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和食を作りたいなら料理をするな。(part1)


私はよく若い衆にこう言うんです、’’料理をするな’’ ’’素材から味が出るのだからそれを活かしなさい’’ また、濃い味付けや素材の芯にまで調味料が染み込んだ料理に対して、調味料を食べているのか、素材を食べているのかわからない、という言い方もします。

会席料理において大切なことは3つあります。
1、旬の食材
2、素材の味を生かす
3、おもてなし


実は美味しい=素材の味を必ずとも活かしているとは言えません。なぜなら素材の味を活かさなくても、旬の食材を使わなくてもソースの味で美味しいは作り出せるからです。ですが、和食において一番大切なことは ’’素材の味を生かすこと’’ よく聞く言葉ですが、なかなかに奥が深い言葉です。この料理をするな という言葉の内実は素材の味をもっと活かしなさいよ、ということです。だから、味を重層的に重ねて複雑な味を無理して作らなくて良い。新鮮で安全な素材なんだから少し塩つけて食べるのが一番であると。であるとしたら、料理人の存在価値はどこへ?という疑問が湧いてきます。ただ、毎回素材と塩は人間、飽きてきてしまうのでちょっとした味の変更や素材の組み合わせの変更というのが必要になってくる、というわけです。
 さて、今回は分けとく山の野崎洋光という僕が尊敬する和食の料理人の頭の中を全て公開した本です。僕はお気に入りや好きなところに付箋を貼ったり、書き込みをします。付箋や書き込みが多ければ多いほど僕が感銘を受けた本であるということです。なんと、この本には付箋が30箇所ほど付いており、控えめに言ってもとても素晴らしい本でした。料理人の哲学、食材、t料理法など料理全体のことがくまなくカバーされておりました。この本を手に取った動機は、’’ the 和食’’ の料理人の哲学やマインドセットを自分の脳にそのまま埋め込みたかったからです。これがこの本を手にした理由です。この本は内容がびっしりなので3つのパートに分けたいと思います。

パート1 哲学・だし・ごはん
パート2 食材
パート3 プラスα

はい、それでは今回は パート1 哲学・だし・ごはんのみ見ていきましょう。

▽哲学

・哲学について

 イントロで触れた通りに日本料理において最も大切な考えや価値観は素材の味を生かすこと。日本や山や海があり美味しくて豊富や食材に恵まれてきました。よって、ソースで味を足さなくても、ちょっとした味付けで美味しくいただける素地があったという地理的な背景があります。また、本物の味を知るためにはどうしたら良いか?一番簡単な方法は食べ比べです。仙台産のナスと関西産ではどう違うのか、また産地は同じ県でも農家でどう違うのか。そういった違いを知るために食べ比べという方法がとても役に立ちます。日本食は一汁三菜という考えがあります。濃い目の煮汁の金目鯛とごはんをほおばる。濃い目のノリの佃煮はご飯が進む、その後にお味噌汁を飲む。実はこれ口の中で何が起きているかというと、口内調味と言って、口の中で塩分濃度を調節しているのです。濃い煮付けや佃煮はそれ単体で食べると少し強く感じます。しかし、ごはんを食べることによって、その塩分濃度のバランスを保っているということです。また人間は0.8%の塩分濃度を心地よく感じるようになっています。おわん一杯のだしに対して大さじ半分の味噌で大体0.8%になるそう。

・家庭料理が料理の基本である

 家で食べるご飯とレストランで食べるご飯はそもそも全く違うものです。


家/見た目よりも実をとる   店/見た目重視
 /できたて          /提供は作ってから時間がある
 /日常            /非日常
 /健康第一          /おしゃれで華やか


このように家庭料理とお店の料理は似て異なるものです。毎日こってりとしたコースのフレンチ(=厚化粧した料理)を食べていると胃も疲れます。やはり日常的に食べるものはシンプルで簡単で健康で美味しいものの方がよろしいのではないでしょうか?

・塩焼きで食べるか、照り焼きで食べるかの違い

塩焼きか、照り焼きか。日本の料理と西欧料理の違いは前文で表すことができます。日本料理は素材の味を存分に引き出し、繊細な味を生み出す。対して、西欧料理は素材を重ねて、複雑な味を作り出す。なのでフランスのソース文化はとても素晴らしいものです。背景には流通の問題がありまして、食材に恵まれなかった場所では流通が悪い時代は良い食材があまり手にはいなかった。なので、そこに味を足して、ソースをつけてマスキングする必要性があったのではないか?ゆえにソース文化が発達したと。なかなか面白いですね。日本がもし、島国ではなく大陸に囲まれていたら、世界有数の肉国となっていたのでしょうか?地理的環境が与える影響は食文化に大きく関与してきます。

▽だし
・だしは適材適所

ちなみに出汁は一度取ったらどのくらい保存できるのでしょうか?だしは香りが命なのでその日に使ってしまうのが理想です。現実的には3日程度ではないでしょうか。良い出汁というのはどのようなものでしょうか?良い出汁というのは喉をスーーーと通り香りがふわっとくるもの。飲んでいて心地よいものです。
 

・どんなタイプがあるの?

 出汁には大きく4つの種類があります。濃い順から並べると

・煮干だし
・一番だし
・二番だし
・昆布だし
 

 出汁というのは全ての料理に使えばおいしくなる!というわけでも実はないんです。出汁も人間と同じで適材適所ということです。例えば、豚汁には水で作るか、出汁で作るかどちらでしょうか?答えは水で作るです。(好みで忍ばせ昆布をする)なぜなら野菜や肉から旨みは出ます。また調味料である醤油や味噌は旨みの宝庫です。つまり出汁に頼る必要がないのです。ではどんな時に出汁を使うのでしょうか?例えば、椎茸の白和え。椎茸自体に旨みがありますが、椎茸を霜降りして、出汁を使った八方出汁 出汁を8、みりん1、薄口醤油1 を煮立たせてから椎茸を浸す。その後に、豆腐を裏ごししたものにゴマを加え白和えを作る。この出汁を染み込んだ椎茸の白和えは香りも良く素晴らしい逸品です。つまり、作る完成系の料理が素材からの旨みがたくさんある場合は出汁が必要ないですが、素材からそこまで旨みが出ない時は出汁を使う。と、大まかではありますがそんな使い分けをしています。その中でも、上記の4つの種類の出汁を使い分けます。煮干出汁は強いので、素材が弱い時。一番と二番は万能出汁です。昆布出汁は素材の旨みが強い時に使ってあげる。そのような考えです。

 だしというと一番最初に思いつくのは昆布と鰹節です。昆布には旨み成分であるグルタミン酸と鰹節にはイノシン酸があります。この旨みは味覚の中でも一番余韻が長く、じんわーりと舌の奥の方で感じることができます。実はだしは意外と簡単で経済的でもあります。昆布は水に一晩つけておくだけでも昆布だしは取れます。

・味噌

少し派生してしまいますが、味噌とは豆の発酵食品です。こちらも醤油と同様に旨み成分が豊富です。原材料は主に、麹・豆・塩です。分類は3つの側面からできます。 
〜原料による分類〜
・米味噌
・麦味噌
・豆味噌

マルコメ株式会社によると、80パーセント以上もの味噌は米味噌であるそう。よって、米味噌が主流。
https://www.marukome.co.jp/miso/

味噌と出汁の関係はどのようなものか。

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実は八丁味噌のように米麹が少ないものは出汁で補ってあげて、すでに米麹がたくさん含まれていて旨み成分がたくさんある白味噌などは特に出汁が必要でなく水で良いということです。味噌選びに関しては、地元の米味噌、それから豆味噌、甘めの白味噌と3つの種類を持っていればどんな料理にも使い分けることができるのではないかと思っています。



〜味による分類〜
・甘口
・辛口

〜色による分類〜
・赤味噌
・淡味噌
・白味噌

▽ごはん
・α化は95℃で20分以上の加熱

お米は乾物です。乾ききっています。なのでふわふわに柔かく可食するためには加熱が不可欠です。でんぷんのアルファー化をするためには95℃で20分以上加熱することが条件であります。え、じゃあ20分でご飯炊けるじゃん!と考えてしまう自分がいます。味にこだわるならば、浸水と蒸らしの工程が必要であります。

・米の炊き方はスリーセブンゴーゴー


この謎の数字のカタカナは時間を表しています。はじめチョロちょろなかぱっぱ、赤子泣いても蓋取るな、なんてことわざがありますが、当時はかまどで火入れをしていたなどという技術革新の側面で大きく違うので、今の時代に必ずしも正解であるとは言えないでしょう。何を言いたいかというと、やり方はいくつもあり、全てが正解であり、自分の好きなやり方を見つけたいということです。それでは土鍋でご飯を炊いていきましょう。まずはお米を洗います。そしてその後に浸水・ザル上げを15分ずつ行います。その多めが水を吸っている状態を洗いゴメと言います。これで準備万端です。まず土釜に洗いゴメ(浸水・ザル上げ後)を入れてそのお米と同量もしくは気持ち少なめの水を足してあげる。蓋をして加熱していきます。

7分、沸騰するまで強火、
7分、中火
7分、弱火 
5分、ごく弱火
5分、蒸す

実はこのような簡単なプロセスで美味しい土鍋でお米が炊けます。一つ目の5で95度以上で20分の加熱を行っていますでの米のアルファー化は済んでいるので可食状態と言えます。


・炊き込みごはんの作り方

先ほどの説明で米と同じ量の水に対して、え、1.2倍じゃないの?と不思議に思われ人がいるのではないでしょうか。実は浸水をすると水分をその0.2分吸うので足すときの水分量が異なるという話です。炊き込み御飯のポイントは液体の割合と具材を入れるタイミングです。それではサツマイモと豚肉の炊き込み御飯を作りましょう。液体の割合は10:1:1 (水;薄口醤油;酒)です。例えば3合のご飯(540ml)に対して、水450ml、薄口45ml、そして酒を45mlです。おわかりいただけるでしょうか?液体の合計=お米 になっています。そして具材は3つ。サツマイモ、豚バラ、わけぎ(ネギ)です。具材を入れるタイミングは硬い食材は最初に、普通の食材(火を通しすぎたくない食材)は3つ目のセブンのタイミングで途中に、生でも食べられる食材は最後に。それぞれサツマイモは最初に、お肉は3つ目のセブンで、わけぎは最後に入れてあげます。そうすれば、土鍋でサツマイモと豚肉の炊き込み御飯がおうちで作れちゃいます。以上のような考え方さえ習得しとけば、食材の変数を変えたりしても応用は無限大です。

▽最後に

以上です。いかがでしたか?みなさんはどんな炊き込み御飯が食べたいですか?コメント欄にて食べたい炊き込み御飯を教えてください!作ってみたいと思います。

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