見出し画像

ハラスメントリスクの根本原因と対応

ここ最近、本業が期末で忙しかったため、更新が遅くなってしまいました。毎年同じようなサイクルですが、うまくマネジメントしようとしても、外部環境が急変して、そうはいかなくなることの方が多くなっています。リスクマコンサルタントとして、まだまだ修行が必要です。

ハラスメントの原因

さて、リスクマネジメントの一つの分野として、人事リスクがあります。中でも企業にとって悩みの種となっているのが、ハラスメント対策でしょう。以前所属していた自衛隊でも、最近になって多くのハラスメント事例が報道されています。中には部下が上司にハラスメント行為を行なった例もあるようで、事態は深刻です。

若干話がそれますが、ハラスメントの形を変えたのが、いわゆる「いじめ」です。いじめは人間の歴史を通じて常に存在しています。しかも場所を選びません。
国や社会はいじめを含めたハラスメントの防止や仕組みづくりを進めていますが、仕組みづくりだけで防止することが難しい理由は、ハラスメントやいじめが、人の本性である「所有欲」に根付いた行為であることを踏まえたものでないことが多いからです。

所有欲の罠

所有欲は、その名のとおり「何か自分以外の存在を自分の持ち物としたいと思う欲望」です。これは単に、自分以外の存在の所有権を手に入れたいという欲望のことだけでなく、所有物を自由に処分する権利を手に入れたいという欲望も含まれます。そのような欲望には、時に大きな罠が仕掛けられています。

部下は上司の所有物ではありません。雇用契約に基づき、企業活動において、合理的な業務上の目的のために指揮を受けさせる対象が部下です。その証拠に、部下が業務上の事故で不利益を被った場合、一般的に上司は部下の管理責任が問われます。部下が上司の所有物であるとすれば、部下が不利益を被ったことにより(例えば事故で働けなくなるなど)会社に損害を与えた責任が問われることはあっても、所有物である部下に対する責任は問われないはずです。しかし、実際は部下に対する上司の管理責任が認められる例が多く存在します。

いじめやハラスメントも同根

いじめやハラスメントがなぜ問題になるのかも、同じ理由です。いじめがなぜ悪いのかという議論で、いじめられる側にも原因があるというものがあります。そのような主張をする人もいると理解するものの(決して認めるわけではありません)、それを理由にいじめられる側に対し、侮辱や暴力をしていいわけではありません。

ハラスメントも同じロジックになります。パワハラで、権限を振りかざして部下に義務ではないことをさせようとする根本には、上司が部下を「自由に処分できる存在」である所有物だという考えがあるからだと思われます。できていないのであれば、できていない事実を指摘し、なぜそれが組織の目的達成上の問題であるのかを説明し、その上で本人に改善を図らせるのが、本来あるべき対応でしょう。

一方で、「そんな理想論じゃ組織は回らない」という意見があることも事実であり、私も部下を持つ管理者の頃はよく悩みました。最大の問題は、客観的な評価に基づいて組織や社会がその個人を処遇するルールや仕組み作りが、日本ではまだ不十分なところです。それゆえ、周囲の評価がそのまま個人の評価につながり、その結果「こいつには何をしてもいい」という雰囲気が作られていくことに、いじめやハラスメント問題の根本があると考えています。

防止の大前提

いじめやハラスメント防止策がうまくいかないといわれることがある最大の理由が、その原則をメンバーに伝えきれていないまま、仕組みづくりだけ進めるからです。そして、メンバーにその原則を理解させることは、決して簡単なことではありません。特に歴史が長く、文化や物の考え方が固定的な組織ほど、この壁にぶつかる確率が高くなります(私も自衛隊時代、何度も部下から批判を受けたことがあります)。

そのためには、「人が人の所有物ではない」という原則を、管理者自身が理解した上で、どのような条件で個人の権利を制限でき、そのことを本人にどう理解させるか、原則に反した個人をどのように客観的かつ公正に処遇(処分)するのかのルールを定め、実行する必要があります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?