秋の終わり、静かな海辺の町「潮見町」は、深い霧に包まれていた。
漁港の歴史を持つこの町は、季節外れの静けさに覆われ、霧に照らされた灯台のぼんやりとした光が唯一の目印となっていた。

佐々木直人の探偵事務所に、若い女性が訪れる。
彼女は松本美佳と名乗り、数週間前に突如失踪した兄、松本健一を探して欲しいと頼んだ。彼女の目は不安と絶望に満ちており、
「兄は何かに追われているようでした。
どうか見つけ出してください・・・」と震える声で訴えた。

過去のある事件に対する罪悪感を背負う佐々木は、美佳の依頼に心を動かされ、捜索を開始する。潮見町の静かな街を歩きながら、彼は健一の足跡を追い始める。海の匂いと波の音が重苦しい雰囲気を漂わせる中、地元の人々からは、最近健一が不審な行動を取っていたという話が聞かれた。
そして、町には古くから伝わる、解決されていない暗い謎があるという。

佐々木の調査は、健一が最後に目撃された古い神社へと彼を導く。その神社は、町の外れにひっそりと佇んでおり、不気味な静けさが漂っていた。神社の裏手で、佐々木は健一の遺留品と見られるノートを発見する。
そのノートには、町の古い伝説に関する恐ろしい秘密が記されていた。

その夜、佐々木は霧に覆われた海岸線に立つ。町の伝説に秘められた真実を追い求め、彼は霧の中に姿を消す。霧の中から聞こえるのは、遠くで鳴る灯台の警告音と、彼の足音だけだった。

翌朝、霧は晴れ、町は平穏を取り戻していたが、健一の行方については何も解明されなかった。佐々木は美佳に、兄が遺したノートの内容を伝えるが、それが真実かどうかは誰にもわからない。美佳は涙を流しながら、兄がいつか戻ってくることを信じて「待つ」と誓う。
彼女の涙は、失われた希望と深い悲しみを象徴していた。

佐々木は、ノートの記述に基づき、町の伝説の謎を解き明かそうとする。伝説には、海から現れた謎の存在が町を訪れ、その後に失踪や不可解な出来事が起こるという話が含まれていた。佐々木はこの謎の存在が健一の失踪に関係していると感じ、町の古文書を調べ始める。

その過程で、彼は町の図書館で、町の歴史に詳しい老図書館員と出会う。老図書館員は、過去にも同様の失踪事件が何度か起きており、それらすべてが霧の日に発生したと語る。しかし、具体的な証拠や詳細は誰も知らないという。

佐々木はこの情報を基に、さらに深く調査を進めるが、具体的な手がかりを見つけることはできなかった。彼は、町の伝説がただの迷信ではなく、何らかの真実を含んでいると感じつつも、その核心に迫ることはできない。

一方で、美佳は兄の失踪によって深い心の傷を負い、町の住人たちも不安に包まれていた。町では、霧が濃くなるたびに恐怖が増し、住人たちの間には不穏な空気が流れる。

佐々木は、この事件が自身の過去の罪悪感と密接に関わっていることを感じ取る。彼は失踪した健一と自分自身の過去との間にある見えない糸を辿ろうとするが、霧のようにその真実はつかみどころがない・・・