フォローしませんか?
シェア
薄暗い土間に入っていくと、上がり框のところに決まってじいちゃんは座っていた。入り口と…
朝七時。尚文は自分の居室を出て、母屋の分棟と本棟をつなぐ内廊下をのそのそと歩く。洗面所…
事が起こったのは、その年の夏だった。 毎日午前十一時きっかりに届く郵便を受け取った時…
その日の夕食を運んでいったとき、祖父はもう平常心を取り戻していた。昼間に見せた姿をとん…
尚文は、祖父のシベリア時代の話を熱心に聞いた。聞くうちに、祖父の過去にこびりついている…
おいちゃん、と涼太に呼ばれる。 ぺたっと貼りつくような甘い幼児の声で呼ばれるとき、尚…
九月に入ったある日の午後、予期せぬ来客があった。 尚文は部屋に篭り、相変わらずインターネットでシベリア抑留者たちの情報を集めたりブログの更新をしたりしていたが、玄関の引き戸が開いて「ごめんください」という声がし、次いで居間から時絵が出ていって応対している声に、ふと集中力をそらされた。 と、いうのも、玄関で時絵にものを言っている声が、聞き覚えのあるものだったからだった。どうも俺が知っている人らしいな、と、知り合いの顔を記憶に巡らしていると、 「尚文くん」 母屋と離れを繋
朝食を終え、台所に食器を下げてから、三ツ谷と連れ立って表に出た。やはりタクシーで送り出…
――それから一週間ほど経った朝、尚文は隣の家を訪れた。弔問を兼ねて、独りぼっちになって…
その四畳半のせんべい布団の上で、尚文は磨利を抱いた。これまでの人生のなかで、これほど奇…
磨利の家をあとにした尚文は、沈鬱な気持ちで浜に面した県道を歩いた。 あの悪魔の住む家…
――よく晴れた午後、黒々とした掘っ立て小屋のような家で、涼太はじいちゃんと一緒にいた。…