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おとしぶみ

「7時に お願い」と書かれた紙を拾った。
友人は落とし文ではないかという。目的の人物の手に届くよう、わざと落としておく趣向らしい。
私が拾ったのはアパートへ通じる道だったが、これでは10室ある中のどの住人宛てのものかはわからない。ただ、特徴的な黄色い紙だ。見る人が見れば気づくものかもしれない。
しかし、どうしてそんなまどろっこしいことを。と思うが、それが奥ゆかしいところで、偶然拾った文だからこそ芽生える気持ちもある、ということなのだろう。

ここには場所の指示がない。きっと目的の人物に届いたなら、わかるに違いない。
拾った場所から当たりをつけて待ってみる。アパートから駅に行くまでの間にある神社だが、ここくらいしか思い当たらない。
定刻より少し前、女性が現れた。如何にも人待ち顔だが、文を受け取っていない相手は来ない。

ところが男は現れた。
女性は何かを渡すと足早に去っていく。
男は手元をじっと見ていたが急に走り出した。
男は女性の肩に手を。そして・・・めでたしめでたし。

だが、これがこの落とし文の本当の結末かどうかはわからない。それが落とし文の奥ゆかしいところ。

*フォロワーのミモザさんのお誘いもあり、それに甘えて書いてみました。
この「落とし文」という言葉、何かそそられませんか?
ミモザさん、ありがとうございます。


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