花譜「不可解」について 雑記

※今現在の自分を整理するための雑記・雑感であって、のちのちきちんと整理してまとめるつもりです。
ただ、書かないとダメだという感覚だけが今、あります。

1.作品としての「不可解」

「不可解」でもっとも際立ったものはずばり【演出】そのものだと思う。
つまり、バックスクリーンに情景が、真ん中にバンド隊と花譜が、そして前面スクリーンにクリエーターによる歌詞をつかったアニメーションCG群が流れていく。
この前面スクリーンに流れてくるアニメーションが結構な曲者で、ややもするとバンド隊や花譜を食ってしまう。

いや、食っていいのだ。なぜなら、この3つの装置がすべてでもって「不可解」のステージなのだから。つまり、花譜を中心とした、「ライブ」ではなくて「作品」なのである。

2.「作品」とはどういうことか。

普通、バンドライブといえばギター・ベース・ドラム・シンセの楽器隊と、ボーカルをメインとした構成になり、必然ボーカルが主役となる。
というか、Vtuber/Vsingerにおいて、基本的に彼女らは「歌う」ことがメインなのだから、彼女らがメインでなければならない。それは、キズナアイがDJでライブをするように。「ニコ超」や「TUBEOUT」でそうであるように、彼女らは伴奏があり、それに合わせて歌う彼女たちを楽しむのがライブである。

一方で、「不可解」は、もちろん花譜を中心とするものの、「主役」としない。言い換えれば、花譜は「不可解」ステージの中心であり、一部である。私のフォロワーの意見に、「目がいくつあっても足りなかった」という意見があったが、その通りである。様々なグラフィッカークリエイターたちによって編み出される、様々な演出を伴った映像の変化、そして花譜のその全体がひとつのまとまりなのである。

歌詞を流すとか、文字列を音楽に合わせて動かすようなMVは、私の知りうる限り、VOCALOIDのMCでは多用されている。例えばRyuuuuu氏の"secret"につけられたMV

あるいは、「パラジクロロベンゼン」

フォントやカリグラフィーを用いたアートは珍しくはなく、そして花譜の場合、グッズとして糸をイメージした「糸」デザインのTシャツがあった。
そして、このMV群と同じような手法を生で(ライブで)とりこんだのである。
そういう点で、ひとつ「作品」である。

そしてもう一つが「展開」。曲目リストを見てみよう。



忘れてしまえ
雛鳥
心臓と絡繰



エリカ
未確認少女進行形


うつくしいひと(リーガルリリー)
五月雨(崎山蒼志)
死神(大森靖子)


祭壇
魔女


quiz
夜が降り止む前に(remix)


夜行バスにて
過去を食らう


御伽話(ドオヴォルジャーク、朗読)
神様(東京ゲゲゲイ)
命に嫌われている


-衣装⇒星烏-
不可解
そして花になる

便宜上、8つに区切らせてもらった。

OPはどこかの宇宙から、遡行するような奔流を経ての花譜による朗読「少女降臨」。

①は見ての通り、花譜の代表曲が集まったステージである。つまり、「これまでの花譜」である。おそらくここを望んできた観測者(共犯者)は多かったんじゃないだろうか、というか私は「忘れてしまえ」「雛鳥」はもっと盛り上がる真ん中~後半くらいに置いてくるんじゃないかと思っていた。

②はどちらも新曲。ポップ系で、特に未確認少女進行形は80年代アニメOPのようなMVとともに表現された(〈物語〉シリーズ「恋物語」特殊OP「木枯らしセンティメント」を思い出した人は多いんじゃないだろうか)。ちょっと楽しいような、新鮮味のある場面。

③カバーゾーン。どれも花譜が好きな歌

④「祭壇」「魔女」は花譜の口から語られたように、対になる・相反する・連続する二曲。バックで流れていたイラストも、女神と魔女のような構成であり、神話的な要素が大きかった。どちらの曲調も重厚で、激しい。

⑤quiz(先行配信曲)、夜が降り止む前に(remix) どちらもテンションが上がる曲。

⑥テンションが最高潮になる部分。「過去を喰らう」では花譜が体を左右に振ったり楽しそうだった。

⑦アンコール後、急に重々しい空気で始まり、「実は違う世界から来たんだ」「だいっきらい」で締められた部分。さらに続く「神様」は花譜の生の歌声を殺すような、抑揚や響きを消した機械的な音の作り方(原曲もそう)。さらに低い、ローテンションな曲で「だいっきらい」からのこの曲でかなり沈み込んだ。そして「命に嫌われている」。やや明るめの節があった。

⑧新衣装お披露目。らぷらすが食ってからの「第一形態 雛鳥」からの「特殊歌唱用兵器 星烏」のやり方はシンフォギアだかTRIGGERアニメだかを思い起こすような、めちゃくちゃに高いテンションの映像。そして新曲。「不可解」はライブイメージソング。「そして花になる」は花譜イメージソング。
王道アニメの鉄則といえば「最終回はタイトル」

そしてエンドロール。「ハミングが聞こえる」はもともとはちび丸子ちゃんのOP。

こういった一連の「流れ」は一種の作品で、例にも挙げたけれど、アニメとか短編映画の序破急・起承転結に通じるものがある。特にアンコール後の絶望→衣装変更→勝利ルートはその典型じゃないだろうか。
樋口楓もKANA-DEROについて、「セトリは特にこだわった」と言っていたように、ひとつの大きな流れを作り出した構成になっているように思える。

3.多くのクリエイターたち

見ての通り、めちゃくちゃな人数のクリエイターが「私がつくりました」と宣言している。これは「不可解」のライブがたったひとりの少女の発現ではなく、多くのクリエイターたちによって協力して創り上げられた創作物なのである。その多くのクリエイターや技術者たち、そして花譜本人を含めたグループが「花譜」といえるだろう。

そして、だからこそ花譜はひとりの、実在する少女なのである。

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