、我が青春のゲームである『電脳戦機バーチャロンシリーズ』『Rez』『パンツァードラグーンシリーズ』がキャスト化するまではサービス終了してほしくないし、『サクラ大戦シリーズ』『龍が如くシリーズ』『ナイツ』など、キャスト化した姿が見てみたいセガゲーはまだまだある。

というわけで、これを読んでいる読者の皆さんには決してオススメできないが、自分は『エラゲ』と付き合っていこうと思っている。

開発の皆さん、まずは開発部ダンジョンの仕様からなんとかしませんか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?