✂︎シーン1 少年と巨大魚のマザーグース

帝国との戦争で両親を失った少年は、山奥の術師のおじいさんに引き取られました。
おじいさんは優しく彼を迎えいれましたが少年は両親を亡くしたショックで言葉をなくしていました。
ある日、少年が目を覚ますと山頂の方から声のようなものが聞こえてきました。それは全てを包み込むような悠然とした声でした。
少年がその声に導かれるまま、山頂へ登っていくと、そこには深緑の木々や草花に囲まれた、水色に輝く湖がありました。木々や湖、草花の周りにはフワフワと色鮮やかな光が楽しそうに動き回っています。
さきほどから聴こえていた声は湖の中から響いていました。大きく深くありながら優しさを感じる声。
少年が恐る恐る声の方へ近いていくとそこには巨大な七色に光る魚が泳いでいました。それが声の主でした。

少年は驚いてその姿を眺めていると巨大魚は少年に物語を話はじめました。
それは些細な物語でした。
とある世界のとある町に住む人の話でした。
どこかにある作られた話なのか、現実の話なのかわかりませんでした。
しかし、巨大魚の声で聴いていると安心感に包まれ少年はいつの間にか眠ってしまいました。

少年はその日から、毎日のように巨大魚の語る物語を聞きにきました。巨大魚の声が心地よいのはもちろんでしたがこの世界のどこかでいろいろな人間が様々な思いを抱えて生きているのだと思うと寂しさが薄れるような気持ちにもなったのです。

ただ、今は巨大魚の語る物語を聴きながら眠っていたい。そう思っていました。

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