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映画『犯罪都市 THE ROUNDUP』 ポップな刑事ものと、エグいバイオレンスの見事な両立

 デカい拳が犯罪者の顔にめり込む度に、ガッツポーズしたくなる痛快娯楽作品。映画『犯罪都市 THE ROUNDUP』感想です。

 韓国・衿川署の強力班に、ベトナムへ海外逃亡した後に現地で自首してきた犯罪者の引き渡しが命じられる。ベトナムへ向かうのは、毎回暴力にものを言わせる問題刑事のマ・ソクト(マ・ドンソク)と、部下に振り回されるチョン・イルマン班長(チェ・グイファ)のコンビ。バカンスの延長気分で向かう2人だったが、引き渡しの犯人が自首してきた理由が、別の凶悪犯から逃れるためだと知る。その犯罪者はカン・ヘサン(ソン・ソック)という男で、ベトナムに来た裕福な韓国人を狙って強盗や誘拐、最終的には残忍な殺害をする犯罪を繰り返していた。ベトナム警察が静止するのも聞かず、ソクト刑事はカン・ヘサンの足取りを追うが、カンの暴走は予想外の方向へと向かっていく…という物語。

 2017年公開の映画『犯罪都市』のシリーズ2作目として製作された作品で、主演は当然前作から引き続き、我らがマブリーこと、マ・ドンソクが務めております。監督は前作のカン・ユンソンから、助監督を務めていたイ・サンヨンにバトンタッチしています。
 
 前作の後、『悪人伝』やハリウッドデビューとなった『エターナルズ』など、ますます活躍を広げたマ・ドンソクですが、本作でのソクト刑事の役どころが最もパブリック・イメージとなっているものだと思います。剛腕から繰り出される荒々しい暴力を持ちつつ、親しみやすく正義感も持ち合わせている「気は優しくて力持ち」キャラですね。
 
 物語自体はごくスタンダードな刑事ものですよね。上司を振り回す組織内の異端児だけど、現場で力を発揮する刑事というのは、日本でもよくある警察ものの構図です。
 いわゆるベタな刑事ものを新鮮に魅せていたのが、ソクト刑事が相対する凶悪犯だったんですけど、ポップな刑事物語にしては、かなり暴力がエゲツないものになっているんですよね。韓国ノワールスリラーのバイオレンス描写を、そのまま犯行描写にしている感じです。その凶悪犯たちを、ストレートにソクト刑事がブチのめすのが、最高の魅力となっています。
 
 今作の敵役となるカン・ヘサンという犯人も、凶悪さでは相当なもので、ベタな刑事アクションの空気が、一気に残酷バイオレンスの作品へと変貌させる力を持つキャラクターとなっています。ソクト刑事が最強なのが前提としてあるので、悪役が大したことないと、全くの予定調和の物語となってしまうのですが、カン・ヘサンの凶悪さ、狡猾さが予定調和と感じさせない物語にしてくれています。他の仲間が犠牲になるのではとハラハラしてしまいました。
 
 ごくごくシンプルな脚本ですが、誘拐犯と警察の駆け引き、カーチェイスなどのベタな展開としてのレベルは高いものだと思います。特に誘拐された社長妻の毅然とした態度による駆け引きは、見応えありましたね。ただのマ・ドンソクのワンマン・ムービーになっていない魅力があります。
 
 マ・ドンソクばかりが注目を集めがちですが、意外と脇役もしっかりとキャラ立ちしているんですよね。韓国映画の役者さんは、どこか日本の役者さんとも似ている人が出てくるので、そこを探すのも好きなんですよね。
 カン・ヘサン役のソン・ソックさんはTEAM NACSの音尾琢真さんによく似た風貌ですね。白石和彌監督作品に出てきそうなチンピラルックスですが、その他の作品の画像を見ると、ビックリするほどの好青年なんですよね。ここまで雰囲気を変えられるのは驚きでした。
 前作から引き続き登場となる、チャン・イス役のパク・ジファンさんは、もう顔もキャラクターもリアクションまで、お笑いコンビ・ダイアンの津田さんを参考にした演技としか思えませんでした。今作ではかなり重要な役割を果たしてくれますが、日本リメイクがあれば、この役は津田さんで即決ですね。
 
 このシリーズは、3作目、4作目まで既に決まっているそうですね。ジャッキー・チェンの『ポリス・ストーリー』のような位置にあるシリーズになっていきそうです。
 今作は前作からの踏襲という形ですが、次回作以降は変化球的な脚本を期待したいですね。ただ、ベタでどこまで飽きずに出来るかを観てみたい気もします。女性の凶悪犯にソクト刑事が暴力を振るえるかとか、いかにもなパターンもので、どれだけ面白くするかに挑戦するのも有りかもしれませんね。


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