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大学院の話(スイス・ルツェルン音楽大学)

忘れないうちに、大学院時代の生活について書き留めておこうと思う。

ルツェルン音楽大学の大学院に入ったのは、パンデミック真っ最中の2020年秋のことだ。
入試はオンラインで行われた。
それについてはまた今度詳しく書くとして、今回はスイスの音大に興味がある人に向けての大学紹介を書くことにしよう。

私が入学した2020年に、ルツェルン音大はそれまで市内に点在していたいくつかのキャンパスをすべて統合し、Kriensという、ルツェルンの中心地から少し離れた場所に居を移した。

それまでクラシック専攻とジャズ専攻の学生の接点はほぼ無かったようだが、キャンパス統合によってすべての学生がここに通うようになった。単一的社会から少し離れ、いろいろな人と関われるようになったのは良いことである。

この、無機質なコンクリートむきだしの豆腐建築のキャンパスは、以前の、市内に点在していたキャンパスを知っている者には不評であった。曰く、「冷たい」だの「面白くない」だの「美しくない」だの、さまざまなネガティブコメントを耳にした。
しかし私にとってはこの建物こそが母校であり、悲喜こもごもの3年間を過ごした、非常に愛着のある建物となった。

館内には用途に応じたホールが3つあり、毎日のようにイベントが行われている。
クラシックなホールのほか、ジャズ専攻の学生がよく使う、小さなステージとうす暗い照明のオシャレなクラブホール、そしてオーケストラの合わせやオペラの大規模な舞台セッティングができるような、ステージの段がないフラットなホールがある。
私がいちばんお世話になったのがクラシックなホールだが、音響や照明を舞台袖のスイッチひとつで簡単に変えられて、非常に便利だった。
ただホール全体の雰囲気は配色のせいでドンヨリと暗く、舞台の上から客席を見ると、灰色の背もたれがまるで墓石のように並んでいる、なんとも無機質な空間だった。なんでこんな色にした?

墓場のようなホール


次に、学生にとって大事な練習室の環境だが、これは結構良かった。
まず、練習室備え付けのピアノはすべて問題なく良い状態であった。というのも、大学は転居の際に古いピアノを処分し、ものすごい数のピアノを新しく購入したからだ。良いタイミングで入学したなと思った。

練習室の数も、かなり充足している印象。予約していなくても、ちょっと発声をするのに部屋を探すと、ほとんどの場合見つけることができる。
ただ、チェンバロやオルガンなど特定の楽器や機材が備え付けてある部屋の予約は争奪戦になる。

裏庭に面した食堂は、お昼の時間のみならず、ちょっとしたミーティングや勉強、または放課後友人と駄弁るのに最適の空間である。
誰とも約束はしていないが、誰か喋れる人いないかな〜という時などにフラッと立ち寄ると、必ずと言っていいほど誰かいてハプニング的に一緒に時間を過ごせる、楽しい場所だ。

3階のラウンジには居心地の良いソファとコーヒーマシンがあり、なんといっても眺望の良い一面ガラスの窓があり、ここも空き時間を過ごすのに最高の場所だ。私はここでよく本を読んだりして過ごした。


中央にはRigiという山が見える


図書館は様々な用途で使用される。
私は、授業で使われる課題図書などをチェックしたり、書類や楽譜をスキャンしたり、キーボードも設置されているので通奏低音の練習に使ったりしていた。
声楽教育コーナーには人体模型や、動かせる喉の立体模型なども置いてあり充実している。

図書館の隅の方には横になれる大きな1人用ソファがいくつも置いてあり、寝不足でゾンビのように登校した日などはここで静かに仮眠することもできる。


…とこのような設備で、かなり快適に過ごせた3年間であった。意見があれば生徒会に言う事もできるし、廊下にベンチを設置してくれと何度もアンケートに書いていたら導入されたこともある。民主的で良いことだ。

さて、今日はキャンパスライフの大まかな部分について書き下した。また改めて授業のことなどは、詳細に書き留めようと思う。


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