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ヘッドライトはハイウェイ

案の定、今日は楽しさよりも眠たさと茫漠とした嫌気だけが増していくばかりで、思いきって終電前に会社を出てみる。とりあえず寝てから考えような、と思う。かえりみち、明日バーっと出来るように、色々整理して、復習して、前向きなかたちを持って望まないと。電車で帰るのは先週ぶりで、駅までなんか遠かった。

頭が回ってないときに書くことばは、ささくれだった角材みたいで、建物はところどころに作りの荒さが悪目立ちする。どんな人だって、ごまかされちゃくれないし、わたしだって、ごまかしの中で何かをやるなんて、はしたないと思ってる。
それでも、どれだけ瑣末な角材しか使えなくたって、言葉を書き続けるのはいいことみたい。本当に少しずつだけれど、ことばが思ったように立ち並ぶ瞬間の力の入れ具合を、わかるそのきっかけを掴み始めている、そんな気持ちになれることが時たまある。まるでカルロス・クライバーの指揮棒が音楽を操るときみたいに、魔法使いになって、言葉のさざめきに風を通す感覚。いつか忙しない日々の先で、そんな手触りで、大きな大きな物語の、深淵と上澄みを包み込みたい。

「ひとつの明かりが消えて ヘッドライトはハイウェイ いつかは遠くなる 早いスピードで」

ラッキーオールドサン、ことばが歌になって哀愁を帯びて、やらなくちゃいけないことがふとどこか他人事のようになる。遠のく日々の話とゆるむ身体中の緊張。ここじゃないどこかをおもう時間すらないのに、わたしはなにも変わってないと、ふと思う帰りみち。

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