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VERYのネット版は、なぜ代理母出産で燃えたのか

VERYの代理母出産記事が何故ネットで燃えたのか、そこには貧困問題があるよねっていう話。

該当記事の魚拓

☑︎ 基本的には卵子凍結の記事
☑︎ 一部で代理母出産に触れている
海外(欧米)ではもはやメジャーでカジュアルな「卵子凍結」。自然分娩や母乳育児が尊ばれる日本ではまだまだSF感の漂うマイナーな分野。でも、女性だけにタイムリミットがあり、仕事もノッてる時期に、伴侶を探し、結婚・妊娠しろ、ってどうよ。と立ち上がったのが、自ら26個の卵子を採取したアーティスト・スプツニ子!さん。結婚前に凍結を検討していたシンマイこと申 真衣さんと意気投合!
※この対談はVERY2020年4月号掲載時(取材は2月)のものです。申 真衣さんは、同年7月に第2子妊娠を公表しました。

記事の内容は、「今まで性的もしくは出産についての技術や環境が男性優位に偏り過ぎていた、女性ももっとさまざまな選択肢があって良いはず」といった意見に沿って卵子凍結を推す記事です。

SNSで炎上した該当部分はここ。

申 卵子凍結の次に来るのは代理母だと思うんです。

ス 卵子凍結をしても自分で産むにはリミットがあるから、その流れは必ず来ますね。

申 日本だと向井亜紀さんが代理母出産(*注5)して話題になっていたけれど、米国ではサラ・ジェシカ・パーカーやキム・カーダシアンのように代理母で出産するセレブがいますね。費用的にはなかなか手軽にはならないのだと思いますが、選択肢が増えることは良いことだと思います。

ス そもそも男性って女性のパートナーに代理で産んでもらって、親として認められているのに、女性だけが自分で産まないと認められない、なんておかしいですよね。大事なのは子どもに愛を注ぐことではないでしょうか。
*注5:向井亜紀さんが代理母出産
2003年、タレントの向井亜紀さんが米国で米国人女性を代理母として双子を出産。向井さんを母とした出生届は受理されず、代理母となった米国人女性を母とし“実子”とは認められなかった。’09年に特別養子縁組の成立を発表。

卵子凍結の延長で代理母出産がもっと手軽になれば良い、といった主張に問題があったという事です。

代理母出産の仕組み

☑︎ 方法はいくつかに分かれる
☑︎ 遺伝的に関係のない人の子宮を利用して出産してもらう
☑︎ 代理母が人工授精をして出産する(子供は代理母と遺伝的親子関係がある)
☑︎ 今回問題になっているのは「遺伝的親子関係がない代理母出産」
代理母出産(だいりははしゅっさん、だいりぼしゅっさん、英:surrogate motherhood)とは、ある女性が別の人に子供を引き渡す目的で妊娠・出産することである[1] 。代理出産(だいりしゅっさん)ともいう。懐胎時を含めて表現するために特に代理懐胎(だいりかいたい)と表す場合もある[注 1]。また、その出産を行う女性を代理母(だいりはは)または養母出産という。
代理母出産には以下のケースがある。
・Gestational Surrogacy:代理母(ホストマザー)とは遺伝的につながりの無い受精卵を子宮に入れ、出産する。借り腹。
 ・夫婦の受精卵を代理母の子宮に入れ、出産する。
 ・第三者から提供された卵子と夫の精子を体外受精し、その受精卵を代理母の子宮に入れ、出産する。
 ・第三者から提供された精子と妻の卵子を体外受精し、その受精卵を代理母の子宮に入れ、出産する。
 ・第三者から提供された精子と卵子を体外受精し、その受精卵を代理母の子宮に入れ、出産する。
・Traditional Surrogacy:代理母が人工授精を行い出産する。代理母。サロゲートマザー。
夫婦の受精卵を妻の親族(母・姉・妹など)の子宮に移す方法もあり、日本でも少数ながら実例もある

代理母出産といっても、遺伝的親子関係含めて色んなパターンがありますね。

ちなみに日本では認められていませんが、法的罰則はありません。

1. 代理出産は日本で認められていない
現在、日本では代理出産に関する法整備が整っておらず、倫理的な観点から日本産科婦人科学会が本治療を行う事を認めていない現状があります。

代理懐胎に関する見解

1.代理懐胎について 代理懐胎として現在わが国で考えられる態様としては、子を望む不妊夫婦の受精卵を妻以外の女性の子宮に移植する場合(いわゆるホストマザー)と依頼者夫婦の夫の精子を妻以外の女性に人工授精する場合(いわゆるサロゲイトマザー)とがある。前者が後者に比べ社会的許容度が高いことを示す調査は存在するが、両者とも倫理的・法律的・社会的・医学的な多くの問題をはらむ点で共通している。

2.代理懐胎の是非について 代理懐胎の実施は認められない。対価の授受の有無を問わず、本会会員が代理懐胎を望むもののために生殖補助医療を実施したり、その実施に関与してはならない。また代理懐胎の斡旋を行ってはならない。

理由は以下の通りである
1)生まれてくる子の福祉を最優先するべきである
2)代理懐胎は身体的危険性・精神的負担を伴う
3)家族関係を複雑
4)代理懐胎契約は倫理的に社会全体が許容していると認められない

引用:日本産科婦人科学会

平成15年 厚生科学審議会生殖補助医療部会によると、代理懐胎(代理母・仮り腹)は禁止する報告書が出され、法制化に向けて動きがありましたが、代理出産を規制する法制度は現在までに未整備となっております。

以上の事から日本で代理出産(卵子提供も同様)を行っても現行法下で法による処罰を受ける事はありませんので、ご安心ください。

現状、問題があり過ぎるので、法的にも整備しきれない…といったところでしょうか。

代理母出産の社会的問題点

☑︎ 貧困から抜け出す手段だが、金額の大半をブローカーに搾取されている
☑︎ まともな環境で出産出来るとは限らず、貧困女性の健康を脅かしている
☑︎ 障害児が生まれた場合、引き取られずに更なる貧困に陥る可能性がある
【10月3日 AFP】インド西部グジャラート(Gujarat)州にある妊娠した女性たち数十人が寝泊まりする施設で、夫を亡くしたシャルミラ・マックワンさん(31)は、よその夫婦のために双子を代理出産するべきか決心しかねていた。マックワンさんにとって代理出産は貧困から抜け出せる唯一の方法なのだ。

 他人の子を妊娠している9か月間、マックワンさんは自分自身の子どもたちを児童施設に預けている。出産するまで産院に併設されたこの施設で暮らすよう契約書に明記されているからだ。無事に双子を出産すれば入手できる40万ルピー(約60万円)が家計の大きな助けになることは分かっていた。

 しかし「子宮レンタル」とも呼ばれ、女性が搾取されているなどとして賛否が分かれる代理出産ビジネスを、インド政府は今、禁止する方向に動いている。マックワンさんは「代理出産は残すべき」と考えている。「これがなければ、一生かかってもこれほどの大金はためられなかった」とマックワンさんは話す。彼女は貯めたお金で9歳と12歳の息子を学校へ行かせ、小さな家も建てるつもりだ。
<倫理の問題と心身両面のリスク>

 ただしこれには異論もある。パテル医師や代理出産を依頼する夫婦たちは代理母たちを「搾取」し倫理をめぐる論争をうやむやにして逃げている、との批判にさらされている。

 また代理母たちの多くは、排斥されるのではとの懸念から、自分の親や親族に代理出産について明らかにはしていない。

 シャブナムさんも、自らの子どもたちや親族には、代理母であることを話していない。現在はほかの代理母たちと一緒に病院で生活しており、自宅では失業中の夫が2人の子どもを育てている。夫は失業するまでの間、皿洗いをしていたが、1日の稼ぎは1ドルに満たなかった。

 一部の専門家によると、代理母たちの教育レベルは多くの場合辛うじて読み書きができる程度で、代理出産にかかわるプロセスや感情面でのリスク、自己の権利がほとんど無いことなどは理解していない。

 女性の健康支援を行う団体のプリーティ・ナヤック氏は「妊婦死亡率の問題や生殖補助医療などにかかわるいくつかのリスクがある」と指摘。世界銀行のデータでもインドの妊婦死亡率は10万人中301人と、南アジア地域ではバングラデシュに次いで高い。
 カンボジア国内、そして世界に広がる仲介業者のネットワークは表からは見えない。ただ、強制捜査や摘発事例からその需要の高さはうかがい知ることができる。

 専門家らによると、代理出産を希望する夫婦の側が払う額は4万~10万ドル(約440万~約1100万円)で、代理母になる女性が実際に手にするのは通常1万~1万5000ドル(約110万~約150万円)程度だという。
 オルガさんは、妊娠中は毎月400ドル(約4万2000円)、出産後に1万5000ドル(約160万円)を受け取る。「誰かに強制されたわけではないので、搾取だとは思わない」とオルガさんは話す。だが、財政状況が過酷なため、ウクライナ女性はお金のために健康を売り渡すような状況に陥っていると認める。

 代理母として働く別の女性(26)は、中国人夫婦のための双子を身ごもっている。普段はウエートレスとして毎月135ドル(約1万4000円)の収入があり、今回が2回目の代理出産となる。出産後の報酬約1万5000ドルでカフェを開きたいと思っている。

「もし普通の仕事があるなら、もちろん代理出産はしない」
【8月3日 AFP】タイの女性に代理出産を依頼したオーストラリア人カップルが、生まれたダウン症候群の赤ちゃんを引き取っていなかったことが明らかになった。代理出産の支援団体は、オーストラリアが外国での代理出産の禁止に動くのではないかと懸念している。

 報道によれば、代理母となったタイ人の女性(21)が昨年12月に男女の双子を出産したが、代理出産を依頼したオーストラリア人カップルは健康な女の子だけ引き取り、ダウン症候群の男の子は引き取らなかった。

 女性は代理母になる条件として1万6000オーストラリアドル(約150万円)を受け取ったという。実子2人を学校に行かせ、借金を返済できる額だ。

 しかし女性は、ダウン症候群のほか生命の危険もある心臓疾患も患う、ガミー(Gammy)と名付けられた赤ちゃんを育てていかなくてはならなくなった。必要な医療費を払えるだけの財力もない。

貧困女性の代理母出産に関する問題点をピックアップしてみました。
性風俗産業と同じく、「自由意志」が争点に上がりそうですが、そもそも貧困を解消する手段にやむ無く「代理母出産」するのは、そういった仕組みや環境に強制されていると見るべきです。

そのため、代理母出産がネット上で炎上したのは、そういった闇の部分をしっかりと問題として考えている人がそれなりにいるからでしょう。

まとめ

☑︎ 代理母出産は貧困女性に出産リスクを押し付けている
☑︎ 貧困女性を搾取する代理母出産は、臓器ビジネスや人身売買と同じくらい倫理的に問題がある
☑︎ フェミニストとして認識される事もあるスプニツ子!さんが、貧困女性搾取ビジネスになってる代理母出産を肯定的に見ているため、批判的な視線が集中した
☑︎ 高所得者女性層が貧困女性を搾取する構造を容認するような記事を出してしまった

特に女性アーティストとして活動してそれなりに脚光を浴びている方が「貧困女性搾取」ビジネスになっている代理母出産に肯定的なのは、かなり批判的な視線を浴びているのではないでしょうか。

 「フェミニストという言葉は日本だと実は誤解されてきた歴史があって、例えば『女性がもっと強くなるべき』とか、広辞苑だと『女権拡張論者』『女に甘い男』と書いてある。でもそんなことはなくて、フェミニストって女性でも男性でもどんな属性でも当たり前に『みんな同じような権利・可能性を持って』という人だから、女性主義というよりは『人間主義』。男性でも女性でも関係なくチャンスをください、誰でもみんな機会があるんだよっていうのがフェミニストだと思っています」(スプツニ子!)

代理母出産による貧困女性搾取は、もう権利と可能性の搾取と言っても差し支えないのでは…?

代理母出産のリスクの高さや、ケアの不足、権利について何ら説明されない状況を鑑みると、到底代理母出産について肯定的な見方は出来ません。

また、VERYの紙媒体では特に問題がならず、ネットに転載されてから炎上して問題になった事を考えると、VERY読者層は「高所得者女性層が貧困女性を搾取する構造を容認してる」と見られる可能性もあり得ます。

貧困層に大金を与えているならwin-winだし良いじゃないかっていうのは非常に短絡的だと思いますし、結局本人のスキルや環境が解決するわけではないので、一時的に金を与える事は貧困問題の解決には全然ならないんですよね。

女性が出産によってキャリアを閉ざされてしまうのは、社会の仕組みに問題があり、それを社会的な問題によって貧困層になっている女性を利用して出産リスクを押しつけて解決しようととする行為は何の解決にもならないと思います。

もっと不妊治療を含めて、もっと画期的な技術や、環境の改善が図られるといいですよね。


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