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土壌医検定2級の合格体験記(2024年3月)〜初受験〜

双子のノソノソ(妹、東大卒)です。
先日、土壌医検定2級を初めて受験し、合格しました🌸

周りに受験する人がいなかったため、「結局、過去問だけやればいいの?」「2級を受けるけど、3級のテキストも買ったほうがいいの?」といったかゆいところに手が届く合格体験記をネットで探していました。
が、私が受験勉強中は見つけられませんでした…。だから私が書こうと思います。

「土壌医検定2級に受かるには」という専門的なお話になることをお許しください。

*土壌医検定とは?*
土づくりの専門家を育成するために作られた、「土作り」「作物生産」の知識を測る検定です。日本土壌協会が主催する、いわゆる民間の資格です。
最も難しい1級から、2級、3級があります。
1級は5年以上の農業経験や指導経験が求められますので、そのような経験がない私のような人が受けられる最も難しい級が2級ということになります。

2級の「土づくりマスター」のレベルは「土づくりに関しやや高度な知識・技術を有するとともに、土壌診断の処方箋を作成できるレベル」にあたります。
詳細は協会HPをご覧ください。
https://www.doiken.or.jp/about.html


①土壌医2級の難易度は?

(4日しか勉強していない不真面目な)私の感覚では「難しい」です。
今年の合格率は、26.6%でした。
例年は30%くらいですので、今年は難しかったと言えます。

この数字、気象予報士の4%に比べるとはるかに高く感じますが、関係者しか受けないようなこんな狭い分野の、4択の問題でこれです…。

2級は「受験生をしっかり落としにいく試験」と思った方が良いです(笑)
3級は受けたことがないのですが、問題を見る限り2級はケタ違いに難しいです。関係する仕事に就いているとかでなければ、対策しないと2級合格は難しいのではないでしょうか。

例えば、こんなかんじの知識を問う問題が出ます(原文をアレンジしています)。
問題は全部で60問出て、40問以上正解で合格です。

トマトについて述べた次の文章から正しいものを選べ。
①塩類濃度障害に対する耐性が低く、ECは3mS/cmで収量が最も高い
②第3花房開花期以降の土壌の無機態窒素含量は10mg/100gを下回らないようにする
③第2花房開花期までは節水する
④尻腐れ果は特にカリウムの過剰によってカルシウムの吸収阻害が起こることで多発する

正解は②です。
①はECが2mS/cm、③は第3花房、④はカリウムではなくアンモニア態窒素のため誤りです。
……トマト農家は正解できるのでしょうか??
こんな細かいこと聞くんだ!という重箱の隅をつつくような問題(個人の感想です)が、野菜だけでなく、稲など穀物、花、果樹で出ます。4択とはいえ、感覚で解けなさそうなことは分かるかと思います。

私は東大の農学部を卒業し、大学院まで行っていますが、受験勉強しなければ太刀打ちできなかったです。
平日は新聞記者として働いていることもあり、全然勉強時間が取れませんでした。ためになる勉強であることは間違いないので、本当はもっと時間が取れたら良かったのですが…。
時間があるのであればじっくり取り組むことをおすすめします。

②私の試験勉強

・購入した教材

最新の2級テキストと、過去問題集です。
協会の公式サイトで買いました。

テキストは、過去に知り合いに譲ってもらったお下がりがありましたが、肥料法の改正が最近あったりして、誤字修正含めアップデートされています。できれば最新のものを買うことをおすすめします。
過去問題集は、2018~2020年度の試験問題が載っている最新のものを買いました。

・疑問に答えます

「2級を受けるけど、3級のテキストも買ったほうがいいの?」
→個人的には買わなくて良いと思います。
実は3級のテキストも買ったのですが、一度も開きませんでした…。
ざっと見た限り、2級のテキストが3級の内容をカバーしています。
時間に余裕があれば追加で買って勉強しても良いと思います。

「結局、過去問だけやればいいの?」
→過去問だけやり込んでも合格点に達しません。
もうちょっと具体的に言うと、私の受けた2024年の試験で計算してみたところ、過去問だけでは合格となる正解数にぎりぎり届きません。
「過去に出した問題はそのまま出さないぞ」という協会の強い意志を感じます(笑)
(その結果、先ほど言ったように重箱の隅をつつくような問題が出ている気がします…)
といっても私は2018~2020年度の過去問しか手に入れていないため、もっと前の過去問を解いていたらどうだったのかは分かりません。

では過去問をやる必要がないかというと、やった方が良いです。
問題の傾向や基礎知識が身につくからです。章ごとの出題割合が書いてあるのも良かったです。

試験の内容自体は、テキストに書いてあることしか出ません。
要するにテキストを覚えれば合格します…が、密度が、とにかく濃い。テキストの分厚さと情報量の多さに困惑しました。
それでいて一字一句すべてが出題範囲のため、覚えるのがしんどいです。
そこで私は、まずは過去問を解き、周辺知識をテキストで確認する勉強スタイルを取りました。

・勉強時間

1日4時間として、4日で計16時間くらいでしょうか。
大学で農学を学んだというバックグラウンドありです。仕事は土壌医とはあまり関わりがない職種です。
他の方の合格体験記を調べたところ、目安で100時間を挙げる方が多かったです。

・その他の便利なサイト

私は過去問とテキストだけで勉強しましたが、こんなのもあります。
・協会の受験対策研修会
https://open.spotify.com/show/5LXU2NmTHPi0HowG330dI3
・1級の土壌医の方のラジオ
https://www.doiken.or.jp/training.html
・地域土壌医の会が主催してくれている勉強会(リンクは3級の)
https://首都圏土壌医.jp/

③試験当日!

私が受験した東京会場は、東京農業大学世田谷キャンパスでした。
案内には経堂駅から歩いて15分とありますが、私の足ではもっとかかった気がします。
入口から会場までの距離も考え、時間に余裕を持って行くことをおすすめします。

試験時間は、とにかく余裕がないです。
60分で60問、長い文章の4択を解かなければなりません。分からない問題は飛ばしてあとで考えるのが吉です。

④受かって良かったこと

・受かって終わりではない

2級に受かったとはいえ、自分は「土づくりマスター」と呼ぶにはほど遠いです…。
幸い、資格名を名乗るには継続的に研修会に参加する必要があります。これからも勉強する機会があるのはありがたいです。
また、地域土壌医の会という、地域ごとの土壌医コミュニティもあります。地元の会に入って研鑽を積もうと思います。

・名刺に書ける=就活にも役立つ

土壌医2級は、「受けた人ならそのすごさが分かる」資格だと思います。
私は早速、新調した名刺に書きました。
私は社会人ですが、就活にも役立つようです。土壌医の試験補助を出している会社もあるくらいなので、農業系の会社には3級でもアピール材料になると思います。

⑤こんな問題が解きたい

ここからは、土壌医のコンセプトが素晴らしいだけに、「こういう試験だったらもっと良かったのになあ」という一受験生としてのうわ言です。

まず、2級は基本を理解していればちゃんと受かるくらいの難易度にしてほしいなと思いました(1級はともかく)。
現状、合格率が毎年3割になるよう調整するために、これまで出したことのない問題を出そうとしているのではないでしょうか。
今のままだと、今後どんどん奇をてらったような問題が出ることになります。
そのような出題は、2級の本来の目的である、「土づくりに関しやや高度な知識・技術を有するとともに、土壌診断の処方箋を作成できる」を達成することができるのでしょうか。

現場で役に立つ専門家を育成するには、特に後半の「土壌診断の処方箋を作成できる」というのが大事だと思います。キクとかカボチャとかイチゴとか、品目ごとの細かいあれこれを聞くより、品目共通の「土づくり」にフォーカスした設問をもっと出してほしいです。
基本的な問題を出して合格率が上がるとしたら、それは素晴らしいことだと思います。

例えば、私が2級の問題を出すなら、実際の処方箋を読み解かせ、農家への適切な助言を選ぶ問題や、計算問題(肥料成分を基準値にするにはどの肥料をどれくらい施用する必要があるかなど)を出します。

まだ始まって10数年の新しい試験です。
土壌医の裾野をもっと広げていきたいです。


かなり専門的な内容になってしまいましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
有益な情報を発信していきますので、今後とも双子をよろしくお願いいたします🐼
(この記事は執筆ノソノソ、校正トコトコでお送りしました)


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