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【働くあのひと case.9】趣味

9人目は、株式会社someru 代表取締役社長の市瀬航平さん(通称:市瀬)です。わたしと同じく今年で25歳ですが、既に自分で会社を立ち上げて、自作メディアの運営をしています。
絶対にインタビューしたかった人!男気溢れる彼のインタビューをご堪能ください!


―まずは、どんなお仕事をしているのか教えてください!

web制作会社を立ち上げて、タウン誌アプリの運営を行っています。いわゆる、ベッドタウンと呼ばれている、都心から少し離れた地域にあるお店を探せるメディアを作っています。
今の時代って、人が密集している都心の情報ばかりがネットにあがっていると感じていて、都心から離れた地域についての情報って、なかなか手に入れることができなくなってきてるんだよね。

例えば、自分は今、西東京市というところに住んでるんだけど、インターネットで「西東京市 ランチ」って検索してみても、ラーメン屋しかでてこないのよ。でも、実際に街を徘徊してみると、良い感じのビストロとかオシャレなバーとか素敵なお店がたくさんある。ネットにはうまく情報があがっていないから、検索してもでてこないけれど、知られていないだけで地域にはたくさんのお店があるんだよね。

そんな風に、「知られていないけれど、実は存在する地域のお店」にスポットがあたるような、地域情報メディアを作りました。インスタグラムのような投稿型のプラットフォームで、お店を運営する人自身が、写真付きで自由にお店のPRができるもの。
例えば、「新しいメニュー始めました」というような、今そのお店が発信したい旬な情報を、そのメニューの写真付きで投稿できたり。ネットに疎い人でも使いこなせるように、操作も簡単なものになるよう工夫しました。ユーザーは、アプリをダウンロードした際に、簡単な質問に答えることで自動的に好みを分析されるようになっていて、アプリを開けば常にその人に合った情報を見れるようになっています。飲食店から修理業者さんまで、多岐に渡るお店の情報に加え、クーポンやチラシ、求人情報も見つけられます。

―そのメディアをつくろうとしたきっかけを教えて!

母親の愚痴を聞いて!(笑) 今年56歳になるんだけど、めちゃくちゃインターネットに疎いんだよね。スマホの使い方もイマイチわかっていないし、最近ようやくラインに慣れてきたところ…(笑)だから、西東京市のお店を探したくても、ネット検索の仕方が不慣れで、うまくできないそう。若者はネットを駆使してお店を探すのが上手だけれど、ネットに慣れていないと地域の情報ってなかなか見つけられないし、情報そのものがネットにないというケースもかなり多い。「自分に必要な情報がすぐにでてくるサイトとかあればいいのに……」って、母親がいつも愚痴っていたんだよね。個人の習い事、たとえばフラワーアレンジメントの教室とかにすごく興味があるけれど、そういう教室がどこにあるのか、どうやって調べればいいかわかんない、って。
それを聞いて、「確かにそういうものがあれば便利だな、まだないし、作っちゃおうかな」って思った。それがきっかけ。

―大学を卒業して、すぐに起業したの?

新卒では、食肉の専門商社に就職した。「原料トレーダー」といって、国内外のお肉をトン単位で他の商社やチェーン店に卸す仕事。加工工場も持っていたので、例えばラーメンチェーンに使われているチャーシューを大量に卸していたりした。

正直、食肉には興味なかった。一緒に働かないかと誘いをいただいて、最初は断ったんだけど、それからも社員さんはずっと仲良くしてくれてて。最終的に、どの会社よりもそこが一番社長との距離が近いことがわかって、それが就職の決め手だったかな。

「いつかは起業しよう」って、自分の力で会社を立ち上げてみたいという思いがずっとあった。最初は29歳あたりでできればいいなと考えていたから、「大学を卒業したらとりあえず3年間は会社で働いてみよう」と決めての就職活動だったんだよね。
将来、企業をするにあたって必要な能力ってなんだろうって、学生なりに考えてみたら、3つが浮かんだ。「人脈形成力」と、「課題解決能力」、それから「経営マインド」。この3つが必要最低限の能力なんじゃないかと、漠然と思った。

大学生のときにはもう起業したいビジョンが固まっていたから、学生の間にいくつかの会社のインターンに参加してみた。一社目では、ありがたいことに、日本屈指のコンサルタントに「課題解決能力」を養うためのトレーニングをしてもらったんだよね。別の会社ではセールスをやらせてもらって、営業のノウハウ的なものもある程度は身に付いた。
じゃあ、あとはマインドだなって考えたとき、インターンに参加した会社はどちらも大手で、従業員もかなりいた。その分、社長との距離は結構遠くて。声をかけてくれていた食肉の会社は、(極端だけど社員が2名しかいないから)対面で社長と会話できるし、営業ひとつするにせよ全部ついていけるし、かばん持ちまでするし、もう何から何まで学べるから、これはうってつけだ!って。

六本木にあるIT企業から内定はいただいていたんだけど、入社の一カ月前に内定を辞退させてもらって、食肉の専門商社で働くことを決めました。

―新卒の会社を、半年でやめたのはどうして?

学ぼうと思っていた経営マインドが、なかなか学べなかったというのが一番の理由かな。っていうか、そもそも自分が思い描く「経営マインド」を言語化できていなくて、どういうものを求めていたのかを理解できていなかった気もするから、自分にも落ち度はあるんだけど……。社員が片手で数えるほどしかいないのに(子会社を含めたらもっといるけれど)、それぞれの心が分離していたというか……。目指すものがわからなくなってきてしまって、違和感を感じるようになった。当時起業アイデアを100個くらい考えていたけど、その会社で得られるスキルや人脈がそのどれかに役立つかといったら微妙だな..…とか。いろいろ考えた結果、会社を去ることに決めた。

あとは、実際に打席に立ちたかった。セールスにしても課題解決にしても、アウトプットしていかないと自分の能力にならないと思ったんだよね。起業したいとか言いつつも、いつまでもしない人がほとんどのなかで、自分はいつか絶対に叶えたかったから、まずは打席に立とうと思った。一日もはやく独立して、失敗してもいいからまずはやってみようと。それが今。

―独立してみてどうだった?

死んでる(笑)やることの99パーセントがうまくいかない。今の事業をやるまでに、5、6個の事業を検証してみたけれど、見事に全部潰れた。メンバーもコロコロ変わるし。
なんか…もうちょっとね、うまくできるって思ってたんだよ、多分。日々、現実に打ちのめされています。

―それでもやるんだね…!その心は!

自分が選んだ道だから。

独立して、一から人脈を作って、なにをやるにしても全部自分でやらなきゃいけなくなって……。1円を稼ぐのですら、本当に難しいんだと実感した。今の時代、コンビニのバイトでも時給1000円は貰えるわけで、どこかに雇ってもらえてお金が貰えるって構図はすごいと思う。雇うのって、難しいし大変なこと。自分も、起業が失敗したらどこかに雇われて働く身になると思うけれど、会社を立ち上げることで見えたものがたくさんあるから、どこにいっても活躍できる自信は、多少ある。自分の働きがいくらになって、会社にどう貢献できているかを考えながら働けるようにはなった。独立しないと、わからないこともたくさんあるよ。

それに、まだ独立して半年余りしか経っていないし、半年で大成功するなんて、まずない。今までの自分の成功体験に、「勉強」と「バンド」の2つがあるんだけど、その2つの経験から推測すると、成功はこれからやってくるなと感じる。

勉強に関しては、中1から中3まで毎日のように塾に行って、自分なりに努力をし続けた。早稲アカ(進学塾)で全国3位になって、80近い偏差値を叩き出したこともあった。

バンドにしても、毎日のように音楽のことばっかり考えてて、暇さえあればスタジオに入って、そのまま10時間くらい籠ったりとかが普通だった。(市瀬くんはとてもうまいドラマーさんです)それがあったからこそ、バンドの大会でも勝ち上がったりできたんだと思う。

今、半年間仕事をやってみてうまくいかないと感じてはいるけれど、自分にとってはそんなのもう当たり前の話なんだよ。もっと長いスパンで勝負していきたいって思っているし、結果は後になって見えるものだと感じている。実際、うまくいかないことだらけだから、うちのめされてはいるけれど……。だからといって、へこんだりはしないかな。

―起業の目的を教えて!

「実現欲求」と「社会貢献」の2つのため。

実現欲求に関しては、好きな時に海外に行けるような暮らしができるようになりたいから!(笑)どこにいても安定してお金を持っている人になりたい。
自分がアメリカで生まれたというのもあるけれど、本当に海外が好き!毎回新しい発見が多くて、価値観の違う人々がたくさんいるから。大学時代も、一年間留学していました。

一番住みたいと思う国はタイだけど、総じて東南アジアの国に興味がある。意外とテクノロジーの導入が早くて、面白いんだよね。自動運転やUBERなどの配車サービスも、実は東南アジアの方が進んでいたりしてて(東南アジアはUBERではなくグラブ)。日本は法律が堅いから、意外にも後進国に部類される。平和でいい国だしもちろん好きだけれど、海外で発見を重ねていくことに自分は魅力を感じるかな。日本だけしか知らないのは、世界が狭まる気がする。

社会貢献については、なにかしら社会にインパクトを与える仕事をしていたい。人の生活のなかで、自然に浸透しているサービスが作りたいな。自分のおじいちゃん、コロコロコミックを作った人なんだけど、あれって大抵の男性は小さい頃一度は読んだことがあるんじゃないかってくらい身近なものになっている。自分も、それくらい人の生活に浸透するようなものを作りたいって、昔から思ってた。

―仕事を通して、なりたい自分とか、目標とかある?

関わる人から愛されていたい。世の中、愛よ。(直後、互いに爆笑)

愛ってすごい大それた表現になってしまったけれど、何よりもまず人間関係が大事だと思ってる。

便利な時代になったけれど、今の中高生って告白とかも全部ラインで済ませちゃうくらいになってしまったそうで。今よりもさらにネットが発達して、通信速度も格段にあがったとき、日本にいようが海外にいようがどれだけ遠距離でいようが、リアルタイムでクリアに会話ができるようになる日が近いうちにくる。会話が十分にできるようになったとき、今度は直接的コミュニケーションへの欲望が高まっていくんじゃないかと考えているんだよね。人間関係って、希薄化すればするほど、直接会って話せる人との関係がすごく大切になる。

視覚と聴覚からの情報だけでは、人は関わり合えない。コミュニケーションが視覚と聴覚だけでなりたつなら、スカイプで十分だけど、それ以上の感覚を使ってのコミュニケーションがそれ以上に大事だと思ってて。この空間にいる匂いとか、お酒を飲むのに使う触覚とか。例えば、自分が今飲んでいるレモンサワーって、なんか独特な味がするんだけど、別のお店で似たようなものを飲んだときに、あなた(インタビューをしているわたし)の顔を思い出す気がするんだよね。実際に同じ場所にいるからこその情報だし、そういうものが関わり合いで大切だと思う。

タウン誌メディアを作りたいと思ったのも、そう。人との関わり合いを大事にしたいという思いがあってこそ、考えついたもの。「"いつもありがとね"が溢れる毎日を」を理念にしているんだよ。
昔は、地域にある八百屋や豆腐屋さんとかで街の住人が買い物をして、そこで会話をしたりするのが普通だった。道行く学生なんかも、「おばちゃん、いつもありがとね」って自然と会話をしていたはずなのに、いつのまにかそういうのがなくなっていった。会話がなくなるのと同時に、地域もどんどん盛り下がっていって……。
そういう状況を、お店の人が自ら情報を発信できるようなものを作って、人々がメディアの情報をもとに実際にお店にいくようなパターンを構築することで、変えたかった。お店の「人」と住民を繋げることで、街を盛り上げられないかと考えたんだよね。
これからお店への取材を本格的にしていくところだけど、例えばインタビューは地域の学生にお願いしたりも良いかも。高校の放送部とか、広報部とか、若い学生を巻き込んでいきたい。

昔の人たちのような温かみを、もう一度作りたい!じぶんが作るもので、地域を原点回帰できないか、とまで考えています。はたからみたら、ローカルメディアって儲からないと思われてるだろうし、小さい市場で何やってんだって見られるかもしれないけれど、「心の市場」で考えたら絶対に今の世の中に必要なものだと思う。

―市瀬は、自分ってどんな人だと思う?

楽しそうな人(笑) 客観的に見ても、そうだと思う。どんなに落ち込んでいても「あの人暗そう」って思われるの嫌だから、絶対に表にださない。そりゃあ、家族が病気になったりしたときは辛かったりもしたんだけど、それでも絶対に態度にはださないように気を付けてる。同情されてもなにも変わらないし。

―お話が変わりますが!市瀬にとっての、一番の好きってなんでしょうか!

「新しい」を見ること。海外が好きな理由ともつながるけど、自分の世界が一ミリでも広がる経験をできれば、本当によかったと思える。この取材もそうで、こんなに自分のことを深く聞かれることは滅多にないし、自分のことを考えるきっかけにもなったし、今日はすごくいい日だと思える。

なんかもう、なんでもいいんだよね。友達と話していて、すごくどうでもいい雑学を永遠と聞かされたとしても、多分自分は「そんなことがあったんだ!」ってわくわくする。知らなかった世界を教えてもらえているわけだし。どんな些細なことでもいいから、少しでも自分の世界が広がったときに喜びを感じるかな。純粋に、新しさを吸収できることが大事なのかも。
逆に、同じことが続いたりすると嫌だし、つまんない。

―最後に!市瀬にとって、働くって何?

趣味。好きなことしかやってないから。やりたいことをやれてるから。この先やりたくないことも増えるかもしれないけれど、自分が思い描いている仕事をしている限りは、趣味感覚でいると思う。手探り状態ではあるけれど。

あとは、「やらない理由」より「やる理由」をなるべく探すようにして働いている。どうせやらないと何も見えないんだし、それならポジティブに「やる理由」を探そうと。やる理由があって、これは6割くらいは成功の可能性がある!って思ったら、決断の糧にもなるし、それはやってみる価値あると思うんだよね。

だから好きなことは、なるべくやる。迷っても、やらない選択はなるべくしない。そんな感じで働いてる。

―…今までで一番ぶっとんた意見なんですけれど。

(笑) 一年後にはだいぶ意見がかわってるかもね。

―それでは社長!特別に、就活に悩んでいる若者にアドバイスをください!

親の言うことは聞かなくていいと思います。自分の両親は、二人とも大企業で働いていて、おじいちゃんもすごい人だったから、今の自分みたいに企業をしたりする人って家族にいないんだよね。だから、最初は親の言われるがままに商社を中心に面接を受けてた。実際に内定をもらって、いくことに決めていたベンチャー企業もすごい会社だったけれど、親には反対されてしまったし。ベンチャーってだけで、反対されることだって、まだ珍しくない。
でも、自分の選択に後悔はしていない。起業して、今の自分がいることに一切迷いはない。そんな風に、自分で選ぶことが大切。

あとは、自分を知ること。

就活ブログにある自己分析って、「学生時代に何してきた」とか、「これまでこうしてきたなら、こう解答しましょう」とか、それらしく書いているだけで、中身のない薄っぺらいものばかりだということ、ちゃんと頭で考えてわかるようになってください。誰かに用意されたものなんて、つくられたものでしかないから。そんなことで自分の価値を指しだすんじゃなくて、もう思い出せるところ限界まで自分の記憶を掘り下げて、とにかく己を知ること。昔はどういう塾に通っていて、そこでどういう勉強方法をしてきて、どんなときに嬉しくて、どんなときに悔しくて、とか。それを徹底的にやったヤツしか最終的に勝てない。

「企業分析」なんてものを、就職活動中の学生が正しくするのなんて、不可能に近い。自分の成長曲線にぴったりはまる会社を、限られた期間でみつけるなんて、正直無理。日本の学生は、そのための勉強をできる環境にいないからしょうがないけれど、この会社がどうして成功しているのかとか、どうしてこれから衰退していくと言われているかとか、本質を見極められる学生はごくわずか。
だったら、せめて自分のことだけは知っておけば、会社に入ってからの違和感に気づける手助けにもなるし、判断基準のものさしを手に入れることもできる。自分を分析することくらい、やってみてもいいんじゃないでしょうか。

これから、いろんな人が働かなくなる時代がやってくる。事務作業とか経理とか、極端だけど人間がしなくてもいいことが増えていくから、人ができる仕事がどんどん減っていく。そうなったときに、人間である自分が何をできるかわかっていることが大切。好きでもないのにそこそこのお金が貰えるからとか、企業名の看板があるからって理由で大企業に行く選択が、どれほどリスキーであるかを理解していなければ、そこに行けても生き残れない。目の前にある大企業が、数年後になくなることだって十分にあり得る。

自分のやりたいことを、自分でみつける。自分で選ぶ、そして、徹底的に自分をみつめなおしてください。誰かに作られた自己分析じゃなくて、本当の意味で自分を知ること。それが大切だと思います。

「起業したい」と言っている人はいるけれど、実際に行動に移している人はごくわずかで、その中でも人一倍努力して突き進んでいる市瀬。最高にロックンロールだと思います。自分の選んだ道に責任を持つこと、まずはやってみること。お話を聞いていて、考えを改めさせられました。さすが社長!かっこいいです。

市瀬、ありがとう。いつか一緒に仕事しような!

※株式会社someru 公式HPはこちら

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