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3月31日のわたしへ。「今」があるのは、あなたのおかげです。

早稲田大学教育学部卒業。頭が悪かったあなたは、誰にも期待なんかされずに、無謀にも早稲田を受けましたね。挑戦したそのほかすべての大学は落ち、最後に受けたこの学部だけ合格。高校2年までは部活、3年生は一年間死ぬほど勉強したあなたは、その発表を受けて馬鹿みたいに高校3年生の3月を謳歌します。受験前に振られた男の子を見返しましたね。誰もわたしが早稲田に行くなんて思っていなかったのでしょう、なんだか高校で少し人気者になります。インキャで戸惑ってますよね、それでいいです。今のわたしもそんな感じです。

いざ大学に入学。毎日が楽しくて、この4年間がずっと続くものだと思いながら過ごしていることでしょう。実際、昨日の出来事のように色々な思い出が頭をよぎります。

バンドサークルでドラムに目覚め、受験生時代に通って憧れていた大好きなスターバックスのお姉さんになり、日々が驚くほどあっという間で、気がついたら就職活動の時期になっていたでしょう。
なにがしたいか、なにがやりたいか、考えて考えて考えてもぼんやり。ただなんとなくやりたいことはあって、その理由は分からなくて。
漠然とあなたは「出版社に行きたい」という思いで就活をします。
筆記試験では、一社を除いて全てを突破しましたね(スクープで話題のあの会社だけ落ちてます)。
死ぬほど勉強をし、毎日ニュースを見てメモって、努力でカバーできることは全部しました。ボロボロになるくらい参考書を読み込み暗記しまくったというのに、あなたは面接が進むごとにことごとく御祈りメールをいただくことになります。
うまくいかない理由は、答え合わせができます。自分が会社員になった後でわかります。わかるような出来事がきっとやってくるかもしれません。そこまでは、がむしゃらに就活をしてください。たくさん泣いてください。そこでしか味わえない何かがあります。

就活を続けていた結果。ありがたいことに別業界から一つだけ内定をいただけます。それはみんなよりもはるかに遅い、8月のあの暑い日。リクルートスーツが色褪せ、茹で蛸になりながら面接を繰り返していたある日のこと。
内定をもらえたことに、まずはとても安心をしたことでしょう。お先真っ暗だった人生に、ひとつの光が入ったように、久しぶりに呼吸ができたような、心が軽くなる感覚。

それでも諦めきれないあなたは、何が何でも出版社に入るためにあらゆる手段をつくします。もはやこれは執着です。昔から負けず嫌い、できることはすべてやってやろう、周りのことを置き去りにしてあなたは突っ走ります。
新卒応募をしていない会社に自分で連絡をして、手紙まで書いて面接をしてもらいましたね。そこであなたはセクハラまがいのことをされて、それでも頭を下げて、結局うまくいかなくて大泣きします。
理由がわからないのに、どうしても出版社に行きたい。理由がないのになんでこんなに動くのか、今のあなたにはわからないでしょう。昔から直感で動いてきたのだから、その時のあなたは自分ができることを精一杯やっていたのだと思います。



大学卒業間近の2月。あなたは今の会社の中途応募を見つけます。何もかもを差し置いて書類を送りますが、あっさりと落とされます。
しかしその一ヶ月後、また今の会社の中途応募を見つけます。あなたは懲りずにまた応募します。
面接のお知らせが来た時に、これ以上ないくらいのドキドキを感じるでしょう。
初めての面接で出会った方々が、今の私の上司になっています。
これまでリクルートスーツで面接を受けていたけれど、面接の条件に「自分らしい服装で来てください」とあったので、とびきりおしゃれをして面接に挑みますね。髪なんか巻いちゃって、お気に入りのブランドでスカートを買って、最強です。

二次面接まで進んでいる今日。

あなたは、二つの選択肢で迷います。このまま内定をいただいている会社に行くか、今の会社に中途入社するか。
でも、あなたのことだから、後者を選びますね。
内定をいただいていた会社の方はとても親切な方で、真剣にお話を聞いてくれて、最後は応援をしてくれます。そのような会社から内定をいただけたこと、そして辞退を許してくれて応援してくれるのはとても恵まれているということを、数年経って痛いほど実感します。その痛みは、感じるべきものです。社会はあなたには優しくない。そんな中であなたを思ってくれる会社に出会えたことに、感謝をしてください。
こんなことを言うと美談になりがちだけれど、こんな行動を許してくれる会社なんてまずありません。わたしがしたことは、至って迷惑です。それを許してくれたことに、反省と感謝を忘れずに生きてください。

4月3日。同年代のみんなが入社式に参加している時、あなたは今の会社の最終面接を受けます。その次の日に、内定の連絡をいただきます。
たくさん泣きましたね。その涙を、この先もずっとずっと、忘れないで。

中途扱いで契約社員として入社。あなたには、同期も研修もありません。待っているのは、能動的に動けるか、頭をどう使うかの「実践」です。実際に現場に行き、見よう見まねで企画を出し、毎日死ぬ気で仕事をする日々です。
初めて自分で企画した一冊。入社して半年で出版され、ご一緒した著者さんとは7年経つ今でも繋がりが深く大切な方になります。わたしを信じて一冊任せてくれるのは、奇跡です。

何もかもを捨てて、仕事第一で生きていくでしょう。おしゃれも恋も捨てて、生きていくでしょう。あなたはよく身体を壊します。そして、精神を壊す出来事も数えきれないくらいにあります。
あの日のあなたに会えるのならば、あの夜はあの道を歩かないでと伝えにいきたい。あの日の経験は、今の私にとってもまだ癒えない傷となります。男性が嫌いになります。性欲が牙になることを、身をもって知ります。
いつかこの経験があったから、と言える日が来たらいいなと思います。

馬鹿みたいに仕事をしますね。
馬鹿みたいに感情的になります。
仕事第一で生きていると、離れていく人も出てきます。
大切な人を傷つけます。大切に思ってくれている人の気持ちを、蔑ろにします。
いつのまにか自分を見失い頑固になります。甘い考えで、私は私でいい、なんて言い出します。
それは確かに正解でもあり、しかし半分は間違いです。
人が変われなくなる瞬間。それは、人の意見を、自分と全く違う人生を歩んできたその人がいう言葉に。他人なのに自分に意見をくれるその声に。聞く耳を持てなくなる時です。「あの人はああ言ってるけど、私はこうだから」。
確固たる意志を持つことは、独りで強く生きていくにあたり大切なのかもしれませんが、時に間違いでもあります。「あの人はああ言っているけど、どうしてそう思うんだろう。どうして私に伝えてくれたんだろう」。一度立ち止まって考えてみると、見える景色が変わったりもするのです。
流されやすいあなたのことだから、この辺りはあまり心配していません。他人と分かり合えない、とか言いつつ、人のことを考えすぎて誰かの行動ひとつひとつに深読みをしすぎて何度めんどくさくなることか。

その度に見守ってくれる大切な方々がいることを、忘れないでください。

さて。明日から4月です。
あの日のあなたは、今頃ニートでしょう。就職先も決まっていなく、恋人もいなく、学歴フィルターなんてものもなく、ただの肉体です。
しかしドMなあなたのことです。不安なのに、ワクワクしているでしょう。結構リスキーだというのに。何故だかそれを楽しんでいますね。それでいいです。そのままでいいです。その感情を、忘れないでね。

入社してからは、たくさんの経験をさせてもらえます。数えきれないくらい、貴重な出来事があります。悲しくて泣き、悔しくて怒り、優しさを感じて成長をします。自分が想像していなかった出会いがあり、毎日が目まぐるしいのに何故だか楽しいのです。
あの選択をしていなかったら、創れなかった作品があります。
あの選択をしていなかったら、ものづくりの楽しさを知らなかったのかもしれません。
あの選択をしていなかったら、出逢わないような人と巡りあえます。
そんなことを、まだ何も何も知らなくていいのです。
何も知らないまま、突っ走ってください。
なんとかなります。なんとかなるように、なります。なんとかしなきゃいけないときに、あなたはなんとかしていきます。
周りに感謝を忘れずに、働いてください。仕事をして、社会と関わってみてください。
きっと、悪いことばかりではないでしょう。

やっと、29歳になったというのに。
わたしは4月から30歳の代になります。季節は移ろい気持ちの浮き沈みも激しく、寒暖差に身体が追いつきません。
それでも変わらない何かが確かにあって、今の自分がいるのは、これまでの自分がいたからだと思えます。
許せない過去も、醜い思い出も。何か一つでも欠けてたら、今がないのでしょう。我ながらめんどくさい性格をしています。また10年生きていくことを考えるとうんざりもするけれど。
どんな40歳になっているか、想像すると少しだけ心が躍ります。

なにをしているから偉いとか、この肩書きだから素敵とか、そんなものはわたしにとってはあまり興味のないことです。……というと語弊がありますが、何かを手にしたということはそこにそれ相応の努力があってそれに対して何かを言うつもりはなくて。
ただわたしは、生き様にこだわって生きていっているような気がするのです。

生き様は顔に出ます。表情で嘘はつけません。
少なくともわたしは、今の自分の顔が嫌いではありません。ブスだとか可愛いとか、そういうことではないのです。
30代。もう嘘はつけません。偽っていたものが滲み出てくるのでしょう。わたしの痛い部分がバレるのだと思うと、ハラハラします。
目まぐるしく進んでいく日々の小さなことを楽しめるように、心が無邪気でいれるように、わたしは生きていきたいの。
そう、心が無邪気でいられることは、仕事をしていく上でとても大切です。

「好きなことをしていければいい」「誰かのためにが1番」と簡単に言える人がいることに、あなたは驚くでしょう。それができたら誰も不幸にならないと、様々な感情を抱くはめになります。
ただ、忘れないでください。この世の中、結局はお金と時間で回っています。欲しいと思ったものに、価値を感じるものに、人はお金と時間を使います。
好きなこと、誰かのため。それを生み出すためには、人とコミュニケーションをとることを忘れないでください。自分はこれでいいんだ!だけを貫かなくていいです。違うなと思ったら、違うでいい。
社会がどういうものかを疑い、真を知ろうとする心をどうか忘れないで。
生きるとは、誰かと関わること。誰かには、自分と同じように時間が流れていること。その時間でお金を稼いでいること。
悔しいことに、心と頭は繋がっています。


あの日のわたしへ。
その道に執着をしていたのに、意味がわからなかったことに戸惑っているでしょう。
それでいいのです。これからもそうでいてください。
意味なんて最初から求めなくていいのです。
選んだ道を進んだ時、あとから意味がついてきてくれます。
正解や不正解にこだわらないで。心が動くのは、割と奇跡だったりするのです。

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今年は桜が咲くのが少し遅いようです。
それに少しだけ懐かしさを感じたので、綴らせていただきました。

4月。きっと一年はあっという間。
毎日少しでも優しく、丁寧に、たまには雑に生きていければいいのではないでしょうか。振り返った時に、こんなこともあったなぁと思えればいい。そこに少しの笑いがあればもっといい。
人生なんていつ終わるかわからないんだから。
聖人君子になんて、なろうとしてもなれないんだから。
自分ができることをしていければいい。物事に小さいも大きいもないから。いいのです。

なんて。
桜の季節には、言葉が溢れて止まりません。
桜は見上げないと見れないから。
見上げた先にある空と、桜を見た時。

今のあなたが、今のあなたを。
好きでありますように。
自己愛が、自分を守るものになると思います。
そんなことを思ってしまうのです。

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