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【詩】透明の丘

こんにちは、深見です。
少し寒さがやわらいできて、ひと息つく思いです。


透明の丘

潮のにおいがしたんなら
そのまま舟を待っていなさい
遠く遠くあの透明の丘の向こうへ
おまえを連れて行ってくれるだろう

鉱夫のつるはしは黒く北風のように岩肌を打ち
埋もれた星々を掘り返している
おまえは鉱夫を蔑んだ目で見るだろう
鉱夫はおまえを見もしないだろう

アンドロメダ銀河が渦巻いている
たぶんこの岩の向こうに
渦を巻いて光を散らして
その一部分が岩肌に出て
金剛石や黄玉や柘榴石の顔をして
こちらがわにわずかの価値をもたらす

そのまま舟を待っていなさい
岩肌を掘る鉱夫を眺めながら
間延びした秒針の音のような
つるはしの声を聞きながら

潮のにおいがどこから漂うのかも知らないで
そのまま舟を待っていなさい
透明の丘がどこにあるのかも知らないで
そのまま舟を待っていなさい


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