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詩【履歴書を買いに】

履歴書を買いに
セブンイレブンに行ったら
セブンイレブンは改装中で
ボロボロに
瓦礫の山

僕は嬉しくなって
瓦礫の山で遊んで
瓦礫の裏で
タバコをふかして
履歴書を買うことも
すっかり忘れて


夕日とともに
工事現場のおっちゃんが帰って来て
怒られて


履歴書を買いに
また別のコンビニに


ビデオマーケットという
レンタルDVD屋の前を通って
ファミリーマートに行こうとしたけど
それが曲者で


僕は
ビデオマーケットに入ると
鞄をレジに預けて
札を貰って
AVコーナーに
ヒソヒソと入って行くんだ

そして
ソフト・オン・でマンドのコーナーの中から
オフィスレディーものを探して


「そうだ
このオフィスレディーに履歴書を書こう」


そう決めて
ついでにローションも買って
その場を後にした

ビデオマーケットを過ぎた角にある
ファミリーマートで
履歴書を買う代わりに
ビールを買って
家に帰る

「さぁ今から履歴書を書くよ」

独り言を言って
僕はスーツに着替える 

着替えた僕は
借りて来た
オフィスレディーのDVDをセットして
再生


オフィスレディーが現われて

「弊社に御応募頂きありがとうございます」

そんな彼女に僕は……

そんな彼女に僕は
履歴書を提出しなければならないけれど
僕の持ってる履歴書は
もちろんアレしかないから
それをそっとDVDでッキに載せて


「冷たいっ!」
とか言いながら

オフィスレディーの出方を待つ

するとそこに母さんが帰って来て
僕はすかさず
チャックの中に履歴書をしまって
「ちょっとあんた
なんで部屋の中でスーツ着てんのよ」
「いや
面接の練習
面接の練習だよ


母さん
面接官やってよ」
「面接官?
私は昔
鬼面接官と言われてたのよ」
「鬼面接官?
 のぞむところだね!
 じゃあ
 鬼的な質問を二・三個ください」
「第一の質問
あなたは何故
 弊社が
 この宇宙に生まれたと思いますか?」
「母さん……
 前々から思っていたんだけど
 新興宗教に出入りしてる
108号室の源さん
最近付き合いあるよね?
 大丈夫?」
「何言ってるの?
 鬼面接官の言うことを聞きなさい!
 どうして
この宇宙に
 弊社が生まれたのか?
 答えてみろ!」
「面接官さん
 楽勝ですよ
 それは
 原子と原子の間に
 歌があふれているから!
 原子と原子の間に
歌があふれているから!
歌がつながり
歌を呼び
合唱曲となって
御社が生まれたのです!」


「いいだろう
 では次の問いにいくよ
 青は
 何故
 黄色じゃない?
 青は
 何故
 黄色じゃない?」
「面接官さん
 今度も楽勝ですよ!
 それは
 原子と原子の間に
 歌が流れているから!」
「それさっき言ったじゃないか!
 違う答えを言いなさい」
「わかりました
 青は何故
 黄色じゃないのか?
 それは
 青が
 遠い
 遠い
 黄色の星の中から生まれた
 ひとつの飴玉だからです」
「詩でごまかすな!」
「ちょっと待ってよ母さん
 やり過ぎじゃねこれ」


「そうね
 では
真面目な質問を」
「待ってました」
「あなたには夢がありますか?」
「あります」
「その夢を叶えるために
あなたは何をしますか?」
「真剣に話していいですか?」
「いつだって私は真剣です」
「失礼しました
寝ている時に見る夢は
起きている間の記憶の整理だと
脳科学的には言われています
ならば……」
「ならば?」
「夢を叶えるために
私は現実を整理します!」
「なるほど」
「はい」
「私からも一言いいですか?」
「もちろんです」
「夢を叶えるために必要なもの
それは
準備です
頑張ってください」
「ありがとう
母さん」
「違います
私は面接官です」
そう言うと母さんは
玄関の扉を開けかけたところで
振り返り
「最後にひとつだけ
これは
親として」
「うん」
「夢を叶える方法を知ってるなら
何でそれをしないの?」
そう言って
静かに僕を見つめ
「サミットに行って来ます」
と再び
廊下に停めてあった自転車に乗って
行ってしまった

僕はまた
DVDでッキに近寄ると
履歴書を出し
オフィスレディーと対面した

「弊社にご応募頂き
誠にありがとうございます
では早速ですが
面接に入らせて頂きます」

するとそのオフィスレディーが
テレビのブラウン管から
出てくるわけもなくて
僕はただ
引っ張り出した履歴書を
こっそりと
またスーツにしまって
全身を映す
鏡の前に立って

「明日
 髭を剃らなきゃな」

と言って
そのまま
スーツのまま
布団にもぐり込んだんだ


この作品はギタリスト・大槻拓さんとの即興バンド『古代歌謡』での即興をもとにテープ起こし・改編したものを、東京荒野に掲載したものです。



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