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【麻雀牌 ついに来た!!その名は『任天堂 役満 新象牙』】

5月頭、その時は突然に訪れた。ついに私の手元に例のブツが届いたのだ。例のブツとは何か、そう麻雀牌である。

私の麻雀牌蒐集は佳境に突入しており、今回手にしたのがその最後であると言っても過言ではないだろう。
ここまで、約30年前の背黒牌から始まり、約40年の竹牌、約50年前の未開封竹牌、果ては最新のアモスマックス、それに続くようにミズノ丸一製の『玄海』『昭和』と欲しいと思える麻雀牌を集めてきた。
今回手に入れたのはその中でも断トツの定価を誇り、他の麻雀牌とは明確に異なるビジュアルに仕立て上げられた麻雀牌なのである。


私の麻雀牌蒐集の一区切りとしてのラストピースを飾る、それこそが『任天堂 役満 新象牙』である。

概要

その名からわかるように、この麻雀牌は任天堂製のものとなっている。
任天堂(Nintendo、あるいはニンテンドーの方がわかりやすいか)といえば、現行のNintendo Switchをはじめとした日本のゲーム業界の一端を担う企業である。その歴史は1889年に山内房治郎が京都市下京区にて花札の製造を始めた所に遡る。
トランプの製造販売により徐々に頭角を現した任天堂は、1963年に現称号である任天堂株式会社へと社名を変更し、1964年(昭和39年)に麻雀牌の製造を開始する。

任天堂が製造した麻雀牌の中で、最も多くの割合を占めたのがそう「役満」シリーズである。「役満」シリーズは現行販売品の名称元となっている『役満 鳳凰』や、特に人気の高く雀鬼にも用いられた『役満 特重』、普及牌である『役満 役満』などさまざまな製品を展開しているが、今回手にしたのはその中の1つということであり、その中でも高級路線の製品である。

また任天堂は1976年(昭和51年)を最後に2013年まで麻雀牌の製造を行っていないので、現行商品の『任天堂 役満 鳳凰(新)』を除けば、任天堂製の麻雀牌は全てその12年の間に製造されたこととなる。

今回は(というか今回に限らず基本的に入手するものは)中古品となっている。未開封の方がプレミアがあるのは理解できるが、私の性分として未開封状態のものは絶対に開封しない上で、手に入れたものは手触りや感触などを楽しみたいと感じるのであえて中古品を購入している。また前の持ち主の面影が見えるのも骨董の楽しみの1つだろう。
さて、長々とした前置きを踏まえた上で牌の基礎データおよび外観の写真をご覧いただこう。

基礎データ

材質:樹脂(おそらくユリア樹脂)

サイズ://縦24.0×横17.0厚さ14.0mm

重さ:約15g

ケース
材質:別珍

色:ブラウン

点箱:同上

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前回の『昭和』を購入した際も思ったが、美しい。
しかしそれだけでは、この牌の魅力というものを十分には理解していただけないと思うので、まずはこの「新象牙」という牌の解説からしていこう。

新象牙とは

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結論から言えば、「新象牙」とは象牙とはなんの関係もない、ただの合成樹脂のことである。
彫り物材料の代名詞であり最高級品といえば象牙なわけであるが、新象牙はその象牙を擬似的に再現した代替品であるといえよう。
麻雀牌においても当然象牙製のものが珍重されているわけであるが、象牙が非常に高価なのは言うまでもない。そこで昭和初期には、早くも合成樹脂による象牙に似せた牌が何種類も製造されたという。
象牙牌の特徴といえばなんと言っても、牙が成長する過程でできる年輪のような薄い縞模様だろう。新象牙はそのような象牙のもつ特徴を合成樹脂によって再現している。とはいっても、いずれも象牙製の真贋に影響を与えるほど精緻なものというよりものではなく、あくまで似せられた製品がほとんどであり、個人的には蟹とカニカマの関係に近いと感じている。
つまり、象牙と錯誤させるような意図をもった模造品ということではなく、象牙のような高級感を持った製品であるということである。


さて、この『任天堂 役満 新象牙』ではその名の通り上記の特徴を有しているわけであるが、美しさの秘訣はそれだけに留まらない。

スリートーン牌とは

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そのもう一つの答えは「役満」シリーズにおける特徴であるスリートーン牌である。スリートーン牌とは樹脂の三層構造により竹目模様を再現した牌のことである。
新象牙が牌の腹側の部分の象牙の再現であるならばスリートーン牌は牌の背側の部分の竹の再現なのである。この特徴は現行販売品の『任天堂 役満 鳳凰(新)』にも受け継がれている任天堂ならではの特徴であると言える。


以上が大きくメインとなる牌の持つ特徴である。改めて写真を見ていただければと思うが、精緻に彫られた腹側には透明感と艶のある白の間に明度の高い力強さのある白が挟まれることで、えも言われぬ上品さと他にはない高級感を感じずにはいられない製品となっている。
また牌の噛み合わせ部分が凹凸型になっているのも個人的にはポイントが高い。

ここからは写真を交えて個人的に気になったポイントを解説していく。

詳細と解説

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筒子
デザインはスタンダードなものとなっている。任天堂麻雀牌の代表とも言える亀の柄の一筒は採用されておらず、一般的なものとなっている。

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萬子
こちらも一般的なデザイン。また全体を通してのデザインは関西書体が採用されている。

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索子
一索はスタンダードなデザイン。他の牌は上下がないタイプのデザインが施されている。個人的にはそちらの方が好き。

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字牌
関西書体のもつ整ったフォントが美しい。赤五筒の中央にはガラスが埋め込まれている。またこの時代には赤五萬・赤五索は存在していないため付属していない。

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付属品
『役満 新象牙』は当時の高級路線でもあるため、付属品も充実している。4種のチップは厚みのあってシンプルなデザインで、中央には任天堂のNが刻印されている。またなんといっても特徴的なのはこのチップタイプの起家マークだろう。日本では一般的に四角い物が多い中、白地に金の高級感ある意匠となっている。(中国ではチップタイプのものも少なくないらしいが、なかなか手に入れられなかったのでこれも購入の決め手になっている)
点棒は一般的なものだったので割愛。

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付属品2
まず目に飛び込んでくるのは算盤用と書かれた滑らし粉だろうか。私の確認する限りではな他の同製品にはないものだったので前の持ち主が牌の滑りをよくするために用いたものだと思われる。麻雀牌に算盤用の滑らし粉を用いたことはないので効果の程はわからないが、個人的には数回使用したら洗牌を行えば十分だと感じるがそれがめんどくさかったのだろうか。
「役満のしおり」の中はいわゆる点数計算表となっており、特筆に値するものではないと思うので省略。
得点記録表には前所有者の名前だろうか「牛尾」「飯野」「???」「坂口」とプレイの後が筆圧で残っていた。果たして最後に使われたのはいつだろうか、平成、あるいは昭和か。

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牌の状態としては使用感のある美品、といったところだろうか。元々任天堂の牌は背が割れやすいと言われていたが、私の手に入れたものは背面に小傷はついているものの大きな傷はなかった。また、牌ケースの背面にはシリアルナンバーらしき番号が付されていた。

終わりに

以上が『任天堂 役満 新象牙』であった。
今回もデザインやそれ以外の要素について話したので、打ち心地や使用感といったレビューはほぼしていないが、そちらもかなりハイクオリティな仕上がりになっていると感じた。(これ以上傷つくのが嫌なのでそんなに触っていないが)
重さ、大きさ、デザイン、どれをとってもハイクオリティだが、その上品で繊細な高級さは非常に所有欲の満たされる製品であると言わざるを得ない。

これにて私の麻雀牌蒐集は1つの終わりを迎えることとなる。
麻雀牌という美しい工芸品の、その一端に触れることができて非常に楽しかった。まだまだ知らないことも多く、蒐集したモノたちの本当の価値を完璧に理解したとは言い難いが、本来であれば失われるはずった所有者の記憶を私が少し引き継ぐことはできる。
モノの力というのは本当に面白い。それを最後に本記事を締めくくろう。

ご覧いただきありがとうございました。

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