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私にとって「書く」とは、物事を過去にすることだ

突然だが、わたしはネクラだ。ネクラで、ドガつくほどのネガティブである。いつかきのこが生えてくるんじゃないかというくらいネガテイブで暗い。電車の中とかで笑い声が聞こえてくると「やべ、笑われてる」と勝手にめそめそしてしまう。いつかゾンビまみれの世の中になって、何かの拍子で一人だけ生き残ってしまって主人公アリスになるんじゃないか、とか。あるいは、家の鍵をかけ忘れて、たまたまその日だけかけ忘れていたこのタイミングで、突然切り裂き魔がやってきて八つ裂きにされるんじゃないか、とか。あれ、これはちょっと違うような。悲しい妄想ワールド全開って感じですね。
大勢での飲み会や、普段会社で仕事をしている時には、だいたいいつもニコニコしている。てかみんな、だいたいそうか。わざわざネクラアピールする必要はないのだから、明るく振る舞うのは礼儀の一つでもあると思う。生きるためのスキルというか、明るく見せられれば大体うまくいく。
でも、わたしと仲良いごく少数の友達はいう。「おまえは本当に暗いよな」と。ニコニコなんてしていない、キラキラなんてしていない。どことなく影があるわたしのことを、心の通った友達はよくわかってくれている。

ネクラのわたしが苦手なことは、「まあ、いいか」となにかを割り切ること。今日言ってしまった余計な一言とか、上司に言われてうまく返せなくて場の雰囲気を壊してしまったこととか(実際は多分わたしの思い違いかもしれない)、もう取り戻せない過去のある瞬間への後悔をいつまでもひきずりがちだ。なんて暗いんでしょう。ネクラでネガディブ。世の中の攻撃的な人たちが人を蔑むために使う言葉を選んで表現するなら、わたしはメンヘラです。
「まあ、いっか」ができない。わかっているんだけど、どうしてもできない。こんなこと考えていてもなにも変わらないし、起きてしまったことは取り返しがつかないし、そもそもこんなことを気にしているのはわたしだけかもしれないし、ああだめ気にしているだけで結局なにも恐れていたことは怒らなくてひとりよがりなんだきっと、そう思うのに割り切れない。いや、わかってるんだよ、本当に。頭でわかってても心が追いつかないんです。起こるかもわからない良くない未来のことばかり考えてへこんだり。本当にめんどくさい性格してるよな、自分。

そんなわたしにとって「書く」ということは、生きるために割と必要な行為である。散らかった物事を整理して箱に詰めて部屋を分けるお片付け的な……いや、本当は違いますね、実際には、はちゃめちゃに自分の気持ちを吐き出して、嫌だったこと、悲しかったこと、不安だったことを過去にするための行為である。過去に起こったことを、本当の意味で「過去」にする。

咀嚼できない物事ってあると思う。なんとなく心に溜まっていたり、どうしても忘れられないこととか。あれは、自分の中でその事象を過去にできていないからだと思う。失恋から立ち直れないのも、まだその人に恋をしていたいからなのではないか。結局、ひきずるのはいつでも自分の気持ちの処理次第だ。そしてそれは、今を生きるための足枷となる、しかし捨ててはいけない大切な荷物である「過去」にする他ないのだと思う。

あ、もう無理、しんどい、やってらんない、そういう負の感情でいっぱいになったときこそ、「これだ」というものが書けたりする。それは、自分の中にある黒々として、だけど強い気持ちがいい文章になってわたしから出て言ってくれるからである。これは不思議だけれど、病んでる時こそいいものがかけてしまう。視界がよどんでるときこそ、殴り書いて記事がかけたりする。書いてわたしの歴史になる。

このnoteで過去に書いた記事も、わたしが「過去」にしたいことばかりなんだと思う。子供の頃にいじめにあったことも、就職活動でうまくいかなくてそれでも今のおしごとをしていることも、全部全部本当は苦しくて消してしまいたいくらい黒い歴史だ。いじめなんて受けていた当時はかっこ悪いと思っていたし、自分が悪いと思っていた。負け組だと思っていた。就職活動だって、もっとうまくやれたと思う部分がたくさんある。新卒で違う会社に入っていたら、稼ぐお金も今はきっと違う。
だけど、黒歴史がわたしのいまのパワーだ。いじめられていたから人の優しさがわかる。好きな仕事をしているから、人生がキラキラして楽しい。
苦しさとか逃げたさとか、人に言えないこととか人が避けて通る道とか、そういうものがわたしの過去だ。だから、書いてきちんと過去にしてあげる。

反対に、過去にしたくないものは書けない。わたしは恋愛の記事がめっぽう書けない。そりゃあ元彼の云々カンヌン、今彼と幸せになる方法とか、なんだかむず痒いものを書こうと思えばかけるんだろうけれど、きっとそれはたいそうつまらない記事になると思う。
恋のことだけは上手に書けない。それはわたしの「今」だから。今のわたしが感じる気持ちだから。いつか「過去」にするべきときがきたならば、思いっきり書こうと思う。

弱さとか醜さとか。
本来人前にさらけだすものではない黒くて重たい感情が、わたしのエネルギーだ。メンヘラと言われたくない、弱いと思われたくない、そうやって隠そうとする黒い気持ちが、わたしを前へ押し出してくれる。そして、ある日突然ネクラでネガティヴな感情に負けそうになったとき、自分の語彙をフル総動して文字に落とし込む。そして、「過去」にする。思いっきり底辺に落ちてからが本番だ。空よりも遠く上へ上へ這い上がるあの感じ。いつだってジェットコースター。でも、書くことでわたしは生きていける。うまく喋れないし酔っ払って泣くくらい感情は日常的に鈍くなっているけれど、書けば自分がここに戻ってくる。

またこうしてつらつら書いてしまった訳だけれども。歳を重ねるごとに味のある文章が書けるようになりたいから、わたしははやく大人になりたい。じっくりゆっくり噛みしめるのもいいけれど、今を全力で生きて、気づいたら死にたい。

#エッセイ #コラム #ライティング

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