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見えないものと戦う日々 ~大事な事を見失わないように~

コロナウイルス感染の流行によって私の職場環境は目まぐるしく変化している。100床ほどの小さな病院に看護師として働いている、毎週のように上司や重役たちの感染会議・・・方針がどんどん変わり入院している患者さんの環境も変化していった。

毎年冬から今くらいの季節はインフルエンザや多くのウイルスが活発に活動している期間。感染の状況により対策を行っているけど、今年はちょっと訳が違う。働く職員は勤務する前に体温測定を義務とし、37.0℃以上の職員は自宅待機、37.5℃以上の職員は速やかに病院受診を余儀なくされている。同僚の看護師さんは謎の発熱が1週間以上続き、病院受診しようとするもどこにも受け入れてもらえずたらいまわし状態。出勤できず発熱の原因もはっきりしない中「出勤できない申し訳なさと、解熱しない不安でどうにかなりそうでした」とのことだった。結局のところは抗生剤が効いて解熱、今は元気に働いている。(ウイルスでの感染症は抗生剤投与では軽快しない。効果があったという事は何らかの細菌感染だったのだろうという解釈。)それでも病院で働いている人たちは自分が媒介者にだけはならないよう感染予防の徹底をし毎日張り詰めた思いで患者さんと向き合っている。ベースの病気を抱えながら療養している患者さんたちは穏やかに入院生活を送っていても病原菌が体内に入ったのならひとたまりもない。
私の勤務している病棟は多くの患者さんが何らかの癌を患っている人達ばかり。

もしコロナに感染してしまったなら・・・想像すると恐ろしさでしかない。


今回のコロナ流行の日々で数年前の事を思い出した。

私が総合病院で働いていたころ勤務する病棟でノロウイルスが集団感染してしまった。最初に感染した患者さんの同室者が次々に感染してしまったのだ。患者さん全員が寝たきりの方で感染経路を追っていくと介助者側である看護師がうつしていったのではないかという結論に至った。感染委員これまで以上の感染予防をと強く言及された情景が脳裏によみがえる。1人の感染者が出た当時から事細かな感染対策を計画し徹底していたつもりだった。だからこそより一層介助するほうは神経をとがらせて患者さんに触れていた・・・

なのに感染してしまう。

病原菌は目に見えない、だからこそ厄介で精神的に追い込まれる。

病院経営にとって院内感染はあってはならない事態であり、シビアな指導や叱責を頂く。このころの私は病棟でリーダー的な存在であり精神は落ち込み、出勤するのさえ怖かった。ノロウイルスは7名の感染まで拡大し、終息していった。

感染症の恐ろしさを知った経験、あまりいい体験ではなかった。


現状、皆さんの置かれている状況も同じなんだと思う。発熱や明らかな症状がなくても感染している人もいて、誰が感染しているかもわからずびくびくして外出する日々。終息するというゴールが見えない不安。

災害や病気を乗り越えるということはそういう事なんだと改めて考えさせられる。



多くのスーパーではマスクや手指消毒薬、ハンドソープの売り切れが相次いでいる。病院でもマスクなどの新規搬入予定のめどはなく、少ない在庫で賄っている現状。最近は使用済みのマスクを洗濯、消毒して再利用し職場で使っている、以外と抵抗はなくなった(笑)

感染者の増加を知らせる毎日のニュース。見れば見るほど、知れば知るほど気分は落ち込む。それでも見ずにはいられない、情報収集は必要だから。有名人の感染でこの状況は幻想ではないのだと再確認する。できれば夢であってほしいのに・・・。

連日、感染しない対策だとか専門家の意見などテレビやネット検索すると挙がってくる信憑性が謎の情報。

飲食店やレジャー施設で働く人達の労働時間の縮小。不要不急の外出、先の見えない未来・・・。激しく動揺し何が正しいのか、どうしていけばいいのかこの生活が長くなればなるほど我を見失ってしまう。


熊本地震が起きた当時パニックになりあてもなく車を走らせた。空いている飲食店では生活必需品が品薄になり、24時間空いているコンビニも臨時休業していて市内でも夜は真っ暗になっていた。

”これからどうして生活したらいいのか”

不安で押しつぶされそうになった。見通しのつかないライフラインの普及、当たり前にしてきた洗濯さえできない、お風呂にも入れない。やりきれないストレスで泣きながら母に電話したっけ。

そんな中、近所の知り合いや職場の同僚と助け合いながら普通の生活を取り戻した。人と人とのつながりがこんなにも温かくて安心するのだと気づけた。

こんな殺伐とした状況の中で、自分が出来る予防をしながら近くにいる大事な人達と協力し合いながら乗り越えていくしかない。

きっと目に見えないものとには目に見えない思いで戦っていくしかないんだと・・・。

最後まで記事を読んでくれてありがとうございました!