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バーボンと煙草と未来のサイボーグ猫:麻雀小説(3)マチルダの奇妙な冒険

これまでのあらすじ

 中華仮想通貨と電脳牌が飛び交う、22世紀初頭の中国香港自治国『新華強北』裏新中華麻将界では、1から200の数字と簡体字、絵文字などの電脳牌が存在し、その組み合わせによって点数が決まる『新中華麻将』による覇権争いが勃発していた。

 初戦は碧い髪のツンデレ猫型アンドロイドのマチルダの[41]の裸単騎待ちに、ベイズの勝間がトリプル役満の連続素数に振り込んでハコが飛んだ。

第二回戦

 このシリーズでは登場人物になっている作者の『俺』は、雀荘で麻雀をやったこともないのに、麻雀小説を書くのは意外と難しいことを悟り、情景描写をしない新たな創作手法『発明』した。この『発明』の意味は『サイコパスに学ぶハッタリ英語入門:Chapter 1:孫正義×松尾豊×ドクター中松に学ぶハッタリ英語』を読んでいない読者には、理解不能のAI無理倫理専門用語だろう。『発明』の定義が分からない方は、以下のnoteも読んでいただきたい。

 一局目のルールは第一戦目と異なり、数字牌は[1][233]で、麻雀卓には[NUL] [DEL] [CR] [LF] のようなASCII制御コードに、[松] [竹] [梅] [桜]のような漢字牌や、[!(^^)!] [( ;∀;)] [(‘ω’)]といった顔文字牌ばかりが、麻雀卓に晒されていた。この局面では、全ての雀士が手牌として、[1] ~ [233]の何れかの数字牌を手牌として持っていたので、プレイヤー全員が、数字牌の役を狙っているのは明らかだった。

 だが、この条件でも勝間のベイズ確率麻雀理論が一切通用しないことは明らかだ。なぜなら手牌に[10]を持っていても、電脳牌が積まれた山には、[10]が4つ入っているのか、100個入っているのか分からないのが、『新中華麻将』のルールだからだ。

 ベイズの勝間の手牌は全て数字牌だった。THEYは『漢字牌顔文字牌ASCII制御コード牌を含まない『手牌が全て数字牌であるという規則性を主張できるかも知れない』と思った。しかし、初戦で『連続素数のトリプル役満』に振り込んでいるので、『手牌全部数字牌』の規則性を主張しても、平和(ピンフ:麻雀で一番得点が低い)くらいのショボい点にしかならないことは明らかだった。手牌は[100]~[233]の三桁の数字牌でテンパっていたので、[200]を引いた後に安あがりせずに、跳満(そこそこ高い点数)狙いで、[55]抜きの三桁数字牌のリーチ一発自摸あがりを狙ってリーチを掛けて[55]を切った。

 上家のマチルダは『デレ』[55]を哭いて、[34] [89] [55]を雀卓に晒した。この瞬間にベイズの勝間の一発上がりの可能性が飛んだ。『牌を晒すは焦りのしるし…』『微博(中華版ツイッター)』『发推(ツイート)』し、冷静さを取り戻したベイズの勝間は、マチルダが数字牌だけ並べて役を作ろうとしていると思い、AI雀卓に『このゲームは喰いタンありなのか?』と質問した。

 するとAI雀卓は『アリアリアリアリアリアリアリ~。アリーヴェデルチ!(さよならだ)』と、このゲームが、喰いタンあり、後付けありルールだと説明したら、きのこみやさんが乗ってこないはずがない。 

 AI雀卓のアリアリアリに触発されたのか、刑務所上がりのホリエモンの背中から、何か煙のようなものが噴き出してきたのに気付いたマチルダは、ホリエモンと胡椒くんとベイズの勝間をツンとした表情で見下して、『あンたら背中が煤けてるにゃり…』と言った。

ホリエモン『き、貴様らは俺の幽波紋(スタンド)♬Brain Damageが見えるのか!』
 
胡椒くん『まさか、俺のイカサマ専用スタンドの♬Comfortably Numbも見えるのか!』
※『ジョジョの奇妙な冒険』に登場するダニエル・J・ダービーのオシリス神や、テレンス・T・ダービーのアトゥム神とは一切関係ありません。
 
勝間『ふっ、どうやらここにいる雀士全員がスタンド使いみたいね。私のスタンドは金の亡者の♬Money。マチルダ、あんたのスタンドは何なの?』

マチルダ『スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う!ってのは、どうやら本当らしいにゃり。マチルダのスタンドは♬Have a Cigar。マチルダが好きなバーボンと煙草じゃなくて、スコッチ葉巻が好きなスタンドにゃり』 

 雀士全員がピンクフロイドの名曲のスタンド使いなのに♬Shine On You Crazy Diamondがいないのは、このスタンド名を使うと東方仗助のスタンドのクレイジー・ダイアモンドと被ってしまうからなのか…。荒木飛呂彦はピンクフロイドが大好きだからな。 

 ピンクフロイドとジョジョの説明をしているうちに第一局は終盤に入り、ベイズの勝間が[13]を切ると、マチルダはデレっとしながら『デレ』と哭いて、[21] [144] [13]を晒し、手牌から[(‘ω’)]牌を切ったので、ベイズの勝間は堪らず『二つ晒せば全てが見える』と捨て台詞を吐いた。しかし、ベイズの勝間は内心では『何で[13] [21] [144]』が『デレ』になるのか全く理解できていなかった。初戦でトリプル役満の連続素数に振り込んだ恐怖から、マチルダが雀卓に晒している[34] [89] [55] [21] [144] [13]から、ベイズ統計でマチルダの手を読もうとしたが、勝間にとってこれらの数字は、単なる乱数であり、何の法則性も見いだせなかった。

 鈍才大学の梅尾泥作教授によって開発されたイカサマ雀士の胡椒くんは、流石に梅尾泥作教授が開発しただけあって、この場で数字牌を切るのはヤバそうだと気付き、数字牌ではなく自分が既に捨てている[NUL]牌を切った。
 
 その瞬間マチルダは『御無礼、ロンにゃり』と言い放ち、手牌を倒すと[1] [1] [2] [3] [5] [8] [233] に、いま胡椒くんからロンした[NUL]牌。
 
 この牌の並びを見た胡椒くん、ホリエモン、勝間の三雀士は口を揃えて『お前、それチョンボだぞ!』と言ったが、AI雀卓とマチルダは、そうは考えなかった。

 AI雀卓の判定は『トリプル役満です』だった。胡椒くんはブチ切れてガソリンに手を掛けていた。ホリエモンは『このAI雀卓壊れてるぜ』と言い、勝間は『なんでこんなバラバラなのがトリプル役満なのよ!』とAI雀卓に噛みついた。

 AI雀卓は『この役の規則性が分かりませんか? マチルダの牌をよく見てください。このゲームでは、[NUL]牌は[0]を意味するので、[0] [1] [1] [2] [3] [5] [8] [13] [21] [34] [55] [89] [144] [233]フィボナッチ数列でトリプル役満です。まともな電子頭脳だったらルール説明で、数字牌が [1]~ [233]と聞いた時点で、フィボナッチ数列新中華麻将だって気が付くでしょう?』

 一局目にして胡椒くんのハコ割れで勝負は終了した。

 マチルダは二勝目を祝って、バーボンを飲干し煙草を吹かした。なぜなら、バーボンと煙草が無ければこの小説の題名が成り立たないからだった。
 
付録:なぜフィボナッチ数列が重要なのか?
 
 フィボナッチ数列はコンピュータ・サイエンスや、AI分野のみならず様々な分野で、頻繁に使われています。

アルゴリズムとデータ構造:フィボナッチ数列は、再帰アルゴリズムの理解や性能比較を学ぶための一般的な例として頻繁に使われます。また、フィボナッチ数列を利用したヒープ構造(フィボナッチヒープ)は、グラフの最短経路を見つけるアルゴリズムなどに応用されます。

動的計画法:フィボナッチ数列は、動的計画法(問題をより小さい部分問題に分解して解く方法)の練習問題としてよく使われます。動的計画法によりフィボナッチ数列を計算するアルゴリズムは、メモ化やテーブル化といったテクニックを学ぶのに適しています。

機械学習とAI:フィボナッチ数列や黄金比は、最適化問題を解く際の初期値や探索戦略を定めるのに使われることがあります。例えば、勾配降下法の一種であるフィボナッチ探索法では、フィボナッチ数列を用いて最適な探索範囲を定めます。

自然言語処理 (NLP):フィボナッチ数列のパターンや規則性を把握する能力は、AIが複雑なパターンや規則性を学び取ることの重要性を示しています。また、NLPの分野では、フィボナッチ数列の一部をテキストとして生成し、AIの言語生成能力を評価するのに使われることがあります。

神経ネットワークとディープラーニング:一部の研究者は、フィボナッチ数列や黄金比が、ニューロンの接続パターンや活性化関数の選択、ネットワーク構造の設計などにおけるインスピレーションを提供することを提唱しています。ただし、これらのアプローチはまだ初期段階で、その有効性や普遍性はさらなる研究が必要です。
 
 以上のように、フィボナッチ数列はそのユニークな特性から、コンピュータ・サイエンスやAIの分野でも、幅広く利用されています。
 
フィボナッチ数列と哲学について
 
 フィボナッチ数列は数学的に特別な性質を持つだけでなく、その独自のパターンと自然界での出現頻度から多くの哲学的な考察を生む基礎にもなっています。

自然と調和:フィボナッチ数列は自然界の様々なところに見られます。例えば、花の花びらの数、パイナップルの鱗の配置、貝殻の螺旋、ツノの成長パターンなどにフィボナッチ数列が見られます。これは自然界の『調和』『秩序』を表していると考えられ、この自然の美学や秩序性を理解するための一つの鍵とされています。この観察は、自然と数学の関係、そしてそれらがどのように調和しているのかという哲学的な問いにつながります。
 
無限と完全性:フィボナッチ数列は無限に続く数列で、その中に黄金比という比率が隠されています。黄金比は『最も美しい比率』『完全性の象徴』と見なされることがあり、これは無限と有限、完全性と不完全性、変化と恒常性といった哲学的なテーマとつながります。
 
東洋哲学とフィボナッチ数列:フィボナッチ数列は、東洋哲学で重要な役割を果たす『陰陽の原則』と関連があります。すなわち、フィボナッチ数列の各項は、前の2つの項(『陰』『陽』)の『調和』『統合』から生成されます。これは絶えず変化し続ける宇宙の法則や自然界のリズムを象徴するものとされ、東洋哲学の視点から解釈されることがあります。
 
生命と進化:フィボナッチ数列は生命体の成長パターンや進化の法則と関連付けて考察されることがあります。これは生命の起源や進化、生物の多様性や複雑性といった哲学的な問いにつながります。

 これらの要素から、フィボナッチ数列は哲学的な探求の一部として利用されてきました。しかし、これらの解釈や関連性は、その視点や理解により異なるため、絶対的な真実として受け取るのではなく、あくまで一つの考察の道具として捉えることが重要です。

 数学はSDGsが流行ればSDGsを語り、コロナが流行ればコロナを語り、AIが流行ればAIを語るマルクス・ガブリエルのような軽薄な哲学者には関係のない話ですが、アラン・チューリングのような偉大な数学者は、暗号研究者、計算機科学者だけでなく、哲学者としても有名です。数学と哲学は非常に相性が良い学術分野です。 

つづく…

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