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落下の解剖学

雪山の山荘での転落死を巡る
法廷サスペンス

真実の声は誰
最後は誰が笑うのか


冷たい雪がスクリーンから降ってきそうな錯覚と
ドキュメントのような展開

目の動き、ひとつひとつにも目が離せない

効果音など、テクニカルな音の演出はほぼなく
時折流れる音楽が印象的で心に残る

カメラが見る人の目の動線をベースに対象を追う場面もあり、その、あえて蛇行するような粗ささえ感じるカメラワークがさらなる真実味を増す

人物たちに芝居感はまったくない
まさにリアルな人間模様

奇を衒うこともなく
たんたんと進んでいく

俳優たちの全身全霊のことばに圧倒された


果たして
真の
雪解けはいつ

フランスのみならず全世界が固唾を吞み息をこらした

 カンヌ国際映画祭 最高賞パルムドール受賞
 ゴールデングローブ賞 脚本賞  非英語作品賞 受賞
 米アカデミー賞作品賞を始め5部門にノミネート

落下の解剖学

主人公家族の息子ダニエルを演じる
ミロ・マシャド・グラネールさん


兎に角
すべての登場人物が真実を話し
うそのない声だと最初は感じました

ですが、途中から気づきました
ひとりだけ、あれれっと思う人が・・・

声にうそがまじっている

あやしい

長きにわたるボイストレーニングと声の研究をしてきた女の直感

おそらく犯人だとおもいます

うその声が1人:真実の声がほか全員という構図で、

これが、この1人をたたせるための演出ならひざをうちます

この、おそらく犯人と思われる俳優さんなら、演技でうそのない声もだせるはず

とても興味深いです
あくまでも、わたしの推理ですが

いま公開中ですので、くわしく申し上げることができないのがもどかしいです

目は口ほどにものをいうとはいいますが、声はそれ以上なのではと。本能があらわになっていることに気づかない

俳優さんたちの入り方がすさまじく、観る側に映画と感じさせないです

リアリティを追求して、削ぎおとして 削ぎおとして残った核となる部分が、強く迫ってきます

息子ダニエルの法廷でのことばに、胸がつまりました


そして、
映画では、スヌープという名前で登場していた
ボーダーコリー犬の、メッシくん

初めて画面に登場した時のインパクト、衝撃です

それが、出オチなのではなく、そのインパクトが最後まで続くのです

メッシくんの圧倒的な存在感

ドック界の白石加代子さんだと感じました

白石加代子さんの存在感を表現する時、どの形容詞も小さくおもいます

スケールが大きくて独特な個性が北極星のように光る、怪演というワードが近いです

でも、源の繊細さが感じられるから、好きなんです



👑
優秀な演技により
パルムドック賞を受賞したメッシくん
この映画のために、2か月間、訓練をがんばったんだとか
愛おしい。



夢にでそうな、でも、かわいい
一度みるとわすれられないのに品のある、
メッシくんを知ることができたのも、この映画を観てよかったとおもう理由のひとつ

もっと登場してほしかった

撮影中は、トレーナーと飼い主に大切にケアされていたそうです

メッシくんの、あの表情をとらえたスタッフさんたちにも敬意を表します




もう犯人は誰? を忘れるくらい、
研ぎ澄まされたシンプルな画力に、ただただ圧倒されて、映画館をあとにしました


隣の芝生の、ほんとの色はわからない

息子ダニエルの今後のメンタルが心配なのが心残りです

フランス映画って、やっぱりすきです
もう一回観たいです


最後までおよみくださいまして
まことにありがとうございます。

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