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母乳はあげてることにする

息子が、おっぱいを全力で嫌がる。

このことに私はものすごく焦って、悩んで、落ち込んだ。
子どもが生まれると、ママ達は
「母乳オンリーで育てるか、粉ミルクオンリーで育てるか、混合で育てるか」の選択をすることになる。私は「混合」で育てようと決めていた。

ところがどっこい、
息子は産後数日からすぐにおっぱいを飲みたがらなくなってしまった。

なんでなんで。おいおい、吸ってごらん、吸ってごらんよぉと怪しい声掛けをしながら何度も自分の胸に息子を押し当てたけど、その度に「うぎぃ!」「うぎゃあ!」と顔を真っ赤にして泣いて、こんな小さな身体のどこにそんな力があるの、と驚くくらいに強い力でのけぞる。

おっぱいを嫌がる理由は赤ちゃんによって色々あるようで、「おっぱいが吸いにくい形をしている」というのが原因の一つにあるみたいだけど、
入院中どの助産師さんからも
「ママさん(※私)のおっぱい、形も柔らかさもすごくいいですよぉ〜」
と褒められたので私と息子の場合これが原因ではないらしい。まるで「108号室でおっぱい品評会やってます」くらいの勢いで助産師さんを次々と部屋に呼んで、胸をぎゅっと掴んで見てもらったのだから間違いない。もはや恥じらいは全くない。

息子がおっぱいを嫌がる原因は、「哺乳瓶でミルク飲む方が楽やん」と生まれて早々に気付いてしまったからのようだ。

「これは賢い証拠ですよ〜」と助産師さん達はフォローしてくれたけど、全然喜んでいる場合じゃなかった。
いや、そりゃ賢いのは嬉しいけどさ、はやく何とかして軌道修正しないと、どんどん息子は母乳飲まないことに慣れてしまうし、私の身体も母乳が出なくなってしまう、、なんて私はとにかく焦っていた。
ちなみに夫は「やっぱり◯◯(息子)は賢いのかぁ〜!うんうん、父ちゃんは頼もしいぞぉ」と純粋に喜んでいた。気楽で羨ましい。

そもそもなぜ母乳にこだわるのか。
「母乳からはお母さんが持っている色々な免疫を子どもにあげることができる」と聞いていたので、どうしても母乳育児を諦めたくなかったのだ。
コロナウイルスだって、私がワクチンを打っているから、母乳を飲んだ息子にも抗体ができる。
丈夫な子に育ってほしいという母としての願いが私を母乳育児に固執させていた。

そんな訳で出産から約1ヶ月半、毎日おっぱいを嫌がる息子と戦った。

おっぱいをあげようとすると「うぎぃぃ!」と声をあげて激しく泣いてしまう息子だが、
10回に1回くらい、「うぎぃ…うぎぃ…(訳:ちくしょう…ちくしょう…)」と言いながら悔しそうにおっぱいを飲んでくれる。なんかごめん…と切ない気持ちになるけれど、この10回に1回の授乳のために戦い続けた。

けれどこれを何日も何日も繰り返していくうちに、さすがに私も「息子に嫌がらせをしているみたい…」と心苦しくなってきて、産院で助産師さんに息子のおっぱい嫌いについて相談することにした。

最初は「わかりました!色々試してみましょう!」と自信満々にあれこれ提案してくれた助産師さんだったけど、どれもこれも「うんぎぃ!」と息子に激しく却下され、1時間色々と試した末に「もう、粉ミルクあげましょうか…」と疲れ切った顔で言われた。なんかすみません…と今度は助産師さんに申し訳なくなる。

結果として助産師さんからは「この子はすごく意思が強いので、母乳をあげようとし続けるのはお母さんにとって相当なストレスになるのでやめた方が良いかもしれません」と言われ、ようやく私も諦めがついて母乳をあげることをやめた。
この日は息子も泣きつかれたようで、たくさんミルクを飲んだ後、ぐっすり眠っていた。
もう、飲んで育ってくれるなら何でもいいや。


近所を息子と散歩していると、年配の女性から「母乳をあげてるの?」と聞かれることがある。(おばあちゃん達はなぜか挨拶のようにこの質問をしてくる)

私は「あげてますよー!」と答えることにしている。

母乳をあげることへの執着はきっと昔からお母さん達が経験してきたもので、ついつい小さな赤ちゃんを連れている母親を見ると懐かしくなって聞いてしまうのだろう。

そんな時は相手の期待通りの子育てをしている風を装って、さらさら〜と受け流すのが一番だ。

母乳は、あげてることにする。

それから、「夜泣きで眠れないでしょう?」と懐かしそうに聞かれることも多いので、
息子は夜泣きしていることにしている。

実は息子は夜中にお腹がすいて数回起きるけど、ミルクを飲んだらすぐに眠ってくれることがほとんどだ。
昼と夜の区別が早々についているみたい。
やっぱり、賢いのかもしれない。






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