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比叡山 (アルバムの中の風景)

登山。とは言っても、街歩きのリュックひとつで行ける山だ。
しかし、ここには足がかりとなるような横木ひとつない。
雨ならば確実に滑る地肌が露わな獣道をただひたすら上へと進む。
迫る木立が日の光を遮り、湿気た夕暮れのようだ。

千日回峰で阿闍梨はこの道を駆け上がり、駆け降りると聞く。

「ああ、なんて山だ」と思ったころに、木立の切れ目が現れる。
閉塞された場所からの開放感と相まって、その景はもはやこの世のものではない。
やがて獣道は天空へと至る。

*延暦寺の至難の行として千日回峰行がある。文字通り千日間、比叡山中を巡る行である。それを成し遂げた僧を阿闍梨という。

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