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クール・ブイヨン・イズ・クール

フランス料理を勉強する過程で『パリっ子の食卓 フランスのふつうの家庭料理のレシピノート』を現在読んでいるのだが、その中で登場頻度が高いのが「クール・ブイヨン」という野菜出汁(ブイヨン)である。これで魚を煮たりすると美味しいらしいので、まずこの出汁の取り方について改めて調べてみることにした。

参考書籍について

現在フランス料理を勉強中なのだが、フランス料理の中でも、特にフランス家庭料理について調べたいと考えている。ただ、フランス家庭料理について日本語で書かれた本の中で「これは!」と思うものを探すのは難しかった。

家庭料理で作るには手間がかかりすぎているように思われるもの、家庭料理ではあるけれど別にフランス特有ではないものが紹介されているもの、料理ではあるけどおつまみやお菓子に寄りすぎているもの…などなど、なかなか自分のニーズに合ったものが正直なところ見つからなかった。

パリっ子の食卓 フランスのふつうの家庭料理のレシピノート』も最初は「そもそも材料が難しすぎる」と敬遠していた1冊である。目次を見るとわかる通り「タンポポのサラダ」「ウサギのマスタード風味」「エイの焦がしバターかけ」など「いやどれも日本のスーパーで手に入らん材料を前提としすぎやろ」と思って読まないようにしていた。

ただ、この本をざっと目次だけ読んで捨ててしまっていた自分が愚かであり、よくよく前書きを読むと以下のような言葉が書いてある。

"日本に住んでいる読者の方に、材料がそろわないからとサジを投げてもらっては困る。ウサギや子牛がなかったらトリで間に合わせればいい。牛の腎臓がなかったら豚マメでいい。(中略)想像力を動員してもらいたい。"

なるほど、この本のレシピは一番本場に近い状態で作る場合の材料を書いてあるが、実際には構造さえ理解していれば材料は別の要素で置き換えてもいいということである。それであればむしろ自由度が高い。

そういった自由度が高いレシピとして読むとこの本の記載方法(レシピ本的ではなくどちらかといえばエッセイ・文学的)もむしろ理解しやすい。レシピ本編よりも、フランスの人たちがどういう生活環境や発想に基づいてその料理を作り、どういう場面で食べられているのか、という文化面の説明がかなり丁寧に行われている。
逆に「この通りに作らなければならない」と思って読むと非常にしんどい本かもしれない(記載がレシピ的ではないので)。

そんな本の中で何度も出てくるのがクール・ブイヨンという出汁である。

クール・ブイヨンとは

クール・ブイヨンとはなんとなく「クール」ということで涼しげなイメージを持ってしまうが、フランス語では「court-bouillon」であり、「court」は「短い」という意味を持つ。つまり短時間でサッととれる出汁。

他のブイヨンは、例えば比較的簡単なチキンブイヨンであっても煮込み時間だけで40~50分ぐらいかかる。まあ長時間煮込むのも別に放置して煮込むだけなら楽っちゃ楽なのでいいのだが。

クールブイヨンは煮込み時間も10~30分と比較的短く、煮込む材料もどこにでもある野菜(玉ねぎ、にんじん、セロリ)と白ワイン、ワインビネガー(またはレモン汁)である。ハーブ類はレシピによってまちまちだが最低限ローリエと白コショウでもいい。これなら和食のだし引き(昆布・かつお等)と変わらない気軽さで同じくフレンチを楽しむことができる。

クール・ブイヨンの作り方

1.材料を切るなどして準備する
3.材料を鍋に入れ、弱火でコトコト10~30分煮る
3.具材を濾す

たったの3ステップである。説明しがいがないので作り方自体は下記レシピ動画を見てもらったほうがわかりよいと思う(実際にはもうちょい細かいポイントの説明なども入っていてありがたい)。

なお、レモンを入れているのはイタリア式の作り方らしい。本で読んだレシピだとワインビネガーが使われており、酸味部分をビネガーにするかレモン汁にするかという選択肢があるものと思われる。

クール・ブイヨンの構成要素(分量)

クール・ブイヨンの構成要素はシンプルだが分量が謎めいており、単純計算で比較するとレシピによって比率が75倍ぐらい違うことがある。75倍も違うなんてことある!?

また、単純に魚のくさみを取るという目的が主の場合は酸味を強くし、あとでスープに使いたい場合は水と酸味を減らしてワインの量を増やす(うまみを強くする)というバリエーションもあるという。
そのため目的に合わせて分量は変える必要がありそうだ。

構成要素
<液体部分>
・水(必須)
・白ワイン(必須)
<酸味担当>
・白ワインビネガー or レモン or レモン汁(いずれか)
<香味野菜>
・玉ねぎ(必須)
・にんじん and/or セロリ and/or 西洋ネギ(Leek)
<スパイス類>
・ローリエ and/or タイム and/or パセリ(いずれもホール)
 またはブーケガルニ
・粒胡椒(基本的にホール)
<塩>
・塩(作る段階では入れず、あとで料理に合わせて加えるのもあり)
分量の比率
以下、いろいろなレシピから「水=1リットル」を基準とした際のバリエーションを記載

・水:1リットル
・ワイン:10ml~750ml
※幅がありすぎてどう解釈したらいいの迷うが、海外のレシピサイトを見ると100~250mlあたりが相場なのでまずはそのあたりからやってみるのがよさそう
・酸味類:10ml~120ml
※これも幅がありすぎるが、120mlは割とエクストリームな例であり、多くのレシピは10~50mlの幅に落ち着く。酸味が少ない方が後から応用ききやすいので少ないところから始めるのが便利。レモンを使用する場合は、1個分のレモン果汁が40~60mlなのでそれをもとに調整
・香味野菜類:トータルで100~300gぐらい
※要素別でいうと野菜のサイズによるが玉ねぎ0.5個+にんじん0.5~1個+その他少々ぐらい
・スパイス類
※定番の構成というものは難しいが、だいたいローリエ1枚とタイムかパセリ(枝を使用する)が1個、またはブーケガルニ1束というような形。粒胡椒は5~10粒ほど使用する。

クール・ブイヨンの使い方

クール・ブイヨンの使い方としてもっともオーソドックスなのは「魚を煮る」である。実際には魚以外に鶏肉・豚肉などを煮ても全然いいらしい。

魚を煮る際は、魚を鍋に入れたあと、上からある程度冷ましたクール・ブイヨンを魚がかぶるぐらいまでそそぐ。そして沸騰直前まで熱したらグツグツ言わない程度の弱火でじっくり8分ほど煮る、というのが定番のようだ。

魚をクール・ブイヨンでポシェすることをナージュという。横文字が多すぎて意味がわからないが、上記のようにゆっくり火を通して煮ることをポシェ、それをクール・ブイヨンでやるとナージュという。ナージュは「泳ぐ」という意味がある。魚がブイヨンの中でゆらゆら泳いでいるからか。

ともあれナージュした魚はくさみが無く、身はしっとりとしていながら中まで火が通っており、塩とレモン汁をふるだけでも十分美味しい。(または煮る前に塩を振ってもよいかもしれない)
より本格的にやるならば、魚を煮るのと並行してソースを作りそれをかけるのがよい。どういったソースを合わせるかは色々研究しがいがありそうだ。

魚を煮た後の煮汁に関しては、うまくやるとスープになるらしいのだがここに関しては試したもののまだ成功していない。残った煮汁と出汁を取るときに使った野菜を単にミキサーにかけてみてもあまり美味しくならなかった。生クリームを足すとよいらしいが、あまりこれに生クリームを足しても美味しくなるイメージがわかない。追加調査が必要としたい。

クール・ブイヨンとよく似ているもの

クール・ブイヨンについて調べていると微妙に似ているものが出てくるので、一応そちらとの違いについても参考程度に記しておきたい。

ブイヨン・ド・レギューム
作り方自体は非常にクール・ブイヨンと似ているように思われる。ただ、レシピによって差はあるが「野菜の種類が多い(カブ・ネギ・トマト等)」「酸味要素を入れない」「水に比して若干野菜の量が多い」「煮る時間がやや長い(45分以上)」というところが違う。
また、魚を煮るというよりはスープなどのベースとして使うというところも違いそうだ。

フォン・ド・レギューム
これはブイヨン・ド・レギュームとの差がかなり微妙なように思うが、「煮込み時間が長い(2時間~)」「より濃厚」という点が製法として違っており、また用途としてもスープまたはソースに使うというところが違う。

参考書籍・サイト

今回は地味に参考サイトや書籍が多くなってしまったので、リンクを記載するのみにとどめておく。

パリっ子の食卓 フランスのふつうの家庭料理のレシピノート

https://rouxbe.com/recipes/1675-basic-court-bouillon

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