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スペインの写実画家、マリア・ホセ・コルテス

先日、図録『スペインの現代写実絵画 バルセロナ・ヨーロッパ近代美術館(MEAM)コレクション』(ホキ美術館、2019年)を入手しました。これはホキ美術館で2019年5月17日(金)から同年9月1日(日)まで開催された企画展「スペインの現代写実絵画 バルセロナ・ヨーロッパ近代美術館(MEAM)コレクション」の図録です。この企画展の概要についてはホキ美術館の公式サイトに書かれていますので引用致します。また、後掲するこの企画展に関する記事と出品された作品数点もご覧下さい。

ホキ美術館では2010年の開館以来初めて海外の美術館の作品59点を紹介する企画展「スペインの現代写実絵画」を開催いたします。
本展はバルセロナに2011年に開館し、積極的に現代の具象絵画(フィギュラティブアート)の展示を行っているヨーロッパ近代美術館(MEAM)のコレクションを紹介するものです。
MEAMは国際的な作品を扱っておりますが、今回は30歳代から70歳代まで、現在活躍するスペインの59作家の59作品を4つのギャラリーに展開してご紹介いたします。
展示作品にはMEAMの母体となるFundacion de las Artes y los Artistas財団により2006年から開催されている「FIGURATIVAS」のコンテストで入賞した作品はもとより、大賞受賞作も含まれます。
今、世界でも写実絵画が盛んなのはスペインと日本と言われております。
ホキ美術館は2015年頃よりMEAMとの交流を続け、昨年秋にはホキ美術館のコレクション60点をバルセロナにてご紹介いただき多くの方々に日本の写実絵画をご覧いただくことができました。
17世紀のディエゴ・ベラスケス、18世紀のフランシスコ・デ・ゴヤをはじめ、現代のアントニオ・ロペス・ガルシアまで脈々と受け継がれている写実の伝統をもつスペイン。日本にもその影響を受けている写実作家が数多くいます。
画家の主張がダイレクトに伝わる個性豊かなスペインの写実作品の数々を是非間近にご高覧ください。日本の写実作品との違いもお楽しみいただけます。
なお本展はホキ美術館での展示を終了後に2019年9月14日より2019年11月10日まで、佐賀県立美術館へ巡回いたします。

「千葉・ホキ美術館でスペイン現代写実絵画展 日本初公開作品59点一堂に」(『千葉経済新聞』2019.08.06)

「スペインの写実画紹介 日本初公開59作品 ホキ美術館」(『千葉日報』2019年5月27日 05:00)

カルロス・マリフアン《シロ》(ヨーロッパ近代美術館、2009年)
ハイメ・ヴァレロ《ポートレートNo.5》(ヨーロッパ近代美術館、2013年)
ゴルチョ《眠らない肖像》(ヨーロッパ近代美術館、2007年)
ハコボ・アルカルデ・ヒベルト《都市からの亡命》(ヨーロッパ近代美術館、2013年)

この図録を見て、スペインの写実絵画は日本のホキ美術館系の無味乾燥な写実絵画とは全く別物であることが分かりました。日本の写実絵画は写真をトレースしたような作品や毒にも薬にもならない売り絵の美人画と言った平板な代物だらけですが(ただし、故・磯江毅など一部に才能ある画家はいますが)、スペインの写実絵画にはそのような代物は存在せず、圧倒的な技巧に加えて斬新な表現方法、常識破りなテーマ選びなど、画家の主張がダイレクトに伝わる個性豊かなものばかりです。中でもマリア・ホセ・コルテス《ジェネレーション@》(ヨーロッパ近代美術館、2015年)という作品に強く惹かれました。

マリア・ホセ・コルテス《ジェネレーション@》(ヨーロッパ近代美術館、2015年)

マリア・ホセ・コルテス《ジェネレーション@》は男女2人がチャットで交流するパソコン画面を描いた作品で、大きく表現されたまっすぐ見つめる女性と下の白い枠に小さく収まる男性の上には、緑色の文字や画面の乱れなどが描かれています。この作品の圧倒的な技巧もさることながら、日本の写実絵画には見られない斬新なモチーフにも惹かれました。図録に掲載されているマリア・ホセ・コルテスのプロフィールを紹介致します。

マリア・ホセ・コルテス María José Cortés

1965年バダホスに生まれる。セビリア在住の女性作家。バルセロナ大学美術学部で研鑽を重ねた。芸術家としての経歴はあくなき興味と探究心からスタートし、作曲や演奏、神学、詩や演劇、写真、社会学にも広がったが、絵画にこそ自分のルーツを見いだし、制作を続けている。作品はヨーロッパ近代美術館(MEAM)、サバデイ銀行、ヴィラ・カサス財団、バルセロナ大学芸術遺産のコレクションで見ることができる。

図録『スペインの現代写実絵画 バルセロナ・ヨーロッパ近代美術館(MEAM)コレクション』(ホキ美術館、2019年)p.40

私はこの画家の作品を他にも見たいと思い、「María José Cortés」でグーグル検索したのですが、スペインには同姓同名の人が何人もおり、この画家の作品が全く出てきません。そう思っていたところに以下の記事を発見し、マリア・ホセ・コルテスのフルネームが「María José Cortés Antequera」であることが判明しました。

早速、「María José Cortés Antequera」でグーグル検索したのですが、この画家のフェイスブックインスタグラムのアカウントを発見しました。その中から幾つかの作品を紹介致します。外国人とはいえ現役の画家ですから数多く紹介したらまずいので3点にとどめます。

María José Cortés Antequera《Borrador Vitae.》
María José Cortés Antequera《El camino a casa.》
María José Cortés Antequera《Las Miradas y las "moradas".》

また、マリア・ホセ・コルテスが企画展「スペインの現代写実絵画 バルセロナ・ヨーロッパ近代美術館(MEAM)コレクション」(ホキ美術館、2019年)の期間中に訪日していたことを知りました。『藤原紀香と巡る 奇跡のリアリズム』(BSフジ、2019年6月9日放送)にも出演しています。

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