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行ってきます帰りの時間はわからないわたしだって何かあるんだ 平岡あみ

歌集『ともだちは実はひとりだけなんです』
短歌・平岡あみ 解説・穂村弘 絵・宇野亜喜良 
2011 ビリケン出版
 

12歳から16歳までの歌。
けれども、いわゆる「子どもの歌」ではない。
母と暮らし、父とは別々に暮らしているという環境からか、
この作者の思索は俗に転ばず、深い。

壁に穴あのときわたしが開けたのは捨て子扱いされたからだ

真夜中に母がガラスを割りましたけんか相手はわたしでした

壁に穴を開けるのは 本来いけないことだ。
けれども、壁の穴と 捨て子扱いされることは拮抗している。
捨て子扱いなんてされたら いやだし、
いやなのを黙っていたら だめだ。
怒りで壁に穴をあけてしまったことも仕方ないなあと思ってしまう。

ガラスも同じ。ガラスが割れるほどのけんかなんて 絶対だめ。
けれども、よかったな。とも思う。

気にくわないことがあったら口にして、けんかができるということ。
それは、この関係が一方的なものではないということだろう。
(つづく)



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