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G20でも中国へ金融制裁

米ワシントンで開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では途上国の債務再編問題が重要な焦点になったが、この時期にこの問題が取り上げられたのは決して偶然ではない。


それだけ国際間で危機意識が高まっているといえなくもないが、国際情勢はまだリーマン・ショックのような1930年代の「大恐慌」以来の恐慌状態になっているわけではなく、それ以前の90年代後半のアジア通貨危機がロシア危機に波及し、米大手ヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)が破綻した際の危機的な状況にも現段階では至っていない。


通常、債務再編協議では安易に債務国を救済することで国際間でモラルハザードが起こることがないように、まずは債務の返済繰り延べ(リスケ)で対処するものであり、それでも返済に行き詰まるようなら利息の減免にその対象が移行していく。


ところが、今回のG20会議では返済繰り延べが議論の対象になることはなく、いきなり債務の減免--すなわち、一定部分の債務の“帳消し”が対象になっていたのです。


よく債権国側が“気前よく”応じたものだということではない。

国際会議で議論の行方を巡り主導権を握っているのは米国を中心に欧州勢や日本も加わった西側連合であるのに対し、圧倒的に途上国に対して融資債権を抱えているのが中国だということ。

今回のG20会議の議長国であるインドも表向き中立姿勢を示しているが、その実態はロシアとは良好な関係を維持していても中国とは対立した状態にあり、それもあって日本や米国とは親密な関係を築いているので、そうした提案には前向きな姿勢を示している。

なにせ「一帯一路」をはじめとする中国の途上国向け融資は平均で年率7%程度と、世界銀行は1%程度が多いのと比べて著しく金利負担が重い。

世銀が相手にしないような信用の低い途上国に貸し付けているので、極端な高金利になっても致し方ない面もあるが、資金回収が出来ずに担保である対象のインフラ物件を差し押さえる「債務の罠」と呼ばれる闇金まがいの悪辣な行為が世界中では猛批判を浴びている。

中国の「一帯一路」絡みの融資債権については、中国・上海の復旦大学グリーン金融開発センターが発行した「2022一帯一路投資報告書」によると、中国は13年から22年までの10年間でそれに総額9,620億ドル、約128兆7000億円もの資金を投じたとしている。

その一方で、世界銀行はそうした事業への融資を受けてその返済に苦しんでいる途上国の窮状を救うため、08~21年に22カ国に対して総額2,400億ドルもの救済資金支援を行ったとしており、これはこれから急増する見通しであるという。

いずれにせよ、先進国は対外投資については国際通貨基金(IMF)にしっかり報告しているものの、中国は大部分について報告していないため、今後どれほどの対外的な不良債権が顕在化するか定かではない。

中国が債務再編に向けた協議になかなか応じようとしないのは、債務の減免を吞まされると巨額な損失を負うことになるだけでなく、簿外で隠れている不良債権が顕在化するのを嫌がっている面もあるのです。

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